武漢ウイルス禍とロックダウン

今日はこの話題です。
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1.東京の感染拡大は制御不能


8月14日、東京都は武漢ウイルスの新たな感染者が5094人と発表しました。現在入院している重症患者は245人で過去最多。年代別では20代が最も多い1568人、次いで30代が1079人で、重症化リスクが高い65歳以上の高齢者は182人です。

8月12日に行われた都のモニタリング会議では「かつてないほどの速度で感染拡大が進み、新規陽性者数が急増しており、制御不能な状況である(①-1 ア)。……災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態である。もはや、災害時と同様に、自分の身は自分で守る感染予防のための行動が必要な段階である(①-1 イ)。」と指摘。

更に「現状の感染状況が継続するだけでも、医療提供体制の維持が困難となる。深刻な機能不全に陥っている医療提供体制がさらに圧迫され、救うべき命が守れなくなる。この危機感を現実のものとして皆で共有する必要がある(①-1 ウ)。」と訴えています。

また、自宅療養についても「全療養者に占める入院患者の割合は約 10%、宿泊療養者の割合は約 5%と、新規陽性者の急増に伴い、それらの割合は低下した。宿泊・自宅療養中に症状が悪化し入院する患者が増えていることから、患者の症状に応じた医療提供体制の確保が必要である(⑥-3、4 ア)。」と述べています。

会議中での専門家のコメントには災害レベル、だとか自分の身は自分で守る行動などの文字が所々に踊っていて、これは平たくいえば、もうギブアップ寸前だということです。

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2.諦めていただきたい


8月13日、小池都知事は定例記者会見で、武漢ウイルスの感染状況について「去年はじめに新型コロナウイルスが襲ってきて以来、今まさに最大級、災害級の危機を迎えている……人工呼吸、酸素吸入が必要な人たちが、このまま増えていけば、命を救うための十分な医療が受けられなくなる可能性がある。他の疾病の方々にも皺寄せが行く……私たちの意思があれば人流は抑えられる。いま抑えないと、助かる命も助からなくなる……行動を変えていただきたい。行政は全力で医療体制の充実や対策を、より研ぎ澄ませていくが、それも結局、皆さんの協力があってこそ効果が出る」と人の流れの5割削減を目指す考えを改めて示しました。

そして、更に「それは、今しないとだめなのか、不要不急ではないのか、感染拡大がちょっと収まってから延期することができないのか、そのようなことを訴えている。旅行・帰省の計画を立てている人は、この場でも延期・中止など、もう一度改めて考えてほしい。『考えてください』でなくて、もう、ここは、ことしも申し訳ないが、諦めていただきたい」と訴えました。

この発言にネットは炎上。

ネットでは「オリンピックあきらめてって意見、聞いてくれたっけ?」、「生活に不要な五輪を開催しておいて、ふざけるな!」、「その言葉、五輪に対して1年前から言っていた」という声であふれ、「助かる命も助からなくなる」という小池都知事の発言には「助かる命をそっちのけでオリンピックやってませんでした?」、「命を助けるためにパラリンピックを中止にしましょう」と厳しい声が飛んでいます。

その東京オリンピックについて小池都知事は、その同じ日の記者会見で「これまで経験したことがないような困難な状況での開催だったが、皆様のおかげで成功し、無事にやり遂げることができた。水際対策、健康管理、行動管理、検査など協力してもらったことで、感染拡大の抑止につながった」と述べ、今月24日に開幕するパラリンピックについても「オリンピックの成功を必ずパラリンピックにつなげていく。オリンピックの経験を生かしながら、また改善を加えながら、安全安心な大会にしていきたい」と述べ、更に児童・生徒たちにチケットを割り当てる「学校連携観戦」についても「競技として楽しむ、生で見るという意味で、子どもたちに見せてあげたい。ただ、やはり感染状況、学校現場の意見などを踏まえながらの判断になるかと思う。そのためにもコロナ対策に全力を挙げていきたい」と発言しました。

もうパラリンピックは開催する前提での発言に聞こえます。先ほどは自粛してくれといっておいて、安心安全な大会にするという。では、武漢ウイルス禍に見舞われ、医療専門家から自分で自分の身を守ってくれ、といわば匙を投げられた都民の安心安全はどう考えているのか、と聞きたくなります。




3.ロックダウンには憲法改正が必要


既に4回目の非常事態宣言が出されている中、今以上に自粛して人流を抑えてくれと「お願い」しても、殆ど効果がないであろうことは過去の非常事態宣言で証明されています。

JNNが8月7~8日に行った世論調査では、4回目となる現在の非常事態宣言について「あまり効果はない」「全く効果はない」との回答は合わせて76%にも上っています。

8月1日、全国知事会は緊急提言として、デルタ株による感染再拡大が全国の多くの地域で急速に進んでいると指摘。徹底した対策を行うため、緊急事態宣言の機動的な発動や運用改善、さらに強い措置となる「ロックダウンのような手法のあり方」についても検討するよう求めています。

現在、政府は一連の緊急事態宣言で都道府県知事に対し事業者を規制する権限を与えたのですけれども、個人の活動を縛る権限まではありません。

これまでは、飲食店に対し、アルコールの提供停止と午後8時までの営業時間短縮を中心に取り組み、命令に違反した場合は30万円以下の過料を科す罰則規定なども設けましたけれども、従わない飲食店も続出しています。

8月4日、自民党の下村博文政調会長は、BSフジの番組で緊急事態宣言について「だんだん効果がなくなりつつある」として、罰則を伴う外出禁止令の法制化を検討すべきだとの認識を示しました。

このロックダウンについては度々議論の俎上に上がるのですけれども、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、そもそも憲法に緊急事態条項が定められておらず、更に憲法22条で移転の自由を保障していることから憲法改正が必要になると指摘。ただしその22条および13条にある「公共の福祉」を論拠として私権制限を行えると解釈する方策もあるが、それは難しいだろうとの見解を示しています。




4.公衆衛生の保持や生存権は個人の自由に優先する


では、実際に現行憲法ではロックダウンのような強制力を伴う措置は不可能なのか。

これについて、筑波大学人文社会系助教の秋山肇氏は、これまで憲法13条の「幸福追求権」の一部として考えられてきた「生存権」に着目し、国には国民の生命を守るための様々な義務があるのではないかと主張しています。

武漢ウイルス禍において、憲法が規定する「個人の自由を保障する考え方」と「個人の自由を制限する考え方」のどちらが優先されるべきかという問いに対して次のように述べています。
・「公衆衛生の保持」は「営業の自由」に優先する
コロナ禍ではどの規範が優先されるのかを明らかにするために、関連する憲法上の概念を「個人の自由を保障する概念」と「個人の自由を制限しうる概念」の2つのグループに分けてみました。

「個人の自由を保障する概念」には営業の自由と移動の自由があり、これらの権利は居住・移転及び職業選択の自由(22条)と財産権(29条)から導き出すことができます。「個人の自由を制限しうる概念」としては生命権(13条)、生存権と公衆衛生の保持(25条)、公共の福祉(13条)があげられます。

居住、移転及び職業選択の自由と財産権は「経済的自由権」として認められていますが、「公共の福祉」の制約を受けます。公共の福祉は、公衆衛生の保持(感染症対策)が含まれると理解されています。そのため、営業の自由は公共の福祉によって制約され得ますし、政府が打ち出した営業や外出の自粛要請は憲法上容認されると解釈できます。

・生命権と国家の役割
さらに、国民の命を守る「生命権」という概念を憲法から読み取り、独立した権利として認識されるべきではないかと考えました。生命権が認められると、国は憲法により、国民の生命権保障のために「公衆衛生の保全」などで積極的な措置を求められるという解釈が成り立ちます。

国家が個人に対して果たすべき役割については、これまであまり議論されてきませんでした。戦後に制定された日本国憲法は、戦争の教訓から国家権力に歯止めをかけて、国民の自由を守ることを目的として生まれてきました。そのため国家に権力を委譲することについては憲法学者や国民の間に強い警戒心があります。ところが、突然やってきた未知のウイルスとの戦いは社会生活を脅かし生命の危機を認識させました。深刻化する環境問題を含め自然からの脅威は、私たちに国家の役割と憲法のあり方を問い直す必要性を突きつけています。
ここで秋山肇氏が「生命権」と関係すると述べている憲法13条の条文は次の通りです。
第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
秋山氏はこの憲法13条を生命権の根拠とし、次の2つの理由から生命権は、幸福追求権及び人格権とは別個に扱うべきだと述べています。
1)条文の文理上の解釈である。生命に対する権利、自由に対する権利及び幸福追求に対する権利は並列で表記されているため、生命に対する権利が幸福追求に対する権利に包含されるべきではない。

2)権利の性質である。生命の維持は幸福追求権を含むあらゆる権利の前提であり、「もっとも基本的な人権」と考えられるべきである。
秋山氏は、「生命への権利は、国王の圧政からの解放という近代憲法成立の文脈では、「国家に殺されない権利」が中心的な議論であり、生命権においても主に国家の介入を否定する自由権的な文脈で議論されてきた。しかし、COVID-19 への対応が必要となる今日においては、国家の積極的な介入を要求する社会権的な視点でも生命権をとらえる必要があり、国家による生命の保護義務も含まれるべきである」と述べているのですね。

要するに生命権は「国家に殺されない権利」という従来の解釈だけではなく、「国家が行うべき保護義務」としても解釈すべきだという訳です。

その上で秋山氏は「憲法25条の生存権の保障・公衆衛生の保全を目的とした自由の制限は認められうる」と述べています。

その憲法25条の条文は次の通りです
第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
秋山氏は、憲法25条には、国民の生存権保障のための具体的な方法が明らかでなく、生存権の内容自体が抽象的であることから、これまで、その具体的な内容は立法府の判断および内容を具現化する法律が必要であるとの見解が示されてきたと解説しています。

けれども、憲法に「生存権」が記されているにも関わらず、法学や司法がその内容を立法に丸投げするのは、そもそもにしておかしいと疑義を呈し、生存権の内容を法学・司法が具体化し、憲法を基盤とした具体的請求権が認められるべきであると秋山氏は主張しています。

また、憲法25条2項で、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定していることから、「公衆衛生の向上及び増進」のために必要な方策を請求することも、憲法25条に基づき可能なはずであり、その請求がなされた際には、公衆衛生の保持を目的とした個人の自由の制限が正当化されうるとの解釈を述べています。

そして、秋山氏は、憲法13条に規定されている「公共の福祉」について、過去の判例および学説で「公共の福祉」には、「公衆衛生」が含まれると考えられていることから、「公衆衛生の保全」を目的とする武漢ウイルス対策は「公共の福祉」に含まれ、憲法13条は、個人の自由の制限が正当化されうる根拠になるとしています。

このように秋山氏は、憲法13条の「生存権」を現状に合わせて解釈しなおすことで、個人の自由は制限できると主張しています。要するに現行憲法でも憲法解釈を変えれば「ロックダウン」は可能だということです。

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5.生き残りを掛けて自分で判断して行動する


ただ、現行憲法でもロックダウンは出来るといっても、憲法に生存権の具体的内容が記されている訳ではありませんから、司法なり立法なりで、その具体的内容を規定する必要があります。

それが今の"災害レベル"の緊急時に議論して法制化している暇などあるのかという問題もあります。

8月13日、東京都医師会の尾﨑会長は緊急記者会見を行い「すでにいろいろな報道で分科会の先生方、モニタリング会議等で日本は災害級の状態になっている、一人ひとりが身の危険を感じて守っていかないといけないレベルに入っているという話になっています。1万8000人の感染者が出るということは、決して日本は国民や都民の努力で自粛して感染が抑えられている国だとは言えない状態」と述べ、人流抑制だとか自粛で抑えられる状態ではないとの認識を示しています。

尾崎会長は「家庭内感染で濃厚接触者ということではなく、すでにかなりの年代の普通の方にもどんどん感染者が出ている状態です。夜、遊びに行っている方だけの病気だと考える段階ではない」と述べ、自宅療養や自宅待機者への対応について「今、保健所の業務がストップ状態に近くなって、私どもが感染者が出ましたと言っても、保健所から連絡が行くのは大体3日くらい遅れる現状があります」と診断と診療との間にタイムラグがある現状を指摘しています。

現在東京都は、2つの薬を同時に点滴投与することで、抗体が作用してウイルスの働きを抑える「抗体カクテル療法」を医療機関に加えて、宿泊療養施設でも投与できるよう準備を進めていることを明らかにしています。

この「抗体カクテル療法」について尾崎会長は「発症してから7日間以内で、軽症者の方に使うことで初めて有効性が高いと言われています。現状では入院してやってもらいたいという通達がありますけれども、東京都の場合は軽症者の方がどんどん入院できる体制にはなっておりません。インターフェロン-ラムダ3とCCL17という、重症化予防の指標となる血液検査が保険適用されていますので、診断された段階で採血して検査して、重症化しやすい患者さんについては早めにカクテル療法ができるような体制を作っていきたい」と発言する一方、「イベルメクチンという薬がありますが、これがそれなりに重症化予防できるという報告も数多く出ております。いろんな議論がありますが、こうしたかなり逼迫した状況下で使用許可を認めていただいてもいい段階に来ているのではないか」とも述べています。

初期の段階で使えば効果があるとされる「抗体カクテル療法」も点滴投与という時点で素人では無理な話で、宿泊療養施設でも投与できるためには、対応する医療従事者が必要になります。

小池都知事は「抗体カクテル療法」について「入院重点医療機関およそ120ヶ所で実施できるよう、薬剤を常備する体制がとれた。まず、都立公社の病院で専用の病床を20床程度確保し、今後、順次拡充していく」と述べていますけれども、日に数千人単位で新規感染者が出ている状況で、発症7日間以内に「抗体カクテル療法」を投与しなければならないのに、入院重点医療機関およそ120ヶ所で足りるのかといわれると非常に心許ないと言わざるを得ません。

やはりここは、イベルメクチンでなくてもよいのですけれども、尾崎会長が指摘しているように少しでも重症化を遅らせることが出来る薬があるのなら、緊急避難的に使用許可を出すことを考えてもよいように思います。

既に、都のモニタリング会議が「自分の身は自分で守ってくれ」と匙を投げた一方で、東京都医師会は「人流抑制だとか自粛で抑えられる状態ではない」と言っているのですね。

こんな、裸で寒空に放り出されたような状況で、一体何が出来るのか。

8月8日のエントリー「人類を淘汰する武漢ウイルス変異株」で、筆者は「個々人が執着を捨て、自身が今与えられた立場で出来る限りのことをやって、そこから先は天にお任せする」しかないのではないかと述べましたけれども、今後は、小池都知事の「お願い」の声も虚しく、個人一人一人が生き残りを掛けて、独自に判断して対策し、動いていく流れが起きてくるのではないかと思いますね。




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