ウイルス兵器に相互確証破壊は成立するか

今日はこの話題です。
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1.The Independent Panel


5月12日、世界保健機関(WHO)や国際社会の武漢ウイルス対応を検証する独立委員会はパンデミックの初期段階でWHOと中国がより迅速に行動できた可能性があるとの報告書を発表しました。

この独立委員会は、中国やWHOの初動に批判が集まっていた昨年5月のWHO総会で、WHO加盟国がパンデミックへの対応について「公平で独立した包括的な評価」を求めたことを受けて、ニュージーランドのヘレン・クラーク元首相とリベリアのエレン・ジョンソン・サーリーフ元大統領を共同議長として設置されたものです。

その報告書によると、「1月に中国の地方および国の保健当局が公衆衛生対策をより強力に適用することができた」ことは明らかであり、感染の可能性があるすべての国で、封じ込め対策を直ちに実施すべきだったと述べています。

また、WHOが緊急委員会を招集したのが2020年1月22日であったことを指摘し、危機の発端となったWHOの足の引っ張り合いを批判。更に、最高の警戒レベルである「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」についても「委員会が1月の第3週まで開催されなかった理由も、最初に招集されたときにPHEICの宣言に合意できなかった理由も明らかではない」と指摘しています。

そして、感染者数についても「振り返ってみると、すべての国で流行初期の感染者数が報告よりも多かったことは明らかである……隠れた流行が世界的な広がりに貢献した」としています。

委員会は「パンデミック」という言葉が使われていれば、各国が事態各国が事態をより深刻に受け止めていたかもしれないと示唆し、「健康上の出来事の重大性に注意を向ける」役割があると強調しています。

中国のみならず、WHO自身にも非があると報告しているのですね。これは今年のWHO総会で問題になるのではないかと思います。
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2.WHOは公衆衛生より政治を優先している


今年のWHO総会は今月下旬に行われますけども、台湾の参加の可能性は非常に低いと見られています。WHOは台湾のオブザーバー参加については加盟国が決定するとしていますけれども、5月11日、WHO加盟国は、台湾に対するWHAのオブザーバー資格の付与に関する決定を延期しました。

現在、中国ではなく台湾と国交を結んでいるのはわずか15ヶ国で、その大半は中南米と太平洋地域の経済小国です。WHOに加盟している194の国と地域では、あえて中国政府の怒りを買ってまで台湾の参加を後押しするところはほとんどないと見られています。

これについて台湾の欧江安外交部報道官は、5月11日、中国による悪意ある妨げは、WHOが技術的な話し合いに台湾を完全な形で参加させられない主な障害になっていると指摘し、中国が政治で人々の健康の権利を抑圧する横暴な行為が続いていることが改めて示されたと述べています。

更に、行政院の羅秉成報道官は同じく11日、中国による台湾への圧力は場所や手段を選ばないとし、中国は台湾の国際参加を支持する世界の主要な国々の呼び掛けを無視していると批判しました。

台湾および台湾を支持する人々は、特に今回のような大規模な健康上の危機の最中にWHOから2300万人の台湾人を排除することは不公平だと訴える一方で、各国の指導者や医師らは新型ウイルスとの闘いにおいて台湾の専門知識から得るものがあると主張しています。

5月14日、アメリカで研修を受けた疫学の専門家でもある台湾の陳建仁副総統は、記者団に対し、「保健ネットワークの中では、誰一人として孤児として扱われるべきではない……WHOは政治を重視し過ぎて、機関の専門性と中立性を忘れている」と語っていますけれども、台湾は感染初期の段階からヒト‐ヒト感染の可能性があるとWHOに警告していました。

独立委員会がWHOの初動対応に遅れがあったと指摘していますけれども、台湾の警告を聞き入れなかったことは、その原因の一つになる可能性は十分にあります。WHOが機関としての専門性と中立性を守るのならば、台湾をWHO総会に招待するのは不思議なことでもなんでもありません。むしろ、加盟国が決定する云々ではなく、WHO事務局が加盟国を説き伏せるなどして、台湾招待に積極的に動くべきだと思います。

それをしないならば、やはり、「WHOは公衆衛生より政治を優先している」と批判されても仕方ありません。


3.Smoking Gun


5月12日、「ザ・タイムズ・オブ・インディア」は「コロナウイルスの起源に関する報告:中国の生物兵器の『決定的(Smoking Gun)』な証拠」という記事を掲載しました。

記事の前半部は先日、イギリスのデイリーメール紙やオーストラリア紙「ジ・オーストラリアン」などが報じているものと同じく、アメリカ国務省が入手した文書から、中国が数年前から遺伝子兵器の議論をしていたというものですけれども、後半部では、香港で武漢ウイルスの起源に取り組んでいた閻麗夢博士がインドメディアのインタビューで文書について「この文書は、中国が非伝統的な生物兵器の長期プログラムを持っていることを証明できる『確たる証拠』であり、中国はそれを使用して全世界を征服する計画である」と述べたことを伝えています。

更に記事では、1989年に生物兵器法を起草した米国のフランシス・ボイル博士が、2019年の武漢コロナウイルスが中国の攻撃型生物兵器であることを認める詳細な声明を発表し、武漢ウイルスの集団感染は、バイオセーフティーレベル4実験室(BSL-4)から逃げ出したものであると指摘していることも伝えています。

半年前であれば、単なる陰謀論で片付けられていた噂が、英豪の記事となり、今度はインドでも記事になった。中国とWHOの初動の遅れが指摘された以上、今後、増々再調査や詳細調査の高まることも考えられます。


4.ウイルス兵器に相互確証破壊は成立するか


件の「ザ・タイムズ・オブ・インディア」の記事は、インドの核ドクトリンには、報復トリガーが拡大され、「生物兵器または化学兵器によるインドまたはどこかの国のインド軍に対する大規模な攻撃」が含まれるようになったものの上手くいかなかった。従ってこれらに対して、健康管理のための強固なインフラを構築し、危険なウイルスに必要なワクチンや薬を用意するためのBSL-4ラボを設置するという措置が必要だという結論で締めくくられています。

筆者は、ここで現在の安全保障に新たな命題が起こってきたのではないかと感じました。

それは、ウイルス兵器に対して「相互確証破壊」は成立するか、という命題です。

相互確証破壊とは、核戦略に関する概念・理論で、核兵器を保有して対立する2か国のどちらか一方が、相手に対し先制的に核兵器を使用した場合、もう一方の国家は破壊を免れた核戦力によって確実に報復することを保証する。これにより、先に核攻撃を行った国も相手の核兵器によって甚大な被害を受けることになるため、その2国間で核戦争を含む軍事衝突は理論上発生しない、というものです。

この相互確証破壊には、自他共に「核兵器」を持っており、どちらが先に攻撃したのかが確実に分かるという前提があります。誰が攻撃をしかけたのか分からなければ、反撃のしようもありませんから当然といえば当然です。

けれども、ウイルス兵器にそれが当てはまるかというと、相当に難しい。相手はウイルスという目に見えない極小の兵器です。夜陰に紛れて工作員に捲かせたらまず分かりません。つまり反撃したくても、攻撃相手が分からないということです。付け加えるならば、どの国がどのレベルのウイルス兵器を持っているのかさえ分からない。

こんな状態ではウイルス兵器における「相互確証破壊」は成立しないと思います。


5.生物兵器禁止条約


現在、生物・毒素兵器を包括的に禁止する唯一の多国間の法的枠組みは、1975年に発効した「生物兵器禁止条約(BWC)」です。

これは、生物兵器の開発・生産・貯蔵等を禁止するとともに既に保有されている生物兵器を廃棄することを目的とする条約ですけれども、その主な内容は次の通りです。
 生物兵器の開発・生産・貯蔵・取得及び保有の禁止(第1条)
 生物兵器等の廃棄及び平和的目的への転用(第2条)
 生物兵器等の不拡散(第3条)
 条約の国内実施措置の確保(第4条)
 締約国相互の協議と協力(第5条):締約国は、条約の目的及び適用に関する問題の解決に当たって、締約国が相互に協議し協力する。これらの協議及び協力は、国連の枠組みで及び国連憲章に従って、適当な国際的手続により行うことも出来る。
安保理への苦情申し立て(第6条):締約国は、他の締約国が条約に違反していると認められるときは、国連安保理に苦情を申し立てることが出来る。
 国際協力(第10条)
 信頼醸成措置の提出:条約上の義務ではなく、第3回運用検討会議の最終宣言及び国連総会決議に基づく措置として、締約国は自国内にある研究施設、生物防護計画、疾病発生状況等につき、毎年国連軍縮局に提出することを求められる。
第1条ではいかなる場合でも、生物兵器の開発・生産・貯蔵・取得及び保有を禁止すると謳っていますけれども、本当にそうなのか誰も保証してくれません。一応、第12条で条約遵守の確保のために5年毎に会議を行い運用検討するとなっています。ただ、それもちゃんとやっていると嘘をつかれたら終わりです。

こちらは、中国の福岡総領事館のサイトだと思われますけれども、「化学兵器と生物兵器の全面禁止と徹底廃棄を」と銘打ったこの記事では冒頭から「中国は化学兵器を持っておらず、一貫して化学兵器の全面禁止と徹底廃棄を主張している」などどいけしゃあしゃあと述べています。

生物兵器禁止条約では第6条で、「締約国は、他の締約国が条約に違反していると認められるときは、国連安保理に苦情を申し立てることが出来る」となっていますけれども、安保理常任理事国の一国が中国です。

たとえ今回の武漢ウイルスが生物兵器だと証明されて、生物兵器禁止条約に違反していると安保理に苦情を入れたとしても、中国に拒否権を使われてしまいます。

「ザ・タイムズ・オブ・インディア」が主張しているような「危険なウイルスに必要なワクチンや薬を用意するためのBSL-4ラボを設置する」というのも一つの手でしょうけれども、それ以上に発生源、犯人を特定することを忘れてはいけないと思います。なぜなら犯人が分からなければ対策も打てないからです。

そして、生物兵器禁止条約も更に強化して、締約国の要請があれば、強制的に無制限に原因調査できる規定も追加しておくべきではないかと思いますね。


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