中国に占領された香港

今日はこの話題です。
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1.香港国家安全維持法


6月30日、中国の習近平国家主席は香港での反体制活動を禁じる「香港国家安全維持法」に署名・公布しました。

全文は施行と同時に中国の国営通信社、新華社が公開したのですけれども、施行されるまでこの法律の全文は公開されず、また、公開された法律全文も中国語のみで、英語のものはありませんでした。

わずか二十数年前まで英国領であった香港で施行される法律で英文がないというのは異様ともいえ、筆者には、中国共産党政府が「香港は完全に中国である」と、一国二制度を捨て去ったとの宣言にも見えます。

全文については、いろんなところで解説され、また、こちらのブログでは全文和訳もされていますけれども、これが法律なのかと批判の声が上がっています。


2.香港を教育・監督する中国共産党


66条からなるこの「香港国家安全維持法」には、百を超える「国家安全」の文字が躍っているのですけれども、「第一章 総則」で「香港特別行政区は、国家安全の維持のために人権を尊重し、保障するとともに、香港特別行政区基本法と《市民的及び政治的権利に関する国際規約》、《経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約》に基づいた言論・報道・出版の自由、結社・集会・行進・デモの自由などを法に基づいて保護しなくてはならない(第4条)」と謳っているのに対し、「第二章 香港特別行政区の国家安全を維持する職責と機構」では、「学校、社会団体、メディア、インターネット等を通じた国家安全教育を推進しなければならない(第10条)」、「香港特別行政区が国家安全を維持するための職責を履行しているかどうかの年次報告書を提出しなければならない(第11条)」「香港特別行政区は、国家安全維持委員会を設置する(第12条)」など、中国共産党政府が香港を教育、監督すると宣言しています。

総則で人権を尊重するといっておきながら、香港を教育、監督し、実態を報告させるとしているのですからまぁ、お察しです。

そして、「第三章 罪と罰則」では、具体的な犯罪規定が行われているのですけれども、この国家安全維持法で裁かれる犯罪は「国家分裂」「国家政権転覆」「テロ活動」「外国または域外勢力との結託による国家安全危害」の4種類です。

中でも、海外が懸念を示したのは「外国または域外勢力との結託による国家安全危害」の部分です。

第29条では、「外国、外国の機関、組織、その人員のために国家の秘密または国家の安全に関する情報を盗み、探り、買収されて違法に提供すること、外国もしくは外国の機関、団体もしくは個人にその行為を依頼した者、外国もしくは外国の機関、組織、その人員と共謀してその行為を行うこと、外国もしくは外国の機関、組織、人員から直接もしくは間接に指示、コントロール、資金その他の援助を受けて、以下の行為を行うことは、犯罪である」と規定し、具体的に次の5つの例を挙げています。
(1)中国に対して戦争をし、武力もしくは武力の威嚇によって中国の主権、統一及び領土の完全性に重大な危害を及ぼすこと。
(2)香港政府または中央政府による法律や政策の策定・実施を著しく妨害し、重大な結果をもたらすおそれのあるもの。
(3)香港の選挙を操作し、混乱させ、潜在的に重大な結果をもたらすこと。
(4)香港または中国に対する制裁、封鎖その他の敵対的行為。
(5)様々な不法な手段を用いて、香港の住民の間で中央人民政府または香港政府に対する憎悪を募らせ、重大な結果をもたらす行為。
これは穿ち過ぎかもしれませんけれども、筆者には解釈次第でいくらでも犯罪に仕立て上げることができる法律のようにも見えます。

例えば、昨年、香港で容疑者引き渡し条例改正案を巡って、いわゆる「香港デモ」が起こり、結果、条例案は撤回に追い込まれましたけれども、これなども(2)に抵触して犯罪扱いに出来そうな気がします。

また、香港デモの様子を動画にしてネットにアップしたり、海外メディアが取材して報じたりするのも(5)あたりで犯罪としてでっち上げることも出来そうです。或いは、中国の人権問題や非人道、不条理を、外国のNGOや人権団体とともに批判することもその中に入れてくるかもしれません。

ましてや(4)に至っては、中国や香港に制裁をかけようとしているアメリカを狙い撃ちにしているかのような条文です。


3.減刑規定


これらについては、細かい処罰規定が定められているのですけれども、第33条では「次のような事情がある場合には、被疑者又は被告人は、減軽を受けることができる。 より軽い罰則は免除される場合がある」と減刑規定が設けられています。

その次のような事情とはこのように定められています。
(一) 犯罪過程において、自らその行為を放棄し、又は犯罪の結果が生じるのを自ら効果的に防いだ場合。
(二)自発的に警察に自首し、犯罪を正直に自白した場合。
(三) 他人の犯罪行為を告発して証言した場合、又は他の事件を発見するための重要な手がかりを提供した場合。
筆者には「共産党に協力するなら、減免してやる。密告もどんどんしろ」という風にしか読めません。

またこの法律の適用範囲については「第六節 効力範囲」に記されていて、第36条に「本法は、香港特別行政区内で本法に規定する犯罪を犯した者に適用される」と前置きしながら、その後に「本法は、香港特別行政区で登録された船舶又は航空機内で本法に規定する犯罪が行われた場合にも適用されるものとする」とあります。

そして、第38条では「香港特別行政区の永住者の資格を有しない者が、香港特別行政区の外で香港特別行政区に対してこの法律に基づく罪を犯した場合に適用される」としています。

これは、たとえば、共産党批判をした香港人が船や飛行機で香港を脱出したとしても、船内や機内で逮捕される可能性があることを示し、更には、外国人が外国で、「香港住民に中国や香港政府への憎悪を募らせる言動をした」場合もこの法律が適用されうることになりかねないということです。

無茶苦茶です。

7月1日、香港のテレサ・チェン法務長官は記者会見で、外国人と共謀して中国中央政府あるいは香港当局への「憎悪」を誘発する行為は犯罪とみなされる可能性があるとした第29条について何を意味しているのか正確に定義するよう求められたのですけれども、明確に答えられませんでした。


4.被告人は保護しない


今回の香港国家安全維持法について、複数の人権団体は、これまで与えられていた被告人の保護を損なっているとコメントしています。

たとえば、「国家機密、公の秩序等に関する事情により公の場で公判を行うことが不適当な場合には、報道機関及び公衆は、公判の全部又は一部を傍聴することを禁止するが、判決結果は一律公開されなければならない。(第41条)」と裁判が非公開で行われる場合を許したり、「国家機密の維持、案件の外国要素、又は陪審員とその家族の人身の維持などの理由で、陪審団で審理する必要がないことを指示する証明書を発行することができる(第46条)」と陪審員なしで行われたりする可能性を
指摘しています。

また、保釈についても「保釈は、裁判官が、被疑者又は被告人が国家の安全を脅かす行為を継続して行わないと信じるに足る十分な理由がない限り、認められないものとする」と認めていません。


5.中国に占領された香港


アメリカ・ジョージ・ワシントン大学ロー・スクール教授のクラーク氏は、最大の懸念は香港国家安全維持法が確立した制度やプロセスだと述べています。

法律では中国が香港に国家安全保障を守るためのオフィスを設立し、中国大陸側の法執行官を配置することを認めているのですけれども、彼らについては治外法権としています。

その規定は第60条で、このように規定されています。

第六十条 本法に基づく国家安全維持のための香港特別行政区政府事務所及びその職員の職務遂行上の行為は、香港特別行政区の管轄に服するものではない。

つまり、中国共産党が香港に置いたオフィスで働く者は香港の法律を順守しなくてよく、「調査や捜索、拘留」の対象にはならないとしているのですね。

これでは香港は中国の一部どころか、中国による「占領地」と言った方がいいような気さえしてきます。

香港の民主派議員、クラウディア・モウ氏は、「市民は呆然自失になり、おびえ、脅迫されて、反対の立場で何かを言ったり行動したりする勇気を失うだろう」と香港国家安全維持法の目的は「香港に衝撃を与えて消滅させる」ことだと述べていますけれども、正にその通りだと思います。

非常に残念なことではありますけれども、今回の香港国家安全維持法公布を持って、香港の命運は尽きたのではないかと思いますね。


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