接触削減目標と実効再生産数

今日はこの話題です。
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1.実行再生産数


5月7日、安倍総理は産経新聞の単独インタビューに応じ、武漢ウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言について、「14日の段階で解除になれば、どういう基準で解除したかを国民に丁寧に説明したい。14日に解除にならなくても31日は待たない」と、14日に行う専門家の分析を踏まえ、一定の基準を満たせば31日の期限よりも前に都道府県ごとに段階的に解除する意向を示しました。

解除の基準については、感染者数や退院者数の動向、感染者1人から平均何人にうつるかを表す「実効再生産数」、人工呼吸器の数などを踏まえて検討する考えを示していますけれども、政府としては現在のところ、実効再生産数を0.5以下を維持できるのかを一つのターゲットとして考えているようです。

では、実際の実効再生産数がどれくらいあるのかについては、専門家会議での5月1日の提言で、3月25日では全国で2.5、東京都で2.6であったのが4月10日には全国で0.7、東京都で0.5になっていると報告されています。

5月4日放送のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」では、この実効再生産数について、白鴎大教授の岡田晴恵氏は、4月10日の数値について、「その段階でもう縮小傾向にある。これは実行再生産数は政策決定に使われるんですけど、海外だったら解除レベルなわけですよね……あんなに厳しい対策をやって、その効果で下がってきたのはわかるんですけども。政策は正しいと思うんですけど、この数値って本当に当たっているのかな。国家のかじ取りをするような数値でございますので、ここはプロセスを、どういう計算式でどういうデータかを開示して頂いて、複数の研究者がちゃんと研究できるようにお願いしたいと思いますよね」とデータの開示を求めました。

そして更に、「(現在は)10日よりも進んでるわけで、という事は実行再生産数はもっと下がらなければいけないわけですね。そうしたら、何で自粛を続けるのって事になるわけです。私個人としては今までのデータからして、今解除するのは危ないだろうと、特に首都圏は。ただ論拠となる数値がちょっと違うんじゃないかという風に思っておりますので。ここは大事な所ですので、開示を……どこでどう取っているのかという事を、ちゃんとお示し頂かないと。自粛で大変な思いをされてるわけですよ、国民は。ちゃんと数字を出して国民を納得させてほしい。リンクが追える数字、追えない数字の両方を取っているのかとか、ちゃんと論拠を示して頂きたい」と政府の対応を批判しています。


2.山中教授の単純な算数


5月6日、ニコニコ生放送は、武漢ウイルス対応についての質問を募集し、直接、安倍総理に質問する特別番組「安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送」をネット配信しました。

放送はPCR検査や給付金、マスク配布についてなど合計9個の質問に対して、安倍総理と京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が回答する形式で行われたのですけれども、その中で「明確な数値の条件が無ければ何処に向かって頑張ればいいか分からない」「精神論ではなく、数値の基準を」という声があり、国として指標を示す考えはあるか、という質問に対する回答の中で、実効再生産数について触れています。該当部分を引用すると次のとおり。
──山中先生、このあたりは数値となりますと、PCR検査やデータの話に戻ってしまう気もしますが、どう受け止めていらっしゃいますか?

山中教授: 
 やっぱり、検査を十分行ってできるだけ全体像を把握するというのが、最大の条件になってくるんじゃないかなと思います。
 でも、そう言っていたらいつまで経っても前に進めないですから、いまあるデータでいろんな判断をしていかないとダメだと思うのですが。これは一番大切なのは医療崩壊を防げるかということで、一昨日の会見で首相が言われたように、まだ毎日の感染者、新たな感染者の方が退院される方の数を上回っている状況ですから、ここでゆるめるわけにいかないのは当然だと思います。

 いまの頑張りを続けるとおそらく2週間、1ヶ月ぐらいでかなりベッドに余裕が出てきて、医療従事者の方の過重労働も少し和らぐ可能性が高いと思いますから。
 その段階で、少しいろんな制限を弱めていけるんじゃないかということで、僕が一昨日の安倍首相の会見を聞いていると、僕にとっては結構出口はしっかり示されたなというふうには理解しておりました。

《中略》

──実効再生産数と呼ばれているものですね。

山中教授: 
 そうですね。Reproduction numberで「R」ですけども。この新型コロナウイルスは、何も対策しないと2.5ぐらいだと言われています。たとえば、僕が感染して、もし同じ部屋で近くで話をすると、首相にも馬場さんにも移してしまう。もう0.5人ぐらい移してしまうと。

 だいたいこのウイルスは5日ぐらいで移すと言われていますから、5日ずつで2.5倍ずつになると大変なことになってしまいますから、これは絶対対策が必要で、いまかなり患者さんが増えましたから、このRを0.5ぐらいまで抑えたら、どんどん患者さんが減っていくということで。

 この2.5を0.5に抑えようとすると、8割人と人との接触を減らす必要があると。これは本当に単純な算数。だからこの8割は極めて根拠のある数だと思います。

 たぶんいま、0.5ぐらいに下がっていると思いますが、患者さんの数が減るのは退院までの時間が2週間とかあるから、もう少しかかるので、もう少し待たないと、医療従事者が倒れてしまいますが、そこで退院者がどんどん増えていくと、今度はRを1ぐらいまで緩めることができると思いますので、2.5を1というのは4割にしたらいいわけですから、今度は6割減になりますから、8割減から比べると6割減はずいぶん状況が変わってくると思いますので、そういう意味で、僕はやっぱりこのRをできるだけリアルタイムで首相に報告するという姿勢が大切じゃないかなと思います。

大阪モデルっていうのは、Rの正確な値がわからないので、陽性率とか1日あたりの感染者、新規のトレースできない数とか、言ってみればRを推測していると私は理解しておりますので、ぜひこのRを、ドイツとかは毎日出していると思いますので、専門家が首相に毎日報告すると。「さあ、首相決めてください」という姿勢が日本も必要だと思います。

安倍首相:
 いま先生がおっしゃったことはまさにポイントでありまして、東京都に対しては、その日に発生した新規の感染者数について報告していただきたいということを申し上げているのですが、発生ベースではなく報告ベースの場合が多いんですね。そうすると正確なRがわからないという問題もありますので、お願いさせていただいています。

 しかし、いままでの経緯を見ても、3月14日においてはR値が2.6だったんですね。それが一時は0.5近くまで下がっています。
 ただ、日々によって違いはありますが、日本全体で見ると0.7までは下がってきています。これをしっかりと下げていきたいというのと、実効再生産数を正しく見るためには、ぜひ、保健所は大変だと思いますが、そういった数値の対応もPCRもあります。
 その中でもできるだけ頑張ってその日その日の数値を出していただきたいということも東京都あるいは国も保健所にお願いしているところです。

──シンプルに検査数だけでは割り切れない、新規の検査がどれだけだったのかということがポイントになってくるということですね。また、1を切れば収束に向かうと我々最初に思っていましたけれども、医療現場の現状を考えると、0.5がひとつの指標であると。総理、これは今後、公表をマメにしていただけるということでしょうか?

安倍首相: 
 もちろん、政府は把握しているものを全部公表しています。しかし、それが正確かどうかですね、正確性を期すためには、保健所がいま大変な仕事の中で報告していただいているのですが、それがその日の発生ベースであるようにしていただけるように要請しているところであります。

 我々が持っている数字を隠していることはもちろんありません。全て公表しているのですが、大切なことはそれが、いま言ったようなものなのかどうかということでありまして、大変なことではあると思いますが、保健所、また特に東京都、大阪などもありますが特に東京都に頑張っていただきたいと思います。
先述の岡田晴恵教授は、実効再生産数のデータと計算式を開示するようにと述べていましたけれども、このように、安倍総理は政府として把握している数字は全て公表しているものの、数字そのものが報告ベースであるものが多く、正確性に欠くきらいがあるため、発生ベースで数字を上げていただくようお願いしていると答えています。




3.SEIRモデル


また、計算式についても、山中教授が「2.5を0.5に抑えようとすると、8割人と人との接触を減らす必要があると。これは本当に単純な算数」と述べていますけれども、実効再生産数の数理モデルについては、こちらの北海道大学大学院/医学研究院サイトで、解説されています。
ここで解説している数理モデルは、SEIRモデルと呼ばれるもので、「免疫をもたない者:Susceptible」、「感染し、潜伏期間中の者:Exposed」、「発症者:Infectious」、「回復者(免疫獲得者):Recovered」という順番に人が遷移していく過程を常微分方程式でモデル化したものだそうで、このモデルを使った、将来の感染者数を予測するツールを公開しています。

このサイトでは、実効再生産数Rtは、基本再生産数(R0)に接触頻度を削減できなかった割合を乗じたものとして考えることにsとして、「R0は2.5だが、8割接触を削減できたら、2.5×(1-0.8)=0.5がRtとなります」と例示しています。

おそらく山中教授が「単純な算数」と述べていた、8割接触を減らせばRが0.5になる、というのはこれに類する計算式ではないかと思われます。

ただ、実効再生産数については、件のサイトは「実際には、感染者がいつ、何日間にわたってうつすのか、また人によってうつしうる期間も異なるはずです。陽性と判断されるまでの期間や陽性と判断されないケースも考慮する必要もあるでしょう。他にもデータの生成過程から考慮しなければならないことはたくさんあると思います。完全に正確な値を1点で求めることは不可能ですから、ある程度、感染過程を考慮して実効再生産数に求めるにとどまってしまいます。例えば、感染してから他の人にうつすまでの平均日数が6日とするか7日とするかでも、その日数のばらつき(標準偏差)がいくつであるかに応じて、求まる実効再生産数は変わります」と、指摘しています。

理論と現実は当然違いますから、計算の前提となる数字をどう回収してきたか、ばらつきがどの程度あるのかを検証するためのデータは、専門家は当然考慮しなければいけないし、欲しい数字ではあると思います。


4.感染状況による対応


先のテレビ番組で岡田晴恵教授は、私個人としては今までのデータからして、今解除するのは危ない、論拠となる数値がちょっと違うんじゃないか、と疑問を呈していましたけれども、政府は今解除するなどとは一言も言っていませんし、実効再生産数だけを論拠にしている訳でもありません。

先に取り上げた専門家会議の提言では、今後の見通しについて、「感染の拡大を前提とした集団免疫の獲得のような戦略や、不確実性を伴うワクチン開発のみをあてにした戦略はとるべきでないとし、「感染状況が厳しい地域では、新規感染者数が一定水準に達するまで、徹底した行動変容の要請を求め、新規感染者数が限定的となった地域でも、再流行への対応体制を整えた上で、新しい生活様式への移行を促す」と、地域での蔓延の状況に応じた対策を取るべきと述べています。

提言には、「徹底した行動変容の要請」を維持するか、緩和するのかの判断に当たっての考え方が提示されています。それは次の通りです。
〇 こうした判断に当たっては、感染が一定範囲に抑えられていること(疫学的状況)、医療提供体制が確保できていること(医療状況)を踏まえることが考えられる。

具体的には、次のような要素を総合的に勘案して判断していくことが想定される。

①感染状況(疫学的状況)
・ 新規感染者数等(新規感染者数、倍加時間、感染経路不明の感染者数の割合等)の水準が十分に抑えられていること。なお、不十分な削減の場合には、感染者を減少させる期間が更に延びかねないものであること。
・ 必要な PCR 等検査が迅速に実施できること。

②医療提供体制
・ 医療機関の役割分担の明確化や患者受入先の調整機能が確立されていること
・ 病床の稼働状況(患者の状態や空き病床を含む)を迅速に把握・共有できる体制の構築
・ 軽症者等に対応する宿泊療養施設等の確保

など、今後の患者の増大を見据え、重症者から軽症者まで病状に応じた迅速な対応を可能にする医療提供体制が構築されていること。

〇 なお、上記①及び②の評価に併せて、より効率的なクラスター対策を講じられる体制の確保などにも努めていく必要がある。
提言を読む限り、実効再生産数は、新規感染者数等の水準が限定的になっているかの目安の一つにしか過ぎません。

ですから、岡田晴恵教授のテレビ番組での発言は、単純化し過ぎているきらいがあり、下手をすればミスリードになる危険もあるのではないかと思います。

安倍総理は、産経のインタビューで解除について「14日の段階で解除になればどういう基準で解除したかを国民に丁寧に説明したい。14日に解除にならなくても31日は待たない」と、一定の基準を満たせば都道府県ごとに段階的に解除すると述べていますけれども、当然、専門家会議の提言を踏まえてのことでしょうし、実効再生産数が0.5以下を維持できていれば、今月末まで待たなくても、山中教授のいうように8割減を6割減に緩和するといった限定的解除なら出来るという見込みがあるのではないかと思います。

その意味では、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」より、ネットでの「安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送」の方がずっと有益だったのではないかと思いますね。


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