侵略はスマートフォンとともに

 
更に続きです

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7.海亀族と千人計画

これまで中国は、海外の技術を積極的に導入し、時には技術移転を強要してきました。

その原動力の一つとなっているのが、海外で最先端の知識や技術を身につけて中国に帰国する「海亀」と呼ばれる若者たちです。

その数は300万人を超えるといわれ、彼らの中にはアメリカで最先端技術を研究してきた人材も少なくありません。

中国のネット検索大手「百度」の張亜勤総裁もその一人。張氏は飛び級で入った中国科学技術大学を卒業後、アメリカに渡り、ジョージ・ワシントン大学で博士号を取得。入社したマイクロソフトでアジアの研究開発部門のトップを務め、2014年に「百度」に転じてからは、検索技術の応用やAI、自動運転などの先端技術の研究を主導しています。

また、アリババ集団が出資する顔認証技術のスタートアップ、北京曠視科技(メグビー)の創業者である印奇氏も「海亀」の1人だとも言われています。彼は中国の名門、清華大学を卒業後、アメリカのコロンビア大学で顔認証技術の開発に従事。2011年に精華大学時代に知り合った2人の「学友」と共に北京曠視科技(メグビー)を設立しています。

中国共産党も彼らのような有望な「海亀」を育成。あらかじめ選抜した優秀な人材を海外に送り込む「千人計画」と呼ぶプロジェクトを2008年に立ち上げています。

ハイテクなど国が重点分野と定める分野において、選んだ人材に対し、党が資金を支援するなど手厚く優遇。彼らを世界の最先端の研究の場に送り込んでいます。
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また、それだけではありません。他国の優秀な技術者に技術移転を強要し、拒むと口封じをするとも囁かれています。

2012年の話ですけれども、電気工学の博士号を持ち、シンガポール政府の科学技術研究機関であるマイクロエレクトロニクス研究所(Institute of Microelectronics、IME)で、特殊なGaN(窒化ガリウム)開発プロジェクトのリーダーを務めていた、アメリカ国籍の技術研究者シェーン・トッド氏がシンガポールの自宅マンションの部屋で首を吊った状態で発見される事件がありました。警察は「自殺」と断定したのですけれども、シェーン氏に対しファーウェイが技術供与を迫っていたとも報じられています。

2013年2月のフィナンシャル・タイムズによると、マイクロエレクトロニクス研究所は、アメリカ本拠の技術開発会社ビーコ(Veeco)から数百万ドルでMOCVD(有機金属化学気相成長)システムを購入しました。このビーコの技術は、民間でも軍事でも需要があるのだそうです。

マイクロエレクトロニクス研究所はビーコから商用ライセンスを取得しているのですけれども、同時にファーウェイとも協力関係にありました。

シェーン氏は生前、「僕は『ある中国企業』から、胸が悪くなるようなことを頼まれた」と、マイクロエレクトロニクス研究所からファーウェイへの技術移転を手伝うよう要求されたと、両親に語ったことがあるそうです。

シェーン氏は「アメリカ国家の安全を危険にさらすような依頼」だったため、要求を拒んだそうなのですけれども、その後、身の安全に危険を感じていると、アメリカにいる両親に伝えていました。

そうした背景を抱えたままシェーン氏は亡くなった。後に、シェーン氏の言う「中国企業」とは、遺品であるハードディスクに残された記録から、ファーウェイであることが分かりました。

シェーン氏の母親であるメアリーさんは「アメリカ当局が、私の息子の死とファーウェイの技術盗用について調査することを望んでいます」と大紀元の取材に答えています。

ファーウェイの技術盗用が疑われるのは理由がないことではないのですね。


8.徹底抗戦を決めた習近平

こうした中、中国政府は、アメリカに対し徹底抗戦を決めたようです。

在中国のアメリカ商工会議所(ACCC)上海の姉妹組織が会員企業を対象に実施した調査で、アメリカ企業は中国で、当局による検査のほか、通関手続きや許認可の遅れなどの非関税障壁に直面していることが明らかになりました。

250社近くの回答企業のうち40.7%が生産設備を中国国外にすでに移したか、移設を計画していることも分かりました。

習近平主席は、今週、国民に対し「新たな長い行進」に備えるよう演説。市場アナリストはこの発言を、中国政府が対米摩擦の長期化に身構えていると受け取っています。

また、国営中央テレビ(CCTV)の専門チャンネルは、16日から予定の番組を変更し、視聴者の多い夜のゴールデンタイムで連日、朝鮮戦争を題材にした映画を放映しています。

朝鮮戦争で中国は「抗美援朝」のスローガンを掲げ、義勇軍を派遣して北朝鮮を支援。この抗美援朝は、アメリカとの「貿易戦争」において、互いに高関税をかける一方、アメリカと交渉するという基本方針を示しているともいわれ、官製メディアは朝鮮戦争を引き合いに「3年の抗美援朝のうち2年は戦いながら交渉していた」とする評論を掲載しています。

共産党機関紙の人民日報も13日「アメリカは自らの名誉を傷つけ、米中貿易交渉をひどく邪魔している」という評論を1面に掲載。国営新華社も対米批判を連日展開しているそうです。

次は、米中貿易交渉に関する人民日報の論評記事ですけれども、見出しを見ても「~すべきでない」とか「~すべきだ」ばっかりで、もう中国を批判するな、と涙目になっているのが目に見えるようです。
5/20 「中国が知的財産権を窃盗」論はもう止めるべき 
5/17 「米国が中国を建て直した」論はもう止めるべき 
5/16 「中国が前言を翻した論」はもう止めるべき 
5/15 米国は「被害者論」をこれ以上振りかざすべきではない 
5/15 「追加関税有利論」はもう終わり 打撃は米国に

このように中国政府は、「抗日」ならぬ「抗米」宣伝に打ってでました。分かりやすいですね。

中国では、ファーウェイ支援は愛国の表現と受け取られているようで、ファーウェイを支援する動きも広がっています。

5月20日、江蘇省のある医薬品メーカーは、グループで携帯電話などを購入する場合、原則としてファーウェイ製品を選ぶと決定。従業員が携帯電話を外国製からファーウェイ製品に切り替える際には1人あたり500元(約8000円)を補助するようです。

また、共産党と国務院(政府)はテレビやラジオが毎朝7時、国歌を流すことなどを求めた通知も出しています。

中国政府が「抗米」を唱え、人民に「愛国」を訴える。ファーウェイ支援が「愛国」行動と見做される。表向きは貿易摩擦ですけれども、その奥には、思想的な争いの影が見え隠れします。


9.中国共産党そっくりのファーウェイ

今回のファーウェイを巡る争いについて、筆者は貿易の次元だけではなく、もっと「上の階層」での争いが始まったと捉えています。

その「上の階層」とは何かというと「世界観」です。

地政学者の奥山真司氏は、NYタイムズのファーウェイ記事を引用し、ファーウェイ社長には「愛国」、「忠誠」、「個人の権利よりも公」という大きな三つの世界観があり、ファーウェイ内部のスローガンとして、「中国のものを使って西洋に適用する」というのがあると述べています。ファーウェイ社長は「西洋の価値観を完全に受け入れる訳にはいかない」とも。

そして、NYタイムズはファーウェイについて企業文化も内部組織構造も中国共産党とそっくりだとし、こんな世界観を持っているファーウェイは世界で活躍できないのではないかと指摘しているそうです。

けれども、この考えには大きな前提条件があります。それは、欧米、日本などを中心とした自由主義という世界観が世界のスタンダードである、という大前提です。

欧米人や日本人にとって当たり前に感じられる自由主義とて、それで全世界を覆っている訳ではありません。独裁国家もあれば、社会主義国家や共産主義国家もあります。

もしも、中国のような共産主義がよいのだ、と考える国家が世界の半分以上を占めてしまえば、共産主義が世界のスタンダードになってしまいます。

ファーウェイが持つ世界観、内部構造が中国共産党と同じだとすると、例えばファーウェイが世界中の企業を買収し、世界中にファーウェイ製のスマホやネットワークサーバをばら撒いたとしたら、そこに現れるのは、企業の皮を被った大中華通信圏、大中華経済圏です。



10.侵略はスマートフォンとともに

ファーウェイが中国政府のバックアップと資金援助を受け、ありとあらゆる自社製品を完全内製化できたとしたら、そういうことも可能になるのですね。それこそ5Gサーバやスマホを採算度外視であり得ない価格でばら撒くことだって出来るわけです。

その狙いは、おそらく通信覇権でしょうね。

現代は通信インフラの重要性が益々高まっています。情報の持つ価値が飛躍的に高まっているからです。

クレジットカード決済などの経済活動はもとより、イージス艦やステルス機のデータリンクなど、軍事面でも通信インフラは大きな位置を占めるようになってきています。

今年3月、中国で全人代が行われている最中、携帯電話の通信速度が4G(第4世代)から2G(第2世代)に落ちるという事件がありました。

これについて、大紀元時事コメンテーターの夏小強氏は、中国当局が全人代の開催中、国民間の情報伝達をコントロールしようとしていると指摘していますけれども、例えば、ファーウェイが自社製品に「バックドア」を仕込んで世界中にばら撒き、何かあったとき世界の通信網を大混乱に陥れることだって可能になります。

その通信網の中に軍事施設があったら、堪ったものではありません。

今から十年も前になりますけれども、2008年末から2009年初頭に掛けて、ロシアがウクライナへの天然ガス供給を停止したことにより、ヨーロッパ諸国までもがエネルギー不足に陥ったことがありました。

ロシア産天然ガスの8割がウクライナのパイプラインを経由していた為、ウクライナへの供給が止まるとその下流にあるヨーロッパ諸国へのガス供給も止まった訳です。

中国国内での携帯通信速度が4Gから2Gに落ちた事件でも分かるように、同じ事が通信分野でも起こり得るということです。

また、これとは逆に、意図的な情報を載せて流すことだって可能です。

世界中にばら撒いたスマホに仕込んだバックドアから、あらゆるデータを抜くのみならず、中国に有利な情報ばかり垂れ流すことも出来ますね。

なんとなれば「中国共産党は素晴らしい」だとか「中国に逆らうな」というメッセージをスマホ画面に1/10秒とか1/20秒で表示させるといったサブリミナルを仕込んで、ファーウェイユーザーを「洗脳」することだって出来るかもしれません。

我々日本人の感覚であれば「洗脳」とは、なんて「非人道」的な、と思うかもしれませんけれども、「人権のない国」は文字通り"人を人とも思わぬ、モノ同然の扱い"を平気でやれてしまうのですね。

これは、現実にウイグルで思想弾圧を「再教育」と称して中国が行っていることです。

ですから、ファーウェイ問題は単なる排除だけでは終わらない。そんな小さなものではなく、自由と共産という世界観の戦いが始まったのではないかと筆者は考えています。

一昨日のエントリー「ファーウェイは世界から排除されるか」で、ファーウェイの任正非CEOのインタビューについて取り上げましたけれども、彼は「日本、中国、韓国は自由貿易区域を作らなくてはならないと思う。日中韓間で自由貿易協定(FTA)が結べれば、そこにASEANやEUも入ってくる可能性がある。中国政府が進める一帯一路計画と結びつけば、中央アジアとのつながりも出てくる」と述べています。

デジタル社会が進み、情報が価値を握り、お金でさえもデジタル信号処理で行われる今の世で、一帯一路にファーウェイ機器が張り巡らされれば、そのネットワークがそのまま大中華帝国通信圏、あるいは大中華経済圏になってしまう可能性は十分にあります。

例えば、いうことを聞かない相手国であっても、その国の通信インフラを握っていれば、通信網をストップさせるぞ、経済を麻痺させるぞ、ということで、いくらでも脅すことだって出来る訳です。そうして大中華帝国通信圏の国々を恭順させて属国化していく。これなら一兵も要りません。

そして、その間にじっくりと「再教育」と言う名の洗脳を掛けて、中国に逆らわないように仕向けていく。そういうやり方ですね。

まぁ、スマホに「共産党宣言」がプリインストールされていたら、筆者はその場で投げ捨ててしまいますけれども、ハードにもソフトにも「思想」は載せられるということです。

その意味では、ファーウェイ問題は単なる知的財産権の問題にとどまらず、通信インフラを土台にした壮大な世界観の戦いにまで繋がっているのではないかと思いますね。

"侵略はスマートフォンとともに"やってくる。気が付いたら異世界(Another World)に引きずり込まれている、なんてことのないように注意が必要だと思いますね。
 

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