中国を知った世界と世界を知らなかった中国

今日はこの話題です。
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1.中国のプロパガンダに加担するな


中国女子テニス選手の彭帥氏の失踪問題がどんどん大きくなってきています。

11月22日、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、国際オリンピック委員会(IOC)が、彭帥氏の無事をテレビ電話で確認したと発表したことについて「中国政府のプロパガンダに加担するな」と批判する声明を発表しました。

ヒューマン・ライツ・ウオッチは、他の関係者が彭帥氏と連絡が取れない中、通話がどのように設定されたのかを「IOCは説明していない」と指摘。「言論を規制し性的暴行疑惑を無視しようとする中国当局と積極的な協力関係に乗り出した……IOCは、オリンピック選手の権利と安全よりも、重大な人権侵害者との関係を重視している」と非難しました。

そして、中国が彭帥氏問題で全面的な言論統制を実施し、中国のインターネットでは「彭」や「テニス」といった言葉さえ検索規制対象だとも述べています。

ヒューマン・ライツ・ウオッチは、IOCが、"スポーツにおけるあらゆる形態のハラスメントや虐待から選手を保護するための措置を積極的に講じている "と主張しているにも関わらず、彭帥氏への性的暴行疑惑に関して支援を行ったかどうかは明言していないと痛烈に批判し、IOCに対し、次の5項目を要求しています。
・ビデオ通話に関する声明を撤回すること。
・中国政府の関与の詳細を含め、ビデオ通話と声明を取り巻く状況を公に説明すること。
・中国政府に対し、彭氏の申し立てに対する独立した透明性のある調査を開始するよう求めること。
・中国政府に対し、彭氏の事件に関する報道や議論に対するすべての検閲をやめるよう要請すること。
・中国政府に対し、彭氏が希望する場合には中国からの出国を認め、中国に残っている家族に報復しないよう要請すること。
人権団体からすればどれも当然の要求です。これが中国政府に対する要求のみなら無視あるいは嫌がらせされて終わるところですけれども、IOCに飛び火したことで、もはやスルーできない事態にまでなっているように思います。

仮に、IOCがヒューマン・ライツ・ウオッチの要求通りに中国政府に申し入れしたとして、それが中国政府に撥ねつけられてしまったら、今度は北京冬季五輪を中止しろという要求が飛んでくることが容易に想像されます。


2.謎を解く鍵は歴史決議にある


今回の問題について「なぜ彭帥氏が告発したのか」「なぜ彭帥氏が姿を消したのか」「なぜ中国共産党の対応は後手後手なのか」という疑問について、評論家の石平氏は、中国共産党が11月16日に全文を公開した『歴史決議』にその答えが潜んでいると述べています。

まず、石平氏は、「なぜ彭帥氏が告発したのか」について、彼女は習近平一派の後ろ盾を得て告発したと考えるべきだとし、「中国共産党における権力闘争の一環だった可能性がある」と述べています。

石平氏は「本来なら張高麗に関するスキャンダルがネット上に書き込まれた瞬間、跡形もなく消去されるはずです。ところが、彭帥さんの投稿は拡散しました。これは中国当局がある程度、拡散を容認したと見るべきなのです」と述べ、更に、中国外務省が告発について「私は聞いていない。これは外交問題ではない」とコメントを避けた点に着目し、「党が把握していない正真正銘の告発なら、外務省は全力で張を庇うはずです。性的関係の強要という暴露は大スキャンダルですから、党の名誉のため何を置いても擁護するでしょう。しかし、外務省担当者の回答は『私は聞いていない』でした。この発言に反論のトーンはありません。党が『積極的に打ち消す必要はない』と判断したことが透けて見えます」と指摘しています。

石平氏は「あくまでも習近平一派の後ろ盾を得て告発したわけですから、彭帥さんは当局から守られている可能性が高いでしょう。日常生活には何の支障もないはずです」と彭帥氏が姿を消した理由を説明しています。

そして、最後の中国共産党の対応が後手に回っていることについては、彭帥氏が告発した張高麗氏が江沢民を筆頭とする、いわゆる"上海閥"に属していたことから、習近平主席の取り巻きが、勝手に忖度して彼のスキャンダルを6中全会の直前に表沙汰にすることで、江沢民一派を恫喝した。ところが、その取り巻き達は、プロテニス選手の国際的な知名度と影響力。そして、欧米社会が人権や性的虐待に敏感であることに無知であったため、今回の醜態を晒したというのですね。

なるほど、中国共産党当局の感覚が西欧社会の常識から懸け離れているのが露呈したという見方は一定の説得力があると思います。


3.苦しみに満ちた告白


一方、今回の告発は本当の告発だという見方もあります。

中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏は、彭帥氏の告発文を紹介し、「告発」というよりも、苦しみに満ちた「告白」だと指摘。ジャーナリストの近藤大介氏も告発文を全訳し、「身を挺しての、凄まじい告白である……テニスどころか、「存在」すら許されなくなるかもしれない。身の上が案じられる」とまで述べています。

近藤大介氏は、2012年の第18回共産党大会で北京で聞いた話として「張高麗は『無能な政治家』だが、ひたすら江沢民総書記一派に、広東省の石油利権を与え続けて出世した。それでトップ7の最後の7番目が決まらなかった時に、江沢民一派が推薦したのだ。張はまた、引退後に晩年を深圳で過ごした習仲勲副首相の面倒もよく見たので、息子の習近平新総書記としても、異論はなかった」と紹介し、ロボットのように表情がない張高麗氏が出世した理由を述べています。

張高麗氏は晩年、習近平主席の父である習仲勲氏の面倒をよく見たとのことですけれども、先に紹介した遠藤誉氏によると、張高麗氏は、習仲勲が鄧小平によって二度目の失脚をさせられたあと、習仲勲を何度も訪ねては勇気づけたらしいと述べ、なぜあそこまで張高麗氏を習近平主席が引き立てたのかという心理が分かると指摘しています。

遠藤誉氏は、それだけに、今回の問題は、習近平にとって「なかったもの」にしなければならず、彭帥氏に対しては破格の厚遇をしてもてなすと同時に監視して、「どうか黙ってくれ、どうかなかったものとして諦めてくれ」と頼み込んでいるだろうと推測しています。

遠藤誉氏は、今回の問題に対し、「反習近平派が起こした権力闘争」とする一部の「専門家」の見方があることについて、中国の監視体制からみてあり得ないとし、そのような見解は非常識であると批判しています。

これは確かにそうかもしれません。けれども、遠藤誉氏は「反習近平派が起こした権力闘争」は否定しているのですけれども、残念なことに先に石平氏が指摘した「習近平派が起こした権力闘争」という見方については何も触れていません。

こうした、石平氏と遠藤誉氏の意見の相違に見られるように、今回の問題には識者でも見解が分かれています。

ただ石平氏と遠藤誉氏の意見の違いは、つまるところ、習近平主席が張高麗氏をどう見ているかに拠る違いではないかという気がします。

つまり、張高麗氏を江沢民一派の政敵であるとみれば石平氏の見方になるし、逆に父の習仲勲を助けた大恩ある人とみれば遠藤誉氏の見方になるのではないかということです。

筆者はどちらかといえば石平氏の見解を支持したいと思います。


4.世界を知らなかった中国共産党


この問題について11月23日、中国外務省の趙立堅報道官は定例会見で「一部の人々が故意に、悪意をもって誇張するのをやめるべきだ。問題を政治化するのはもっての外だ……最近複数の公的行事に出席したり、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長とビデオ通話をしたりする様子を、皆目にしたはずだ」といつもの"マントラ"を唱えたようですけれども、世界はそのようには見ていません。

11月21日、フランスのジャンイブ・ルドリアン外相は、フランス・メディアLCIに対し「私が期待することは一つだけ、それは彼女自身が話すことだ……もし彼女にそれが許されないのであれば、我々は何らかの外交的な影響を与えざるを得ない」と「より多くの証拠を提供するよう」中国当局に呼びかけました。

更に、女子テニス協会(WTA)も動画の公開は彭帥氏の安否への懸念を払拭するのに「不十分」だとし、WTAのサイモン最高経営責任者(CEO)は、「彭氏の中国出国を許可するか、あるいは他者がいない環境で自分と直接ビデオ通話するか」を求めています。

先に紹介した石平氏は、中国共産党の幹部について「彼らにとってプロテニス選手は、利用すべき"党利党略のための駒"にすぎず、告発も単なる"下半身の醜聞"という位置づけだったのです。だからこそ党内部における権力闘争の一環として利用したのではないでしょうか。しかし、彼らは無知だったために、予想もしなかったしっぺ返しを食らいました。我々の常識は中国共産党の常識ではない。その点においても、今回の騒動は極めて重要なニュースだと言えます」と述べていますけれども、筆者もこの問題は一つのターニングポイントになるような気がします。

なぜなら、中国が言論統制して人権弾圧する国家であるという実態が、スポーツを介して、政治に興味のない層にも知られたからです。しかも、彭帥氏は武漢ウイルスとは違って、その姿を目にすることができます。爆破してなかったことにはできません。起源調査ならぬ「安否確認」を拒絶したり誤魔化したりしても、疑いを増すだけで、火消しには全くなりません。

更に、先にも触れましたけれども、IOCが中国の肩を持ったがために、そちらにも飛び火して冬季北京五輪の開催是非にまで発展しようとしています。

ここでIOCが中国を庇って何もしないのであれば、今度は選手自身がボイコットして軒並み出場辞退することもあるのではないかとも思ってしまいます。

石平氏は事態を収拾する方法について「彭帥さんを表舞台に完全復帰させる必要がありますが、世界中のメディアから質問を浴びせられます。まさか『中国共産党から助言されて性的被害を告発しました』と答えるわけにもいきません」と述べていますけれども、今の状況では彭帥氏が中国国内でなんど記者会見しても、中国当局から言わされているのだろうと疑われるだけではないかと思います。

ここはやはり、ヒューマン・ライツ・ウオッチが要求するとおり、「中国政府に対し、彭氏が希望する場合には中国からの出国を認め、中国に残っている家族に報復しない」ようにならない限り、彭帥氏は本当のことを話せないのではないかと思います。

これで、西側諸国による外交ボイコットも行われる可能性が増々高くなってきたように思います。中国は政治とスポーツは別だと、いつもの"マントラ"を唱えていますけれども、「その通りだ。だから北京五輪に政治家は行かない」と言い返されてしまったらどうするのか。

仮に、北京五輪で外交ボイコット、ましてや北京五輪中止にでもなろうものなら、習近平主席の威信に傷がつき、3期目続投も怪しくならないとも限りません。

そう考えると、最後の最後には、やはり彭帥氏を表に出すしかないのではないかと思いますね。


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