オーカスと漂流する同盟

今日はこの話題です。
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1.変わり果てたこの世界


9月24日、ワシントンを訪問中の菅総理はオーストラリアのモリソン首相と会談しました。

会談は、朝食の時間も含め、約70分間に渡り、中国の経済・軍事両面での台頭を念頭に、経済的威圧や東シナ海や南シナ海などでの力による一方的な現状変更の試みへの強い反対の意を改めて共有。

菅総理は、北朝鮮による拉致問題の即時解決に向けた理解と協力を求め、モリソン首相から支持を得たとしています。

また、菅総理は、菅首相は米英豪の「AUKUS(オーカス)」の創設に歓迎の意向を示し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向け、安全保障や経済分野で引き続き緊密に連携していくことで一致しました。


2.闇の中で密かに契約は流れて


「AUKUS(オーカス)」とは、「Australia・United Kingdom・United States」の頭文字を取った名称で、オーストラリア (AU)、イギリス (UK)、アメリカ合衆国 (US)の三国間の軍事同盟です。

この協定は、潜水艦や自律型無人潜水機、長距離攻撃能力、敵基地攻撃能力などの軍事分野やサイバー戦争の抑止のためのサイバーセキュリティ、人工知能(AI)、また近年研究開発が進む量子コンピュータを用いた暗号化技術を念頭に量子技術といった最先端テクノロジーの開発を主要な対象としています。

手始めに、アメリカとイギリスは、オーストラリアに原子力潜水艦の建造技術を提供して原潜8隻を建造するとともに、長距離巡航ミサイル「トマホーク」を供与。インド太平洋地域の軍事プレゼンスを強化することを目指しています。

「AUKUS(オーカス)」について、ホワイトハウスの情報筋は、中国に対抗する意図があると述べており、多くのアナリストもこの見方をとっているようです。

この協定により、オーストラリアは初めて、原子力潜水艦の製造が可能になるのですけれども、その煽りを受けたのがフランスです。

2016年、フランスはオーストラリアと最大12隻のディーゼル潜水艦を建造する900億ドル(約9兆8900億円)に及ぶ契約を進めていたのですけれども、建造費の超過や計画の遅延があったこともあり、オーストラリア国防省トップが代替案を示唆していました。

慌てた、フランスは今年6月、オーストラリアのモリソン首相をパリに迎えた際、「オーストラリアの要求に迅速かつ十分に応えるつもりだ」と、オーストラリア側に配慮を示していました。

けれども、その裏で、オーカス計画が進んでいました。メディア各社の報道によると、オーカス創設計画の検討が始まったのは2021年3月。原潜保有を希望するオーストラリア海軍が、建造技術の供与についてイギリス海軍トップに打診したのが始まりです。

イギリスのジョンソン首相は今年6月の、G7首脳会議にオーストラリアのモリソン首相を招待し、バイデン大統領をまじえた米英豪3ヶ国による秘密首脳会談で計画の詳細を詰めていました。その際、3ヶ国はフランスを通じて情報が漏れるのを警戒し、フランスのマクロン大統領を除外したのですね。

結局、フランスの契約は、白紙撤回。激怒したフランスは17日、アメリカとオーストラリアに駐在する両フランス大使の召還を決めたと発表しました。

その後22日に、アメリカ側の要請によってバイデン大統領とフランスのマクロン大統領による電話会談が行われ、両首脳は同盟国の間では事前に情報を共有しておくべきだったという認識で一致。バイデン大統領は今後は連絡を密にとることを約束しました。一方、フランスは召還していた大使を、来週、アメリカに帰任させるとしています。


3.光溢れる未来求めて


なぜ、オーストラリアは、フランスのディーゼルではなく、アメリカの原潜を求めたのか。

現在世界で、原潜を持つ国はアメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、インドの6ヶ国です。原子力潜水艦は、動力が原子力であるため、海水を蒸発させて真水を作り、それを電気分解することによって酸素も作り出せます。そうすることで、食料を別とすれば、半永久的に潜航して任務を継続することができます。

畢竟、原潜は自国から遠く離れた海でも行動できることになり、広い太平洋をカバーすることが可能となります。中国海軍は、アメリカ海軍と日本の海上自衛隊への対応に加え、オーストラリア原潜に対応する必要が生まれ、兵力の分散を強いられることになります。オーストラリアが原潜を持つだけで、海洋進出を進める中国に対する強力な牽制となるのですね。

要するにオーストラリアは、2030年代初頭に配備予定であった、フランス製のディーゼル潜水艦12隻では、中国の脅威に対抗できないのではという不安があったということです。

一方、アメリカもオーカスを立ち上げることで、自身の国益を図っています。

オーカスの目的について、バイデン大統領は「21世紀の脅威に対処する能力を最新に向上させる」と、中国に対抗する姿勢を鮮明にした上で「アメリカの欧州における同盟国をインド・太平洋での協力に転換する第一歩」と、イギリスと協力する意義をつけ加えています。

実際、オーカス創設発表翌日の9月16日には、ワシントンで米豪外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開き、オーストラリアに駐留するアメリカ空軍の兵力規模を拡張することで合意。中国をにらんだ米豪協力を強化していくスタンスを明らかにしています。

また、オーストラリアへの原潜技術供与は、小型原子炉の輸出という狙いも指摘されています。

アメリカはスリーマイル島原発事故後は、原子力への不信が高まり、発電所の稼働率が低下すると共に、新規建設も久しく途絶えていました。原発輸出も振るわず、中国の後塵を拝していました。

ところが、今回のオーストラリアへの原潜技術供与が突破口になる可能性も出てきました。

原潜向けの小型原子炉は、発電所に使われる「加圧水型原子炉(PWR)」とほぼ同じもので技術的な差はありません。アメリカは部品を現地に運んで組み立てる「小型モジュール炉(SMR)」を開発中で、オーストラリア南部アデレードで組み立てるとみられています。

つまり、アメリカにとっても、オーストラリアへの原潜技術輸出は一石二鳥の施策だという訳です。


4.いつ帰ってくるの?(When are you coming home)


ただ、先日のアフガニスタンからのアメリカ軍撤退の失態。EU市民のアメリカへの渡航禁止継続、今回のフランス抜きで進めたオーカス締結発表と、バイデン政権は同盟国重視だと口ではいいながら、やっていることは同盟国軽視に見えます。

アメリカのシンクタンクであるブルッキングス研究所のコンスタンツェ・ステルツェンミュラー上級研究員によると、ホワイトハウスの外交・安全保障政策はバイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官、ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官の4人で決められているそうなのですけれども、アメリカファーストを口にしてから物事を進めるトランプ前大統領より、黙って事を進めて同盟国を軽んじるバイデン政権の方がたちが悪い印象をうけます。

また、一部では、今回のオーカス締結は、対米自立志向の強いフランスを軽視する一方で、アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランドという、いわゆる「ファイブアイズ」を重視する、同盟関係の「組み換え」ではないかとみる分析も出ているそうです。

アメリカは、対中シフトへ戦略変更するのに同盟関係をも組み換えするのか、というのはあながち絵空事ともいえないかもしれません。

なぜなら、アメリカは韓国に対する態度も変え始めているからです。


5.何処に行くの?(Where are you going to)


先日アメリカ下院で、2022会計年度国防権限法が可決されましたけれども、そこでは、在韓米軍縮小制限条項が入っていませんでした。

この条項は、アメリカ政府が議会の同意なく在韓米軍を28500人以下に減らすのに予算を使用できないようにするものなのですけれども、これが削除されたのですね。

国防権限法は、上院と下院の可決と大統領署名を持って発効するのですけれども、22日に公開された上院での国防権限法にもこの条項が入っていないことが明らかになっています。

つまり、来年以降、在韓米軍が半島から撤退する法的制約を無くしたということです。

筆者は9月7日のエントリー「バイデンの隠された大戦略」で、アメリカは対中戦略として、周辺国に対してバックパッシング戦略を取り始めているのではないかと述べたことがあります。

まぁ、急に半島から在韓米軍が居なくなるとは考えにくいですけれども、先日の"無様な"アフガン撤退を見せつけているだけに、いったん撤退を決めたら、問答無用となることは否めません。

25日、訪米中の菅総理は、バイデン大統領と首脳会談を行いましたけれども、あるいは、バイデン大統領から、在韓米軍撤退後、日本が最前線になることについての要請と了解を求めたのではないかとも思ってしまいます。当然その場合は後継総理にもその路線を継承するよう求めることは疑いありません。

その意味では、月末の自民党総裁選で誰が選出されるのかは、非常に重要になってくるのではないかと思いますね。



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