一帯一路に対抗するEUとFOIP

今日はこの話題です。
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1.EUのグローバル・ゲートウェイ戦略


9月15日、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州議会での一般教書演説で、世界大競争時代において欧州連合(EU)は「より積極的に」関わっていくべきだと述べ「グローバル・ゲートウェイ」戦略を発表しました。

これは、交通とインフラのための国際的な投資計画で、ライエン委員長は「高いクオリティーのインフラ設備に投資し、世界各地の製品、人、サービスをリンクしていく……私たちは依存関係ではなく、つながりを作りたい……グローバル・ゲートウェイを信頼できるプロジェクトにしていく」と述べました。

この戦略は、今年7月、EU外相が欧州委員会に対し、欧州の価値を海外に広め、"持続可能な接続性を通じて世界の利益を守る"ための戦略を策定するよう求めたのが切っ掛けです。

それからわずか3ヶ月での発表です。まだグローバル・ゲートウェイ戦略は最終決定ではなく、予算についても何も語られていないのですけれども、ライエン委員長は、投資は民間と公共の混合でなければならず、ビジネスセクターとのコラボレーションを優先しなければならないと述べています。

ライエン委員長はこの戦略について、依存関係ではなく繋がりを作ると述べていますけれども、この言い回しは言うまでもなく、中国の一帯一路を意識してのことです。

中国は、一体一路を使って、一部の途上国を債務の罠に陥れることで、周辺国から対価を強奪してきました。

2018年、スリランカ政府は債務返済のために、南部ハンバントータ港を99年にわたって中国に貸し出しましたし、マレーシアやパキスタン、ミャンマーなども同様に、中国からの多額の債務に追い詰められ、重要な海上インフラの長期的な運営権を中国当局に差し出しています。

以前からグローバル・ゲートウェイのようなスキームを提唱してきた緑の党の欧州議会議員であるラインハルト・ハンス・ブティコファー氏は、「欧州議会は何年も前からこの問題に取り組んできましたが、今回、欧州委員会が主体的に取り組むことを強く歓迎します。中国はBRI(Belt-and-Road Initiative:一帯一路)で先を越されてしまったので、私たちは追いつく必要があると思います」と述べています。

また、EUの高官も、グローバル・ゲートウェイは中国当局の「一帯一路」と比べ、途上国に対して「より透明に」融資していくとしています。要するに、こちらは、債務の罠に陥れることはないとアピールした訳です。

これは、途上国が中国の一帯一路に飲み込まれるのを阻止して、EU側にジョイントさせるためのものと見ることもできると思います。

ライエン委員長は、来年2月に開催される次回のEU・アフリカ首脳会議では、「グローバル・ゲートウェイ」が優先されるだろうとし、「私達は、地中海の両岸をつなぐグリーン水素の市場を作るために、アフリカと一緒に投資していく」と述べていますけれども、近年、中国が圧倒的な投資家となっているアフリカをEU側に引き寄せる狙いがあることは明らかです。


2.アジア・アフリカ成長回廊構想


一帯一路を警戒し、新しい経済的枠組みを作ろうという試みはEUだけではありません。インドもその一つです。

中国と外交的に対立しているインドは対中経済関係が当初の期待通りに進展しないことに加え、一帯一路の一部となる「中パ経済回廊(CPEC)」を警戒しています。

この中パ経済回廊(CPEC)は、新疆ウイグルとパキスタンのグワダル港を結ぶ巨大計画で、カシミールのパキスタン実効支配地域、ギルギット・バルチスタンを経由します。この地域の領有権を主張するインドとしては、安全保障面だけでなく、政治的に受け入れらるものではありません。

また、中国のプロジェクトは、スリランカのハンバントータ港などに見られるように、対象国を債務の罠に嵌めて借金漬けにし、生態系を破壊しているとの批判や、透明性を欠いており、裏に政治的な影響力拡大の野心があるのではないかという疑念が絶えません。

こうしたことを背景に、インドがこれらに代わる構想として打ち出したのが、日本と協力して進める「アジア・アフリカ成長回廊構想」です。

これは、質の高いインフラによるコネクティヴィティ構築、能力・技術向上、保健・医薬品・農業・災害管理などの協力、人的交流を柱とし、「自由で開かれたインド太平洋地域実現のため、アジアとアフリカの成長と相互連結を改善」することを目指すものです。

インドがハブとなって、アフリカもジョイントさせようとする、日本の「自由で開かれたインド太平洋」構想に支線を拡張するような構想に見えなくもありません。


3.ブルードット・ネットワーク


さらにアメリカも動いています。

2019年、アメリカは、日本、オーストラリアと共に、民間部門主導の開発を通じた透明性の高い資金調達と質の高いインフラ支援に関する基準(認証制度)を策定し、投資規模を拡大させながらインド太平洋地域での途上国支援を強化していく「ブルードット・ネットワーク」を立ち上げました。

なぜ、「ブルードット・ネットワーク」が立ち上がったのかというと、アジア開発銀行(ADB)の融資と先進国のODAプロジェクトだけでは、経済発展したい途上国の旺盛な開発ニーズを満たすことができなかったからです。

トランプ政権で大統領補佐官を務めたロバート・オブライエン氏はブルードット・ネットワークについて「道路や港やエネルギーシステムなどのインフラ開発投資プロジェクトを評価するミシュランガイドのようなものだ」と述べていますけれども、中国が「一帯一路」の参加国に融資を行い、建設工事を担うことに対して、ブルー・ドット・ネットワークは、インフラ開発を必要とする国への資金供給を促すことを主眼としています。

これは、中国が一帯一路で、相手国を債務の罠に陥らせ、その支払いの代わりに港湾などの使用権を奪うといった"侵略"に対抗するものです。

既に2019年11月にバンコクで開催されたビジネスフォーラムでいくつかの計画と契約が締結され、日米間では日本が液化天然ガスプロジェクトに1兆円相当(100億ドル)を投資する誓約が結ばれています。

他にも、追加のインド太平洋エネルギープロジェクトに対する最大7000億円相当(70億ドル)の資金調達などがあります。

アメリカはインド太平洋地域だけで実に約1兆ドル(約105兆8800億円)にのぼる直接投資の追加を決定していることから、その本気度が窺えます。

そして、2021年6月には、OECDとアメリカ、オーストラリア、日本の各国政府は、ブルー・ドット・ネットワークについての協議を開始しています。

この計画について、アメリカのマルシア・ベルニカット経済成長・エネルギー・環境担当国務次官代理は「新型コロナウイルスのパンデミック後の"より良い復興"に向けて、ブルー・ドット・ネットワークの基準を満たす良質なインフラを構築することが、持続可能な世界経済の復興を確かなものにする」と述べ、OECDが実施した調査によると、回答者の96%という圧倒的多数が、こうした枠組みにより良質なインフラ投資が促進されると答えています。

EUの「グローバル・ゲートウェイ」、「アジア・アフリカ成長回廊」、「自由で開かれたインド太平洋」、「ブルー・ドット・ネットワーク」と一帯一路に対抗するプロジェクトがどんどん立ち上がっています。

これらのポイントは「透明性」であり、中国が一番持ちえないものです。

EUが「グローバル・ゲートウェイ」構想を掲げたことで、一帯一路はEUに届かない可能性も出てきました。

今後の成り行きに注目です。


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posted by 日比野寿舟 at 07:06Comment(0)

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