高橋洋一内閣官房参与の辞任と国家緊急権

今日はこの話題です。
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1.辞めてすっきり爽やかですよ


5月24日、政府は、高橋洋一内閣官房参与が同日付で退職したと発表しました。

既に騒ぎになっているので、その背景は皆さんに知られていると思いますけれども、高橋氏は、自身のツイッターで武漢ウイルス感染状況を「さざ波」、緊急事態宣言を「屁みたいなもの」と表現したことが批判を浴びており、事実上の引責辞任となりました。

菅総理は東京都内で記者団に「これ以上迷惑をかけられない、ということで辞任した。大変反省していた」とコメントしています。

高橋氏は辞任の理由について、自身の公式ユーチューブチャンネルで「非常に下品な不適切な表現をしましたので、それについては深く反省しております」と謝罪し、屁みたいなの投稿で言いたかったことについて次のように述べています。
どうして日本は緊急事態宣言が弱いのしかできないのか。平常時に憲法改正してないから先進国で唯一、日本だけが緊急事態条項がない国になっちゃった。非常に厳しい行動規制ができない。世界と全く違うことを言いたかった……ただ表現がきつい。これには家族からも『お父さん下品です』と言われた。素直に反省しています。下品な表現を使ったのは日本だけが世界と違うことを言いたかった……お金は何ももらっていない。表現だけのことで言われるのは本意ではない。それと私は政治家でないのに政治問題化しているのも本意でない。辞めて、すっきり爽やかですよ。
今後について高橋氏は「言論活動はやめるつもりはない。ユーチューブもやめない。あまりに下品な表現をするつもりはないですけど、構わないでしょ」と今後も問題提起を続けると語っています。

この高橋氏の辞任について、立憲民主党の枝野幸男代表は党会合で「辞めたから済む話でなく、長期にわたりアドバイザーとして頼りにしてきた。首相の見識が問われる」と強調し、共産党の小池晃書記局長も記者会見で「ブレーンに据えた首相の責任が問われる」と菅総理の任命責任を追及する考えを示しています。いつもどおりです。




2.国家緊急権


高橋氏は日本国憲法に緊急事態条項がお陰で弱い緊急事態宣言しかできないと問題提起した訳ですけれども、緊急事態条項とは、「戦争・内乱・恐慌・自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立法的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限(国家緊急権)」の根拠となる憲法条項のことです。

これは、諸外国がロックダウンを行う際の法的根拠となっています。

では、なぜ日本国憲法には緊急事態条項がないのか。

これについて、昭和21年7月15日に行われた第90回帝国議会・憲法改正案委員会(第13回)で次のような答弁があります。
○北浦委員 此ノ憲法ニ規定ナイ事項デ将来起リ得ルコトハ、三機関ノ何レカニ依ツテ決定サレルンダ、斯ウ云フ御答弁デアリマスガ是ハ不完全デアリマス、併シ是レ以上ハ議論デアリマスカラ申上ゲマセヌ
 最後ニ現行憲法ノ三十一条デアツタカ、斯ウ云フ規定ガアリマス今後ハ戦争ハアリマセヌガ、戦時又ハ事変ノ際ニハ、臣民ノ権利義務ハ憲法ニ規定ハシテアルケレドモ、一朝事変ノ際ニハ停止スルゾ是ハ行ハナイ、天皇ガ総テ大権ヲ行使サレル、斯ウ云フ趣旨ノ規定ガアツタコトハ、条文ハ探セバ直グ分ルノデアリマスガ、是ハ間違ヒアリマセヌ、ソコデ先程カラ同僚ノ代議士諸君モ盛ンニ心配シテ居ラレマスルヤウニ、戦争ハアリマスマイ、アツテハナラヌ、併シ国内事変ハ、是ハ金森国務相、夢デモ或ハ想像談デモアリマセヌ、将来是ハ心配シテ置カナケレバナリマセヌ、サウ云フ場合ニハココニ草案ニ色々国民ニ対シテ広範囲ノ権利ヲ与ヘテ居リマスガ、停止ノ必要アルノデハナイカ、ヤハリ私ハ第三十一条デスカ、サウ云フ規定ガ必要デハナイカト思フ、ナゼ此ノ憲法ニソレヲ置カナイカ、此ノ点御伺ヒ致シマス

○金森国務大臣 今御示シニナリマシタヤウナ場合ヲ予想スルコトハ可能デアルト思フノデアリマス現行憲法ニ於キマシテモ、非常大権ノ規定ガ存在シテ居ツタコトハ今御示シニナツタ通リデアリマス併シナガラ民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、随テ此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、随テ特殊ノ必要ガ起リマスレバ、臨時議会ヲ召集シテ之ニ応ズル処置ヲスル、又衆議院ガ解散後デアツテ処置ノ出来ナイ時ハ、参議院ノ緊急集会ヲ促シテ暫定ノ処置ヲスル、同時ニ他ノ一面ニ於テ、実際ノ特殊ナ場合ニ応ズル具体的ナ必要ナ規定ハ、平素カラ濫用ノ虞ナキ姿ニ於テ準備スルヤウニ規定ヲ完備シテ置クコトガ適当デアラウト思フ訳デアリマス、現行憲法ニ於キマシテ、二段ニモ三段ニモ斯様ナ非常ナ場合ニ応ズル用意ガアツテ、謂ハバ極メテ用意周到デハアツタノデアリマスガ、実際左様ノ手段ガ明白ニ用ヒラレタ場合ハナカツタヤウニ思ツテ居リマスデアリマスカラ余リニモ苦労シ過ギルヨリモ寧ロ自由保障ノ安全ヲ期シタ訳デアリマス

第90回帝国議会の衆議院における日本国憲法制定時の関係会議録 昭和21年7月15日より抜粋
このように、国民の権利を擁護するためには、政府一存で行う処置は極力防止しなければならず、もし非常大権に相当する規定を残した場合には、どのような精緻な憲法を定めても、非常時を口実にしてここから憲法秩序が破壊される虞がないとは言い切れない為、行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするよう考えたと説明しています。

これについては、2002年5月8日の第154回国会・衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会(第4回)で、当時の津野修・内閣法制局長官は、憲法に国家緊急権が明記されなかった理由として、先に取り上げた昭和21年の金森国務大臣の答弁の一節を引用したうえで、次のように述べています。
いわゆる国家緊急権が設けられなかった理由が答弁として残されているわけでありますが、ただ、日本国憲法のもとにおきましては、例えば、大規模な災害や経済上の混乱などの非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から、合理的な範囲内で国民の権利を制限し、国民に義務を課す法律を制定することは可能であり、これまでにも、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法などの多くの立法がなされているところでございます。
 また、今回のいわゆる武力攻撃事態対処関連三法案につきましては、申すまでもありませんが、日本国憲法の範囲内で立法化をしようとするものでありますから、これまで述べてきました立憲的な憲法秩序を一時停止する性格を有する講学上の国家緊急権の制度を図るといったような法律ではないということでございます。

第154回国会 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会(平成14年5月8日)より抜粋
このように政府は緊急事態条項がなくても非常事態に対応する法律を制定することは出来ると述べていますけれども、あくまでも「日本国憲法の範囲内」という前提があります。

緊急事態条項がなくても非常事態に対応できるといっても、その為の法律を作らなければならないことには変わりません。けれども、野党は、反対だの審議拒否だの、任命責任を問うなど、明らかな有事であるにも関わらず、いつも通りの平時対応しかしていません。

これでは緊急事態に対応する、法制化など望むべくもありません。


3.我々には戦時体制が必要だ


フランスメディア「キャピタル」は、5月24日に行われた世界保健総会の開会式で国連のグテーレス事務総長が「我々には戦時体制が必要だ……我々はウイルスと戦争をしているんだ。戦時体制の論理と緊急性が必要だ」と呼びかけたことを大々的に報道しました。

キャピタル紙は「多くの専門家によると、新型コロナウイルスはアジアで公式発表よりもはるかに多くの命を奪っている。感染拡大の第4波に直面している日本は東京五輪があと2ヶ月足らずで開幕するが、ワクチン接種の遅さが批判を浴びている。2回接種した人がアメリカでは40%、フランスでは15%であるのに対して、日本はわずか2%だ」と強調しています。

まぁ、グテーレス事務総長にいわれなくとも、各国がバカスカとロックダウンをやり、物凄い勢いでワクチン接種を実施しているところを見れば、彼らが今を戦時と考えていることは疑いありません。

一方、日本は戦時体制すら取れない。

高橋氏は平時の時に憲法議論をサボってきたから、ちゃんとして有事対応できなかったと指摘していますけれども、やはり今からでも憲法論議はすべきだと思います。

その意味では、ロックダウンさえできず、"緩い有事"がダラダラと続く今の日本は、そこそこの危機感と疲労感を背景に憲法論議が出来る環境が整いつつある側面があると思いますし、憲法に緊急事態条項を入れて改正することは、次の衆院選の争点に十分になるかと思いますね。



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この記事へのコメント

  • mony

    現状を見るとロックダウン出来たとしてもそれは「補償なきロックダウン」で国民に
    干上がることを強要するだけになると思いますが。コロナ死も経済死も死にはかわりありません。
    ロックダウンさえと簡単に言うべきでは無いと思いますが。
    2021年05月27日 08:23
  • 日比野

    monyさん

    コメントありがとうございます。

    憲法に緊急事態条項がない日本では「他国のような強制力を伴うロックダウンが出来ない」という意味で使ったのですが、確かにロックダウンだろうがそうでなかろうが、自粛という名の行動制限を強いられる側の国民にしてみれば、たまったものではありませんね。

    その辺りの配慮に欠けていたようです。お詫びして該当部分は訂正いたします。
    2021年05月27日 16:15