バイデンの価値観外交は韓国に通用するか

今日はこの話題です。
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1.トム・ラントス人権委員会


4月15日、アメリカ連邦議会下院の「トム・ラントス人権委員会」は「韓国内の市民と政治の権利・朝鮮半島の人権への意味」と題する公聴会を開催しました。

この委員会は、かつてナチス・ドイツのユダヤ人強制収容所に拘束されたハンガリー出身の故トム・ラントス氏がアメリカ連邦議会の下院議員として長年人権問題を熱心に提起したことを記念して、下院外交委員会の一部として創設されたもので、民主党のジョン・マクガバン議員と共和党のクリス・スミス議員の2人が共同で委員長を務めています。

公聴会では、文在寅政権が昨年12月に与党「共に民主党」が野党の反対を無視して単独採決で可決した「対北ビラ禁止法」がやり玉に挙がりました。

それまで、韓国では、北朝鮮から逃れてきた人々や保守派が、内外の情報を伝える目的で、印刷物や電子記憶媒体を風船で北朝鮮に向けて飛ばしていました。

ところが、2020年6月4日、北朝鮮の金与正労働党副部長が敵対的行為を禁止した板門店宣言を盾にこうした対北ビラをやめさせるよう、文在寅政権に要求。直後の6月16日に、開城の南北共同連絡事務所を爆破して怒りをあらわにしました。

これに慌てふためいた文在寅政権は、対北ビラ禁止に動いたのですね。

けれども、こうの法案成立を問題視したアメリカの人権派議員が必ず連邦議会で追及すると宣言し、金日成主席の誕生日で、北朝鮮最高の記念日である4月15日に聴聞会をぶつけたという訳です。


2.対北ビラ禁止法


公聴会では、この「対北ビラ禁止法」を巡って、文在寅政権は官民の参加者から厳しく糾弾されました。

共同議長のクリス・スミス議員は、言論の自由を侵す対北ビラ禁止法は、韓国憲法とICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約=自由権規約)の双方に反している」と発言しました。

またもう一人の共同議長であるジョン・マクガバン議員も「個人的には、議会が法案の修正を決定することを望む。これもまた、民主主義国家の利点だ。やり直しのチャンスは常にある。国際人権法は、安全保障上の理由で表現の自由を制限する際に、何が許容され、何が許容されないかについての指針を示している。もし議会で法律が見直されることになれば、私は立法者たちにその指針を考慮するように勧める……私が非常に憂慮しているのは、韓国政府が、北朝鮮や中国に対する人権への長年のコミットメントを、より良い関係の構築や核不拡散の達成を理由に後退させていることだ」と述べています。

聴聞会では、韓国系アメリカ人の議員2人、北朝鮮人権運動家、朝鮮半島専門家、韓国の元外交官らが、1人の韓国人弁護士を除き、文在寅政権の人権無視政策を一斉に批判したそうです。


3.公聴会を矮小化しようとした韓国政府


韓国政府は、公聴会について、事前にその意味付けを軽くしようと牽制しました。

5月9日、韓国統一部の報道官は定例会見で「今回の聴聞会をきっかけに、"南北経済発展法"の改正内容に関して、生命・安全保護の次元に関連した南北境界線地域の住民たちの声が 均衡に反映されるよう、外交当局と緊密な疎通と協力の努力を続けていく……ラントス人権委員会の聴聞会には議決権限がないなど、韓国内の聴聞会とは性格が異なり、"政策研究の集まり"の性格に近い」と述べました。

そして、「対北ビラ」をテーマとした公聴会が開かれることについてはも「具体的な事項は、外交当局を通じて立場を確認することが適切だ……北朝鮮住民の"知る権利"増進のような様々な人権的価値と、南北境界線地域の住民たちの生命安全保護のような価値が、共に調和を成すことができることが必要だ……そのような次元で"表現の自由"、本質的部分ではない一部の特定な表現の方式だけを最小限制限したものだ」と改めて法改正の主旨を説明しました。

アメリカ議会の公聴会を「政策研究の集まり」と矮小化し、「対北ビラ」は"本質的部分ではない一部の特定な表現の方式"として制限したと「対北ビラ禁止法」の正当性を主張しています。

「対北ビラ」には、朝鮮戦争は北朝鮮の南侵だったことなどの真実や金一家の私生活など北朝鮮体制批判、韓国の発展した状況やいわゆるアラブの春で独裁政権が倒れたことなどを文・絵で暴露するものの他、現金や、韓国ドラマが収録されているUSBメモリやDVDなどやGPS・ラジオ・靴下・手袋・ボールペンといった生活必需品や、アスピリン・バンドエイドなどの医薬品を送ることもあるそうですけれども、これらの何処が"一部の特定な表現の方式"であるのか、さっぱり分かりません。


4.韓国に不快感を示したアメリカ


こうした韓国政府の態度に、アメリカは不快感を示しました。

5月10日、アメリカ連邦政府・下院の関係者はこの韓国統一部の声明に「聴聞会の重要性をおとしめ、これに関係ない理由を提起することによって核心を別の所に向けようとしているように見える……聴聞会をこき下ろそうとする政治的描写だ……下院には常任委員会以外に、中国や人権、欧州安保など特定のテーマを扱う特別委員会がある。トム・ラントス人権委員会のような特別委員会は、上院委員会のように法案を審査・修正はしないが、聴聞会を通じて事案をより深く取り扱っている」とコメントしました。。

そして「特別委員会の活動において、法案議決の権限がないという指摘は、核心から外れている……議会および世論に問題を伝え、議員たちの法案発議の重要性を判断するようにする聴聞会開催の力量は議決権とは関係がない」と指摘し、特別委員会は政策研究の集まりとは違い、議会の公式な設立許可と資金調達(ファンディング)を受けた組織だと反論し、「韓国で出てきている批判は『オレンジを見て、なぜリンゴじゃないのか』と言っているのと同じだ」と厳しく批判しています。

また、ワシントンの外交消息筋は「アメリカが外交の中心に置くと言った人権問題を扱う唯一の超党的組織に対して、韓国政府がこき下ろすような発言をするのは危険だ。トム・ラントス人権委員会が今後、中国の人権問題を扱うようになれば関連の活動に対する関心はさらに大きくなる」と警告しています。

トム・ラントス人権委員会の報告書と聴聞会、人権擁護活動は軽いものではありません。

過去には、2007年6月に下院外交委員会で「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議」が採択され、次いで7月には下院本会議でも採択されました。この当時下院外交委員長だったラントス議員は「日本の歴史否認」を激しく糾弾しました。

韓国はこれを受けて、「日本の慰安婦犯罪」が国際的に認められたとして対日攻勢を強めていきました。韓国自身がこの委員会の影響力を認めていたのですね。

それを今更、政策研究の集まりだの権限がないだのこき下ろしても、却って反発を生むだけです。


5.価値観外交の限界


今回の公聴会について、韓国ウォッチャーの鈴置高史氏は、北朝鮮の独裁体制を揺さぶるために、対北ビラ禁止を撤回させたいと考えるのみならず、韓国人に対し「文在寅政権は見限ったぞ」とのメッセージを送っていると指摘しています。

けれども、この公聴会によって、文在寅政権が対北ビラ禁止を撤回するかどうかについて、鈴置氏は「アメリカにうるさく言われれば、仮に正しい指摘だと思ってもプライドが傷つく韓国人もいる」としてどうなるか分からないと述べています。

鈴置氏によると、韓国人は「アメリカ人ほどに『民主主義』に敏感」ではなく、韓国人が「言論の自由」を唱えるのは、自分の主張を一方的に押し通す権利を要求しているだけで、「他人の言論の自由」を尊重しはしない、と手厳しく批判しました。

鈴置氏は、「言論の自由」については、朝鮮日報が「国民が憤慨し阻止すべきことなのに、こんなことを米国から問題提議されるとは恥ずかしい」と、アメリカ言われて初めて言論の自由の侵害と気づいた韓国人が多い、と告白する記事を掲載したことを指摘しつつも、その議論はアメリカの方が強い間はアメリカ側に居続けよう、との前提でのものであると喝破しています。

鈴置氏は「アメリカは大戦争を戦う時は必ず、価値観を全面に押し出し仲間の結束を図ってきました。でも掲げる価値観として、西洋式の民主主義は万能ではない」と述べていますけれども、実に考えさせる指摘ではないかと思います。

逆にいえば、これがバイデン政権が行う「価値観外交」の限界だともいえ、それに実利もプラスした組み合わせで進めていくのが現実解なのかもしれませんね。


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