バイデンの施政方針演説とハル・ブランズの中国封じ込め

今日はこの話題です。
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1.バイデンの施政方針演説


4月28日、アメリカのバイデン大統領は連邦議会の上下両院合同会議で施政方針演説を行いました。

演説でバイデン氏は武漢ウイルスの感染拡大やそれに伴う経済危機、就任前の1月6日に起きた連邦議会襲撃事件などを挙げて「危機の中にある国を引き継いだ……100日後のいま、アメリカは再び動き出したと報告することができる」と成果を強調しました。

バイデン氏は最優先課題に掲げている武漢ウイルス対策では、就任100日までにワクチン接種が計2.2億回になると成果をアピールし、接種を躊躇う一部の国民に接種を呼びかけました。

そして、「我々は21世紀を勝ち抜くため、中国やその他の国との競争の中にいる……専制主義者の彼らは、民主主義は21世紀において専制主義に対抗できないと考えている」と中国の習近平主席に言及し、中国との競争に勝利するためにも、国内の融和や中間層の復活につながる経済政策が必要だと強調しました。

バイデン氏は同盟国と協力し、国際協調を重視して諸課題に対処する方針も改めて表明し、中国に対して「不公正な貿易慣行には立ち向かう」と述べたほか人権問題を引き続き提起する考えを示しました。

バイデン氏は、4月29日に就任100日目を迎えたのですけれども、100日も経って施政方針演説で、その中身は過去の成果です。まぁ、100日もあるから、少しくらいは何か成果を出せるかもしれないという見方もあるかもしれませんけれども、いの一番に成果を誇ったワクチンなんて、トランプ前政権のものです。

給付金も前政権から進めてきたものですし、130万人以上の新規雇用なんてバイデン政権のわずか100日で出来る筈がありません。トランプ前政権の成果にフリーライドして自分のものだと誇っても、なんだかな、という印象は拭えません。




2.バイデンはトランプの中国政策を延長している


まぁ、それでもバイデン氏が民主主義を引き合いに出して、アメリカの敵である専制主義者達が、我々を引き離している嘘、怒り、憎しみ、恐怖を民主主義は克服できない方にベット(賭けて)している(Can our democracy overcome the lies, anger, hate and fears that have pulled us apart? America’s adversaries – the autocrats of the world – are betting it can’t. )と述べたのは、アメリカのせめてもの矜持だったのかもしれません。

この中国との競争に打ち勝つ決意を示したバイデン氏の施政方針演説に、中国は素早く反応しました。

4月29日、中国外務省の汪文斌副報道局長は記者会見で、「中米間に競争があるのは正常だが、追いつ追われつの陸上競技であるべきで、生きるか死ぬかの決闘であってはならない……相手に足払いをかけたり、罠にかけたり、たちが悪い競争を行ったりすべきではない……アメリカは中国に対して負け惜しみの気持ちを持たず、穏やかで理性的な心で中国の発展に対応し、大国らしく振る舞うよう望む」と述べました。

相手に足払いをかけたり、罠にかけたりなんてのは、中国の得意技であり、サイレントインベージョンという形で、現にオーストラリアやアメリカに掛けているものです。自己紹介しかなっていません。

バイデン氏に「専制主義者」といわれたのが、気に入らなかったのか、在日中国大使館はアメリカを死神に擬えた画像を「米国が『民主』を持ってきたら、こうなります」との文章とともにツイートして炎上し、慌てて引っ込めたことがありましたけれども、中国は世界に自分の本性を「自己紹介」し続けているようにしか見えません。

4月28日、環球時報は「バイデンはトランプの中国政策を延長し、より予測可能でありながら、より冷静に(Biden extends Trump's China policy, more predictable yet more chill)という社説を掲載し、「バイデン政権は対中政治戦争を新たな高みに引き上げた。同盟国を動員して共同で中国に圧力をかけ、一定の成果を上げている。ワシントンは、中国北西部の新疆ウイグル自治区の統治を"ジェノサイド"だと悪口を言って欧米に悪例を示した。現在、中国を封じ込めるための戦略的な姿勢を作っているが、それは前政権の時よりも軽いものではない」と警戒する一方で、「完全な中国戦略が形成されていないにもかかわらず、アメリカは自国の力を強化することで、中国に対する戦略的レバレッジを高めたいと考えていることが明らかになっている」と述べ、「バイデン政権は、トランプ政権よりも明らかに慎重である」と分析しています。

そして、バイデン氏の対中政策について、予測可能性は高まったが、米中間の科学技術分野のデカップリングは進むと予想し、「我々4は中米の極めて非友好的な雰囲気の常態化に順応せねばならない……中国とアメリカが政治的に"相互に尊重しあう"ことを期待することはできない」と述べ、対立を辞さない姿勢を見せています。


3.ハル・ブランズの中国封じ込め


4月23日、デューク大学のハル・ブランズ助教授はナショナルインタレスト紙に「なぜ『封じ込め』が『中国の脅威』を阻止できるのか(Why Containment Can Stop the China Threat)」という記事を寄稿しました。

ハル・ブランズ助教授はかつての米ソ冷戦において、「対ソ連封じ込め政策」をめぐるアメリカ国務省の政策企画本部長ジョージ・F・ケナンと政治評論家のウォルター・リップマンの論争を引き合いに、封じ込めが完全に成功する瞬間までは、失敗しているように見えることが多いと述べています。
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ハル・ブランズ助教授は米ソ冷戦でアメリカが最終的に勝利した理由として次の5つを挙げています。
A)アメリカのシステムが恒常的に低レベルの無秩序状態にあり、それが長期的な国際競争力を損なう可能性を含む反面、アメリカ経済のダイナミズムとアメリカ民主主義の正当性は、地政学的な消耗戦に適している。ソ連の成長モデルの脆弱性、党員が口にする空虚なスローガンに国民が幻滅していること、悪質で硬直した政治の中で政治的・知的な再生が困難であることなどは、一時的には隠すことができるかもしれない欠陥である

B)民主政治と自由市場経済を組み合わせたアメリカは、抑圧的なソ連のシステムでは決して実現できないほどの富と革新性を生み出した。長期にわたるライバル関係において不可欠な、選挙や政権交代といった戦略的な軌道修正のためのメカニズムが、アメリカには組み込まれていた。民主主義は、時として戦術的には不利であっても、長期的には有利であった。

C)封じ込めとは、固定された政策の集合体ではなく、方向性を示しつつ、柔軟性と戦略的選択を可能にする基本概念であった。アメリカの指導者たちは、ソ連の影響力を封じ込めるための手段や政策の正確な組み合わせを、資源の投入や削減、米国の義務の拡大や縮小、自由世界の防衛における核兵器の役割の調整など、周期的に変えていった。そして最終的に軍拡競争を新しいハイテク分野に誘導して、モスクワがワシントンとの競争に永遠に耐えられないことを示す戦略に移行した。この性質のおかげで、封じ込めは存続し、勝利を収めることができた。

D)アメリカの最良の戦略はイデオロギーと現実の政治を組み合わせたものであった。アメリカの価値観や自由な生活様式を守ることが強調されていなければ、アメリカの政策は国民の持続的な支持を得られなかったであろうが、アメリカの利益が必要な場合には、共産主義の悪魔と現実的な取引をすることを妨げなかった。イデオロギーは、冷戦時代の国家運営にとって有用な指針であるが、決して窮屈なものではなかった。

E)ソ連の指導者たちは、何十年もの間、社会主義が資本主義を駆逐する運命にあると本気で考えていた。アメリカが守り育ててきた自由な世界がソ連を置き去りにし始め、1980年代にアメリカがモスクワへの圧力を劇的に高めて初めて、クレムリンの新世代の指導者たちは、冷戦から抜け出す唯一の方法はアメリカの条件で冷戦を緩和することだと悟った。この和解は、長い競争の期間の前ではなく、後に行われたのだ。
ハル・ブランズ助教授は、今日の米中関係と冷戦時代との間には、数え切れないほどの違いがあるが、今こそケナン-リップマン論争とその後の封じ込めの軌跡が参考になるとし、民主的な政治、自由市場経済、騒々しい政策論争など、アメリカの弱点と思われていたものが、実は最大の強みであると述べています。

そして、民主主義の価値がもたらすイデオロギー的、地政学的なメリットを活用する一方で、便宜上必要な譲歩も行った結果、アメリカは危険なライバルとの長期にわたる競争でしばしば躓いたが、崩壊しなかったことから、不完全な民主主義は、しばしば権威主義的に見える敵を凌駕すると主張しています。

これらの指摘を筆者なりに解釈すると、民主主義という多くの民衆の中から為政者を選んで政策を実行するやり方は、独裁者や専制主義者といった、一人または少数の頭で考えて行う政策を、長期的には上回るのだ、ということなのではないかと思います。




4.中国の体制を支えているのは経済繁栄だけ


4月28日、環球時報は25日に清華大学と中国網(China.org.cn)が主催した「中国の国民の若返りと共産党」シンクタンクフォーラムでの
議論の要約記事「中国は内部開発で新世界秩序を形成している」という社説を掲載しました。

そこでは、「冷戦の間、多くの人々に自由民主主義が世界秩序であると信じさせたが、中国が独自の発展で世界を変えているので、そのような秩序は変化している」として次の3つの理由を挙げています。
・中国はグローバル化のずっと前から東アジアの秩序の構築者だった
・中国統一は世界秩序に影響を与えることができる。
・繁栄することで、中国は世界の舞台の中心に立つことができた。
記事では、なんとなくもっともらしい言い分を並べていますけれども、一言でいえば、「中国はかつて大国だった。一時期抑圧されていたが、再び大国になったのだ」と言っているだけにしか筆者には聞こえません。

そこには「大国」の定義も「繁栄した理由」もありません。

周辺国を脅し、威圧していうことを聞かせ、ウイグル人をジェノサイドするのが大国なのか。他国から知的財産や人材を盗んだ結果、繁栄したとしても、それは、繁栄といえるのか。

まぁ、無神論の国である以上当然なのかもしれませんけれども、正直、そんな"大国"などに精神的な高みは感じません。

記事は、中国の人々に対し、アメリカの言動など気にする必要はない。歴史上のほとんどの大国は、内部の混乱で崩壊した。中国はビジネスを上手くやりさえすれば、外的要因が中国に影響を与えることはない、と呼びかけて終わっています。

まるですぐにでも、アメリカが内部混乱で崩壊するかのような言い草ですけれども、中国はビジネスを上手くやっていれば問題ないという結論は、裏を返せば、ビジネスがうまくいかなければ自分が滅ぶということです。

これは、要するに、今の中国の体制を支えているのは「経済繁栄」だけだということを示しています。

ということは、アメリカが中国と"競争"し、米中冷戦に勝利するためには、中国の経済繁栄をストップさせるようにあの手この手で"封じ込め"をすればよいことになります。

果たして、アメリカと同盟国そして西側諸国が、たとえ"低レベルの無秩序状態"であっても民主主義を奉じ、それを持って中国を封じ込めることになるのか。大きな時代の繰り返しが近づいているのかもしれませんね。



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posted by 日比野寿舟 at 08:20Comment(0)

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