米韓2プラス2で行われた誓約

今日はこの話題です。
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1.米韓2プラス2


3月18日、韓国ソウルで米韓外務・国防担当閣僚協議(2プラス2)が開かれました。

内容については既にマスコミ各社が報じていますけれども、協議後に発表された共同声明についてのマスコミの報道を2、3拾ってみると次の通りです。
時事:採択された共同声明によると、両政府は北朝鮮の核・弾道ミサイルが「同盟の優先的な関心事だ」と強調し、非核化の実現に向け緊密に協力していく立場を再確認した。また日米韓協力の重要性も確認し、地域の平和や安全保障のために日本を含む3国が相互互恵的で未来志向的な協力を継続することで一致した。

朝日:共同声明は、米韓同盟の重要性を再確認し、「自由で開かれたインド太平洋地域」の平和のために米韓が協力していくことを確認。中国を念頭に「法に基づく国際秩序を毀損し、不安定にする行為に反対する」との文言は入ったが、直接的な批判は見送られた。中国への強い懸念を前面に打ち出した日米の共同声明とは対照的な形になった。

日経:米韓両政府は18日、ソウルで外務・国防担当閣僚協議(2プラス2)を開き、北朝鮮の核・ミサイル問題に対応する日米韓の3カ国協力が重要だと確認する共同声明を発表した。北東アジアの安定を保つため、在韓米軍の必要な戦力を維持する方針も明記した。共同声明は「北朝鮮の核・弾道ミサイル問題が米韓同盟の優先的な関心事だ」とうたい、合同軍事演習を通じて脅威に対抗する方針を盛り込んだ。

産経:共同声明では、北朝鮮を含む国際社会が国連安全保障理事会決議を完全に履行することが重要だと確認。……日本を加えた3カ国の協力に関しては「域内の平和、安全保障、繁栄を促進するため相互互恵的で未来志向的な協力を続けていく」ことで合意……インド太平洋地域の平和や安全保障のための協力を継続することでも一致。中国の名指しは避けつつも、域内の安全保障環境に脅威が増しつつあるとし「国際秩序を損ない不安定にする全ての行為に反対する」とした。
共同声明は一つしかない筈なのですけれども、各社の報道内容は微妙に異なっています。これは各社の着目するポイントがそれぞれ異なっており、各社毎に注目した部分をピックアップして報じているからだと思われます。


2.約束と確認


マスコミ各社がそれぞれポイントだと思った部分を報じるのは、各社の編集方針に拠るところですから、それは勝手なのですけれども、それらポイントがあまりにバラバラだと、一体何が重要なのか分からなくなってしまいます。

では、共同声明において何が重要な部分であると見分けることが出来るのか。その鍵は共同声明自身の中にあります。

今回も米韓外務・国防担当閣僚協議(2プラス2)について、アメリカ韓国双方が共同声明を公表していますけれども、当然ながらどちらも同じ文章です。

マスコミの記事では、「何々を確認した」とか、「何々を約束した」という具合に書かれていますけれども、原文を見ると、「確認した」は"affirmed"、または「再確認した」の"reaffirmed"が使われています。

また「約束した」は"commited"を使っているようです。

これらをキーワードに、共同声明文書から約束した項目と確認した項目を拾うと次の通りでした。
約束:commited
・双方は、同盟の抑止態勢を強化することを約束
・秘書と大臣の両方は、韓国の米軍が朝鮮半島と地域の平和と安定を維持する上で重要な役割を果たし続けていることを指摘し、私たちの共通を満たすために必要な軍の姿勢と能力を確保し続けることを約束
・彼らは、米国の進行中の北朝鮮の政策レビューに関する高レベルの協議を維持することを約束

affirmed:確認
・双方は、複数年にわたる新たな特別措置協定の基本合意が、韓米同盟への共通のコミットメントの象徴であり、在韓米軍の安定した駐留を支え、我々の複合防衛態勢を強化するものであることを確認した。
・双方は、北朝鮮を含む国際社会が関連する国連安全保障理事会決議を完全に履行することの重要性を確認した。
・両大臣は、韓米日三国間協力の重要性を確認

reaffirmed:再確認
・閣僚と秘書は、70年前に戦場で血を流した韓国と米国の同盟が、朝鮮半島とインド太平洋地域の平和、安全、繁栄の要として機能していることを再確認
・双方は、韓国と米国の相互防衛条約に基づき、韓国の防衛と韓国と米国の複合防衛態勢の強化に対する相互のコミットメントを再確認
・米国政府関係者は、米国の防衛政策を再確認
・大臣・長官は、北朝鮮の核・弾道ミサイル問題が同盟の優先課題であることを強調し、これらの問題に取り組み、解決するための共通のコミットメントを再確認。
約束を再確認するという項目はさておき、確認と約束では、より履行責任を負っているのは「約束」の方であることは疑いないところでしょう。確認および再確認した項目が7つに対して約束したのは3つしかありません。

共同声明で約束した3項目を見ると、駐韓米軍の能力維持と対北朝鮮政策の協議維持が並んでいます。一言でいえば、韓国の安全保障に関する項目について約束したように見えます。


3.pledged


では、日米間の三ヶ国関係についてはどういう扱いになっているかというと、マスコミ各社は「日米韓の3ヶ国協力が重要だと確認した」とか「3ヶ国が相互互恵的で未来志向的な協力を継続することで一致した」と報じています。

これだけだとともすれば「確認しただけ」という具合に"社交辞令"的な扱いのように見えてしまうかもしれません。

けれども、共同声明の原文にはもっと"重い言葉"が使われています。"pledged"です。

pledgeは直訳すると「誓約する」という意味で、「約束する」よりも強い意味を持っています。英英辞書では"formal a serious promise or agreement, especially one made publicly or officially(特に公に、あるいは公式になされた重大な約束や合意を意味する)"と説明されています。

このpledgeは、聖書においては名詞として使われ、通例では、ある行為を保証するために差し出すcollateral(担保)のことを指したそうですから、単なる約束より固い"確約する"くらいの意味合いが含まれていると感じます。つまり破ったら賠償しなければならないというニュアンスですね。

上述の日米間の三ヶ国関係について述べた箇所は、共同声明の原文では次のようになっています。

The Ministers and Secretaries affirmed the importance of ROK-U.S.-Japan trilateral cooperation and pledged to continue promoting mutually-beneficial, forward looking cooperation to promote peace, security, and prosperity in the region.
確かに「日米韓の3ヶ国協力が重要だと確認した」には"affirmed(確認した)"が使われていますけれども、「3ヶ国が相互互恵的で未来志向的な協力を継続することで一致した」には"pledged(誓約した)"が使われています。

したがって、共同声明の原文から"pledged"を強調して訳すと次の文章になると思われます。

両大臣は、韓米日三国間協力の重要性を確認し、地域の平和、安全、繁栄を促進するために、互恵的で前向きな協力を引き続き推進していくことを確約した」

マスコミはこの部分の前半を切り出したり、後半だけ切り抜いて報じている訳ですけれども、特に後半については「合意した
とか「一致した」といった言葉を使っていて、原文の"pledged(誓約した)"とはニュアンスが違って聞こえます。


4.戦時作戦統制権返還をバーターにした日米韓3ヶ国協力


声明文で、この"pledged(誓約した)"は他にもう一ヶ所使われています。次の文面です。

The Ministers and Secretaries noted that since both sides decided to pursue the transition of wartime Operational Control (OPCON) in 2006, the ROK and the United States have achieved great progress through their combined efforts and reiterated their firm commitment to wartime OPCON transition consistent with the Conditions-Based OPCON Transition Plan (COT-P). Building on this progress, the leaders pledged to continue efforts toward the transition.
大臣、秘書官は、2006年に韓米両国が戦時作戦統制(OPCON)の移管を決定して以来、韓米両国が力を合わせて大きな進展を達成したことに言及し、戦時作戦統制(OPCON)の移管計画(COT-P)の進展に基づいて、戦時作戦統制(OPCON)の移管の確固たるコミットメントを改めて表明した。 両首脳は、移行に向けた努力を継続することを確約した。
こちらはかねてから文在寅政権がアメリカに求めていた戦時作戦統制権の返還の話です。

共同声明を見る限り、今回の米韓2+2で、"pledged"が使われたのは「日米韓の3ヶ国協力」と「戦時作戦統制権返還努力の継続」の2つだけです。

「戦時作戦統制権返還」が韓国側の要求、「日米韓の3ヶ国協力」がアメリカ側の要求だとみると、韓国はいわば「戦時作戦統制権返還」をバーターにして「日米韓の3ヶ国協力」を飲んだということになります。

実際、韓国の徐旭(ソ・ウク)国防部長官は米韓2+2の後に行った聯合ニュースTVとのインタビューに「国防部は韓米日の安全保障協力が韓日の懸案とは別に、強化されるべきだという一貫した立場を堅持してきた……各軍レベルの交流や多国間合同訓練への参加など、韓日、韓米日の安保協力を持続的に強化していく」と述べました。

これは、韓国が日米韓の3ヶ国協力をアメリカに確約(=pledged)させられたことを示す証左ではないかと思います。と同時にそう発言することで、アメリカに対して「誓約は守るから、そちらも戦時作戦統制権返還に向けた誓約を守れよ」というメッセージを送ったことにもなります。


5.vowed


今回の米韓2+2の声明文で"pledged(誓約した)"並みに強い言葉が使われている箇所がもう一つあります。それは"vowed(誓った)"です。

声明文では次の下りがそれです。
They vowed to further promote mutually-reinforcing and future-oriented cooperation across a wide range of areas encompassing a robust trade relationship, cooperation on combatting the climate crisis, and coordination on pandemic relief and post-COVID-19 economic recovery.
この"vow"も元々は神との約束を意味し、「結婚の誓い」が、"marriage vows"、"wedding vows"と言われるように「ある行為、行動に自分の全てを捧げることを誓う」というニュアンスがあります。

そのニュアンスを生かして訳すと次のようになるかもしれません。
彼らは、貿易、健康、不拡散、核エネルギー、COVID-19、気候危機、宇宙、サイバーセキュリティとの闘いを含む幅広い分野にわたる協力を深めることに全身全霊を傾ける。
このvowedも合わせると、米韓2+2で、韓国がアメリカと"確約"レベルで約束したのは、「日米韓の3ヶ国協力」と「戦時作戦統制権返還努力の継続」、そして「幅広い分野にわたる協力」の3つではないかと思います。


6.日米韓の安全保障協力は日韓の懸案とは別にできない


韓国がアメリカに「日米韓の3ヶ国協力」を確約させられ、韓国国防部が韓日、韓米日の安保協力を持続的に強化すると発言したことを考えると、韓国は早晩、中断している日本との軍事交流の再開を日本政府に依頼してくると思われます。

となると、日本との軍事交流が中断した原因である、韓国軍艦の空自機への火器管制レーダー照射問題や、韓国への海自艦入港拒否の問題を解決しなければなりません。

いくら韓国の徐旭国防部長官が、韓米日の安全保障協力は韓日の懸案とは別に強化されるべきだといったところで、両国の軍事協力の中にその懸案があるのですから、「別に」することなどできません。

当然それは、先日の日米2+2で日本からアメリカ側に釘を刺しているものと思いますけれども、まずはそれらの問題にしっかりとカタを付けない限り協力などできないと日本は韓国にはっきりと突きつけなければならないと思います。

もし、近いうちに、火器管制レーダー照射問題や、韓国への海自艦入港拒否問題などに進展があるかどうか、注目すべきポイントではないかと思いますね。


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