イージス・アショアは使い物にならなかったのか

今日はこの話題です。
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1.私はやりたくありません


6月25日、自民党の国防部会と安全保障調査会の合同会議に出席した河野防衛相は、会議の冒頭、前日に開かれた国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合で協議した内容を説明し、「山口県、秋田県へのイージスアショアの配備を撤回する決定に至った……こうした事態に至ったことを深くおわび申し上げる」と陳謝しました。

関係者によると、4大臣会合では、配備計画の代替案として「他の候補地への配備」「イージス艦の増艦」「他の手段による防護」の3点が主に議論されたそうですけれども、「他の候補地への配備」については、他の候補地を選定するのは困難との見通しが報告され、「他の手段による防護」については、アメリカのミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」の配備も念頭に議論されたようです。

今回の計画停止については、河野防衛相が「候補地だった両県の知事に、もし事前に漏れたら、今後一切、防衛省・自衛隊への協力は得られない」と考え、事務方に「迷惑をかけた地元に伝えるまでは一切、口外するな」と厳命していたため、殆ど外部に漏れることはありませんでした。

計画停止の表明直前に山口・秋田の両県の知事に河野防衛相自身が電話で説明をしたのですけれども、それ以外に計画停止の表明を事前に説明したのは、安倍総理と菅官房長官の2人だけだったそうです。


2.投資に見合わない


候補地だった山口県は、迎撃ミサイルを発射した際に切り離す「ブースター」の落下について、懸念を示していました。

「ブースター」とは、「イージス・アショア」で運用される迎撃ミサイル「SM3ブロックⅡA」を、発射直後、垂直に推進させる部品のことで、最初に切り離される1段目は、長さ約170cm、直径約53cm。重さは200kg強。

これを、安全に落下させるために、防衛省は落下位置を予め算出し、その算出した落下位置にブースターを落とせるよう、燃焼ガスを噴出するノズルの向きを、ソフトウエア上で変更して、ミサイルの飛翔経路をコントロールするとしていました。

当初、防衛省は当初、ソフトウェアの改修で対応する考えだったのですけれども、2月からの日米協議でミサイルそのものの改修も必要となり、其の為に約2000億円のコストと12年という年月が必要になることが判明しました。

6月3日に最終報告を受けた河野防衛相は、翌4日に安倍総理に直訴。「総理、申し訳ありません。この改修は10年、2000億円の投資に見合いません。プロセスを止めざるを得ません」と伝え、12日に再び、安倍総理と会談した河野防衛相は、配備計画は中止せざるを得ない考えを伝え、了解を得た上で、15日に計画停止を表明したという経緯のようです。

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3.設計思想に無い機能


イージス・アショアについて、イージス艦の運用に携わり、実際に迎撃実験に携わった海上自衛隊の元幹部は「迎撃ミサイルは、敵のミサイルにぶつけるのが目的で、『より遠く、より早く、より正確に』が肝要だ。北朝鮮からミサイルが発射された場合、日本に到達するまでおよそ8分で、時間が勝負だ。早く撃てば反撃は、第2撃が可能だが、ブースターの落下を計算して発射すれば、時間にロスが出る……ミサイルのブースターやロケットモーターは、バンドのようなもので締めてつないであり、火薬を爆発させて外すだけ。落下をコントロールする発想は設計上、全くないし、ミサイルを発射するような状況では、弾道ミサイルに命中させることが第一だ」と指摘しています。

それはそうでしょう。元々、頭上の弾道ミサイルを迎撃するために開発されたミサイルなのですから、足元のことなど眼中にないのも仕方ありません。

政府は、ブースターを演習場内に落下させるためのシミュレーションを何度も行ったそうですけれども、100%演習場内に落下させるために、1段目のブースターを小型化し、早く落下させる案も検討されましたけれども、1段目を小型化すると、2段目を大型化しなければならなくなることや、ミサイルの直径を拡大しないといけなくなることが判明。

更には、改修はミサイルだけでなく、発射装置まで必要になる可能性も出てきました。

結局、安全に落下させる為には、事実上、新しいミサイルと作るのと同じとなってしまうという結論に至ったようです。

要するに切り離したブースターをコントロールすると最初の設計思想に入れて置かなければどうしようもないということです。


4.イージス・アショアのレーダーに火器管制能力は無い


けれども、仮にブースターの落下地点など問題にならない"理想的な"候補地が見つかったとしても、イージス・アショアが本当にミサイルを迎撃してくれるのかについては議論の余地があります。

というのも、昨年3月にイージス・アショアの迎撃機能に疑義を呈する報告書が、防衛省官僚によって作成されていたことが明らかになったからです。

これは、昨年3月下旬に、防衛官僚が渡米し、ロッキード・マーチン社を視察した際のA4判2枚の報告書で、そこには「LRDR自体には射撃管制能力は無い」と記されていたのですね。

LRDR(Long Range. Discrimination Radar)は、アメリカの本土防衛用弾道ミサイル防衛システムの次期警戒管制レーダーなのですけれども、防衛省は、イージス・アショアに採用される予定だったロッキード社製のレーダー「LMSSR」もこのLRDRと同じ技術を用いるとしています。

海上自衛隊の元海将で、弾道ミサイル防衛にも深く関わってきた伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授は、「射撃管制能力というのは迎撃ミサイルを目標に誘導する能力です。イージス・システムにおけるレーダーには、飛んでくる弾道ミサイルを探知、追跡し、迎撃ミサイルをそこへ誘導して、目標へ衝突させる能力が必要です。通常の軍艦では、レーダーはあくまでも"目"であり、目標へ自らの武器を誘導する"神経"となる射撃管制システムは別にありますが、最新のイージス・システムではそれが一体化しています。例えば、米海軍のイージス艦が搭載予定の米レイセオン社のSPY―6はもちろん射撃管制能力を備えたレーダーです。にわかには信じがたいのですが、もしロッキード社のSSRに本当に射撃管制能力がないのであれば、イージス・システムとして機能させるためには、追加で"神経"となる別システムを組み合わせる必要が生じ、さらにコストがかかる」と指摘しています。

これが本当だったとしたら、防衛省はミサイルを迎撃できないシステムを導入しようとしていたことになります。


5.イージス・アショアに関する再質問主意書


イージス・アショアに射撃管制能力がないということについて政府に質問した議員がいます。自民党の長島昭久衆院議員です。

長島議員は昨年5月23日に「イージス・アショアに関する再質問主意書」を提出しているのですけれども、その中でLRDRに射撃管制能力がないことについて質問しているのですね。該当部分を次に引用します。
【前略】
二 性能について

【中略】

(4) 「長距離識別レーダー」たるLRDRには射撃管制機能がないとされる一方で、迎撃ミサイルであるSM3等の運用を前提としたSPY6にはその機能があると聞く。射撃管制機能がないとすれば、LRDRは射撃管制に必要な情報を、どのようにして迎撃ミサイルに伝達すると考えればよいのか。また、LRDRと「同様の技術を用いて」いるとされるLMSSRは、どのようにして、射撃管制に必要な情報を、SM3等のミサイルに伝達すると考えればよいのか。

【後略】
この質問主意書は昨年5月23日付ですから、件の防衛省の報告書が出た2ヶ月程後です。防衛副大臣経験もある長島議員ですから、恐らく、件の報告書も入手して読んだ上での質問であると思われます。

この質問に対する政府答弁は次のとおり。
二の(3)及び(4)について
 LMSSRは、我が国の弾道ミサイル防衛のために必要な性能や機能を有するものであると認識しているが、お尋ねの「目標を識別する解像度」及び「射撃管制機能」も含め、その性能や機能の詳細については、本件イージス・システムの具体的な対処能力を明らかにするおそれがあることから、お答えを差し控えたい。
 なお、LRDRについては、米国の装備品であり、その性能や機能について政府としてお答えする立場にない。
具体的な回答はしていませんけれども、「LMSSRは我が国の弾道ミサイル防衛のために必要な性能や機能を有する」と明言しています。

けれども、射撃管制機能がないレーダーを使って弾道ミサイル防衛が出来るとはちょっと思えません。

結果的に政府は、イージス・アショアを事実上断念した訳ですけれども、もし、イージス・アショアに変わるミサイル防衛システムを構築した場合、そこにLMSSRを使うのか使わないのか。そうしたことも注目すべき点かもしれませんね。


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