新型コロナウイルスとリバースジェネティクス

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1.再現されたスペイン風邪

2005年10月、アメリカ陸軍病理学研究所(AFIP)のジェフリー・タウベンバーガー博士の研究チームは1918年に5000万人もの死者を出した「スペイン風邪」のウイルスを新たに作り直すことに成功したと発表しました。

これは2005年当時、東南アジアで猛威を振るった、高病原性鳥インフルエンザが世界的な伝染病に発展することを危惧し、その予防策を開発するうえで役立つからだと考えたからでした。

タウベンバーガー博士の研究チームは、1918年にスペイン風邪で死亡し、アラスカの永久凍土に埋葬されていた女性から取り出したゲノム情報を解析。解析された情報をマウント・サイナイ医科大学の研究者たちに提供し、この研究者たちがリバース・ジェネティクスという技法を用いて、微小遺伝物質(プラスミド)を作成、それを更にアトランタにあるアメリカ疾病管理センター(CDC)に送り、ヒトの腎細胞に注入・作成しました。

アメリカ疾病管理センター(CDC)で、ウイルスを作成したテレンス・タンピー博士によると、「腎細胞内にプラスミドを注入すると、ウイルスは自然に生まれる……作成にはわずか2日しかかからない」のだそうです。CDCは、この感染性ウイルスの粒子がそれぞれ約1000万個入った瓶をおよそ10本作成したとしています。

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2.リバースジェネティクス

スペイン風邪ウイルスを再現する決め手となった、リバースジェネティクスは、1999年に東京大学医科学研究所の河岡義裕教授が開発した方法です。

リバースジェネティクスでは、ターゲットとしたウイルスの8つの遺伝子を発現する8本のプラスミド、4つのウイルスタンパク質を発現する4本のプラスミドを細胞に導入することで、感染性を有するウイルスを産生することができるというものです。

リバースジェネティクスの肝は微小遺伝物質(プラスミド)の意図的利用にあります。

プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって子細胞へ引き継がれるDNA分子の総称です。

プラスミド(plasmid)は、一般的に環状の2本鎖構造をとり、制限酵素の遺伝子や抗生物質を破壊する酵素の遺伝子を運びます。染色体のDNAからは独立して複製を行うのですけれども、通常の生命活動に必要な遺伝子はもっていません。

けれども、高温、乾燥、高塩分など細菌が特殊な環境に置かれた場合や病原性を発揮する場合などに、プラスミドの遺伝子が独自に働くとされています。プラスミドには薬剤耐性や酵素などの様々な遺伝子があるのですけれども、作用が確認されているものは少なく、大半のプラスミドがどのような働きをしているのかはわかっていません。

例えば、インフルエンザなどのウイルスが体内に侵入した時、ヒトの免疫機構がウイルスを外敵だと認識して排除を始めます。その時、ウイルスを敵だと認識するための印は抗原と呼ばれます。

インフルエンザウイルスの場合、主要抗原はウイルス表面にあるとげ状の「ヘマグルチオン(HA)」と呼ばれるタンパク質です。

インフルエンザはこの「ヘマグルチオン(HA)」が少しずつ変異することによりヒトからヒトへと感染していくのですけれども、パンデミックを起こすウイルスは、それまでヒトに流行していないHAを持っているためとされています。

これまで、インフルエンザワクチンは受精卵でウイルスを増殖させて製造していました。その理由はウイルスの増殖性が高いからなのですけれども、受精卵で増殖させると、ウイルスのヘマグルチオン(HA)は高確率で変異してしまい、狙ったワクチンを必ずしも作れないという課題がありました。

そこで、変異しにくい環境ということで、培養細胞でウイルスを増殖させてワクチンを製造する方法が実用化されたのですけれども、培養細胞ではウイルスの増殖性が悪く、十分な量のワクチンを作るのが難しいという欠点がありました。

ところが、リバースジェネティクス技術が開発されたことで、培養細胞でも沢山ウイルスを増殖させることができ、また、理論的にはどのような型のウイルスでも作成することができることからウイルス遺伝子の改変に利用されている技術です。

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3.四ヶ所が変異するだけ

この画期的なリバースジェネティクスですけれども、その使い方で毒にも薬にもなります。なぜなら、好きなウイルスを作れるということは、そのまま細菌兵器も作れることになるからです。

河岡教授が1999年にリバースジェネティクスを開発した時、アメリカ中央情報局(CIA)が、教授らがテロ国家とコンタクトはないか、特定の国のラボに技術を提供していないか、調べに来たそうです。

また、2011年に河岡教授の研究チームが「ネイチャー」に「鳥インフルエンザウイルスH5N1」に関する論文を投稿した時には、アメリカのバイオセキュリティーに関する国家科学諮問委員会(NSABB)から一部掲載を見合わせるよう勧告を受けたこともあります。

鳥インフルエンザウイルスが流行した当時、鳥インフルエンザウイルスが猛威をふるい、アジア・アフリカを中心に人間にも感染していて、高い致死率から鳥からヒトへの感染だけでなく、ヒトからヒトへ感染が広がる新型インフルエンザに至るのではないかと騒がれていました。

そこで河岡教授らは、鳥インフルエンザウイルスがどう変異すればヒトからヒトへ空気感染するのか調べたところ、なんと、鳥インフルエンザウイルスH5N1の遺伝子13500か所のうちわずか4ヶ所が変異するだけで、哺乳動物のフェレットで空気感染することがわかったそうです。

先日、インドのインド工科大学の研究者らが新型コロナウイルスから、自然界には通常存在し得ない「不自然な組成」を発見したとの論文予稿を発表し、直ぐに取り下げていますけれども、そこでも不自然な配列は4ヶ所と報告されていたことや、新型コロナウイルスが桁外れの感染力を持っていることとも、何処か妙な符合を感じないでもありません。

河岡教授の論文掲載見送りを勧告した国家科学諮問委員会(NSABB)は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)に「生物テロに悪用される可能性ある」と答申。それを受けてアメリカ国立衛生研究所(NIH)は、件の論文の伝播力を高めるウイルスの作製法とアミノ酸変位の記述部分について「ネイチャー」や「サイエンス」への掲載を見合わせるよう求めたのですね。

これに対し、日米欧の科学者39人が1年間、ウイルスの研究を停止するとの声明を出しています。

その後、2012年2月、世界保健機関(WHO)が専門家会議を開き、論文の発表は将来的に公衆衛生に資するということで、全文公開を勧告。翌月の3月30日には国家科学諮問委員会(NSABB)も論文の全面公開を勧告し、結局論文は、「ネイチャー」の6月21日号に記載されました。

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4.科学者が信頼される意味

アメリカ中央情報局(CIA)やアメリカ国家科学諮問委員会(NSABB)が危惧したように、リバースジェネティクス技術は、「軍事用・民生用双方にも用いることの出来る技術(デュアルユース)」でもあるのですけれども、これについて河岡教授は次のように述べています。

科学技術の成果は、このインフルエンザウイルス研究に限らず、公共の福祉にプラスになるものと、テロや軍事への悪用・応用というマイナスの側面を持っています。

例えばナイフやダイナマイトは有用ですが、一方で使われ方によって多く犠牲者が出るという悲劇も生み出しています。要は科学研究の成果は、それをどう使うかという問題になります。
科学者、研究者は常にポジティブな面とリスクがある面を自覚し、どうしたらそのリスクを最小限に抑えてベネフィットにつなげられるか考えなくてはいけない。

このウイルス問題でいえば、研究によるリスクはゼロではないが、何もせず同じようなウイルスが自然界で拡大してしまうのを待つのか、安全な環境でウイルスを作製し治療法につなげるのか、一般の人がどう思うかということにあります。そのためには安全な施設で研究しているといった情報を公開するなど、科学者が信頼されること、そのために努力することも大事なわけです。

河岡教授の研究は、ウイルスの変異を人為的に発生させることで、ウイルスの自然変異を事前に見極めて防衛策を立ててパンデミックを避ける目的があり、河岡教授自身も「インフルエンザによるパンデミックに対処する現実的方法の1つです」と述べています。

河岡教授は、リバースジェネティクスによる人工ウイルスについて「厳重に管理された研究所で事故が起きるよりも、公園でアヒルに餌を与える方がインフルエンザにかかる可能性は高いでしょう」と述べていますけれども、それはあくまでも"厳重に管理された研究所"という前提での話です。




5.最高の安全対策も使う人次第

2017年、アメリカは2014年から禁止していた、インフルエンザウイルス、MERSコロナウイルス、SARSコロナウイルスの3種の病原菌を改変して致死率を上げる研究に対する補助金の交付を解禁しました。

もちろん交付金は、研究することによるリスクを正当化できるメリットがある場合のみに限ります。研究を行う者は、調査委員会に研究内容が科学的に健全で、高度なセキュリティを備えた実験施設で行われることを証明しなければなりません。

また改変の対象となる病原菌は深刻な健康被害を与えるもので、その研究はワクチン開発など、人類に貢献するものでなければならず、研究は最高の安全対策を施した上で遂行されなければならないことになっています。

この方針について、アメリカ国立衛生研究所(NIH)所長のフランシス・S・コリンズ博士「厳格な方針だと考えています。きちんと守られることを願います」とコメントしていますけれども、その一方、ラトガース大学の分子生物学者リチャード・H・エブライト博士は「見掛け倒し」と主張し、調査委員会を設けることについては評価したものの政府とは独立した機関であることが望ましいと指摘しています。

また政府助成プロジェクトだけでなく、同様のあらゆる研究を対象とするルール作りが必要であると述べているところをみると、相当その危険性を案じていることが窺えます。

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6.中国の工作員と化したハーバード大学化学・化学生物学部学部長

けれども、いくら厳格なルールを決めたとしても、それを運用する側、人がそれを守らなければ何の意味もありません。要は科学者のモラルが問われるということです。

1月28日、アメリカ司法省は、ハーバード大化学・化学生物学部学部長のチャールズ・リーバー博士を逮捕したと発表しました。

容疑は、中国当局との関係についてアメリカ政府機関に虚偽の申告をしたとするもので、発表によると、リーバー博士は、2012~17年、中国湖北省の武漢理工大から給料として毎月5万ドル(約550万円)、住居費や生活費として年間15万8千ドル(約1700万円)をもらう契約を交わしていたとのことです。

契約は中国共産党が外国の優秀な人材を引き抜く「千人計画」の一環で、契約書も残されていたのですけれども、リーバー博士は2018年4月と2019年1月にアメリカ国防総省やアメリカ国立衛生研究所に「千人計画に参加するよう言われたことはない」などと、嘘をついた容疑が欠けられています。

件の契約では、リーバー博士は、国際協力プロジェクトを宣言し、若い教師と博士を養成するため1年のうち9ヶ月以上は武漢理工大で働くことになっていたそうです。

マサチューセッツ州連邦地検の検事によると、ボストン大学で研究員を務めていた中国人女性Yanqing Yeがビザ申請の際、人民解放軍士官という肩書を隠して身分を「学生」と偽ったとして、詐欺や虚偽申告、共謀などの罪に問われていることを明らかにしました。

この中国人女性は、2017年10月から2019年4月までボストン大学の物理、化学、生物医学工学部で学んでいた間、人民解放軍士官として働き続け、アメリカの情報を中国に流していたとされています。

また、ハーバード大学の招聘で訪米していた中国人の癌研究者Zaosong Zhengが、2019年9月9日にバッグの中の靴下に21本の生物試料の瓶を隠して、中国帰国便に搭乗しようとした上、荷物の中身について連邦当局者に嘘をついた罪に問われていることを明らかにしています。

果たして彼らが何を持ち出し、何をしようとしていたのか分かりませんし、それが新型コロナウイルスと関係があるという積りもありませんけれども、既に、ウイルスを好きなように改造できる技術がある以上、それらを扱う科学者に一定以上のモラルがなければ、早晩自滅の道を歩むことになるのは明らかです。

今、世界は新型コロナウイルスのパンデミックを抑えることに全力を傾けるべきですけれども、その後は、科学技術には人類を自滅させる可能性があることへの深い自覚と高いモラルを持って貰うように何らかの対策を考えるべきではないかと思いますね。


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