テーブルの上で殴りテーブルの下で手を差し伸べる

更に続きです。
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1.イラク撤退準備の書簡

1月6日、アメリカ軍のマーク・ミリー統合参謀本部議長は、イラク駐留アメリカ軍がイラク撤退を準備していることをイラク政府に通達する公式書簡が、誤って送付されたことを明らかにしました。

この書簡はイラク駐留アメリカ軍の司令官であるウィリアム・シーリー准将がイラクの合同作戦司令官に送付したものです。

書簡には「我々に出国を命じた貴国の独立した決定を尊重する」と表明していて、イラクに駐留するアメリカ軍主導の有志連合部隊は「向こう数日、数週間で部隊を再配備する……この任務を実行するため、有志連合はイラクからの撤収が安全かつ効率良い方法で確実に行われるよう、一部の措置を講じる必要がある」としています。

更に、アメリカ大使館がある首都バグダッドのグリーンゾーン内とその周辺をヘリコプターが飛行することになるとも通達しています。

けれども、ミリー統合参謀本部議長は記者らに対し、送られた書簡は草稿であり、送付は「間違いだった」と言明していますけれども、「草稿」とはいえ、送付したことを否定している訳ではありませんから、送付そのものはしたということです。

件の書簡についてマーク・エスパー国防長官は、「イラク撤退の決定は一切下されていない……あの書簡は、我々の現在の状況と相反している」と述べていますけれども、書簡に書いてあるのは"撤退を準備している"であり、撤退すると断言している訳ではありません。

要するに、書簡は将来の"予定"を述べているのに対して、エスパー長官は"現在ただ今"の事を述べている訳です。従って、エスパー国防長官の発言は件の書簡を否定してみせているようで実は否定していないと思います。


2.戦争はしない

筆者は、今回のアメリカ軍による"誤った"書簡送付は、意図的なリークではないかと見ています。

では、その狙いとはなにか。

おそらく、これはイラクは勿論のことイランと世界に対する「戦争はしない・あるいはしたくない」というメッセージではないかと思います。

1月5日、イラク議会はイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が殺害されたことを受け、イラクに駐留しているアメリカ軍主体の対テロ有志連合を撤退させることを政府に求める決議を採択しています。

決議では「アメリカ軍を含むすべての外国軍」の退去を求めていて、議会のハルブシ議長は「有志連合に対するIS掃討支援要請を破棄するよう政府に求める表決を行った」と述べています。

これに対し、トランプ大統領は5日、専用機中で「敵意があり、不適切なことをするなら、イラクに非常に大きな制裁を科す」と述べ、国務省のオルタガス報道官は決議に「失望している」と表明していますけれども、表向き強気の姿勢を見せて裏で撤退を示唆する書簡を送る。

テーブルの上で殴り合って、テーブルの下で手を差し伸べる。普通の逆パタンですね。

通常なら、わざわざテーブルの下のことを見せる必要はないのですけれども、今回のソレイマニ司令官殺害を巡ってのアメリカとイランとの対立に世界が反応し震撼しているのを見て、それを鎮める意味もあるのではないかと思います。

イラクにしてみれば、自分達のアメリカ軍撤退決議をアメリカが飲んだ形になりますし、イラクの撤退決議はソレイマニ司令官殺害に対するものであるから、イランにとっても間接的にではありますけれども、アメリカに報復したことになります。

また、トランプ大統領にしてみれば、戦争をしないメッセージをイランに送ると同時に、金のかかるイラク駐留撤退の口実を得ることにもなります。このメッセージが正しくイランに伝わる限りにおいて、中々上手い手なのかもしれません。


3.プレッシャーを受ける金正恩

今回のソレイマニ司令官殺害に込められたメッセージはイランに対するものだけではありません。当然、北朝鮮をも睨んだものと思われます。

昨年10月31日のエントリー「アメリカ特殊部隊によるIS指導者バクダティ殺害について」で、筆者は、IS指導者であるバクダティをアメリカ軍特殊部隊を使って殺害したことは同時に北朝鮮の金正恩委員長にいつでも殺せるのだぞ、とプレッシャーを掛ける狙いもあるだろうと述べましたけれども、それと同じです。

しかも今回は、特殊部隊すら使わず、カタールのアル・ウデイド空軍基地から飛ばされた無人航空機MQ-9リーパーからのミサイルによるピンポイント攻撃ですからね。金正恩委員長は震え上がっている筈です。

流石にここまでくると、メディアもその可能性に恐れをいだいたようで、韓国・中央日報は韓国政府当局者の話として「アメリカはソレイマニ司令官除去を通じて、外交的に解決しなければ軍事的オプションを使用する可能性があることを明確に示した……北は自国にも似た状況が発生する可能性がないか懸念しているはず」と伝えています。

それを証明するかのように、トランプ大統領は5日、滞在していた南部フロリダ州からワシントンに向かう大統領専用機の機内で同行記者団に対して、金正恩委員長について「彼は私への約束を破るとは思わないが、破るかもしれない」と述べました。

実に分かりやすい脅しです。ソレイマニ司令官を殺害し、実力を見せつけた上で脅している訳です。効果は抜群です。

アメリカ軍幹部はソレイマニ司令官の殺害を「最も極端な選択肢」としてトランプ大統領に提示し、それによって他の選択肢に誘導しようと画策していたのが、トランプ大統領がその「極端な選択肢」を選んでしまったなどと報じられているのですけれども、筆者にはこれさえも計算のうちで、わざとそういう風にリークさせているのではないかとさえ思いますね。

なぜなら、相手に自分が何をするか分からない、狂ってると思わせるのはディールにおいて有利に働くからです。

ソレイマニ司令官を殺害することで、イランと北朝鮮の核開発を両方一気に止めさせようとしている。

もしも、トランプ大統領がここまでの効果を計算した上で、ソレイマニ司令官の殺害を選択したのだとすれば、やはり策士だと思います。


4.鍵はイスラエル

ただ、この策が上手くいくかどうかの重要なポイントがあると筆者は見ています。それはやはりイスラエルです。

イランは自国の英雄であるソレイマニ司令官の殺害を受け、報復を宣言しています。たとえアメリカがイラクからの撤退を水面下で通達し、それを実行したとしても、それでジハードが収まるのかどうか。

仮に、イラクおよび中東からアメリカ軍が撤退したとして、それでもイランあるいはイスラム信徒らが報復を止めなかった場合、その標的となるのはイスラエルです。

イスラエルがミサイル攻撃を受けた場合、黙っている筈もなく、まず間違いなく反撃するでしょう。それがやはり第三次世界大戦の引き金にならないとは限らない。

その意味では、イラン発の報復がどの程度で抑えられるか、或いはイスラエルをアメリカが抑えておけるかが鍵になるように思います。

昨日のエントリーで筆者は、アメリカはイランへの理解を深めるべきだと述べましたけれども、もしイランの報復を最小限に抑える手があるとすれば、トランプ大統領がイスラムへの理解を示し、最高指導者ハメネイ師への敬意を表するなんらかの声明なり行動をする必要があるのではないかと思います。

現実として、そうなる可能性は薄いと思いますけれども、すくなくとも、アメリカはイラクへアメリカ軍撤退の書簡を送ることで、間接的にイランにメッセージを送りました。

それをイランがどう受け取るのか、そして、アメリカがイスラエルをどう抑えるのか。

情勢がどうなるかは全く予断を許しません。

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