日露平和条約の為に日本が克服すべきハードルとは何か

今日はこの話題です。
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1.日露平和条約交渉におけるロシアの懸念

11月23日、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相はG20外相会談で、日露関係について触れ、在日米軍の駐留が日本とロシアの緊密な関係を妨げており、ロシアの懸念事項であり続けていると述べました。

ラヴロフ外相は在日米軍の駐留について「もちろん日露関係の質を改善する道に立ちはだかる問題」であるとし、日米の政治的および軍事的同盟の存在、発展、絶え間ない強化に起因するロシアの安全保障に対する懸念を日本側に伝え、日本側はそれに対し「対応すると約束した」と述べました。

ラブロフ外相は、日本からの返事を待って、それから議論を続けると述べていますから、この問題が北方領土問題を含む日露平和条約締結への大きな壁になっていることが窺えます。

ロシアのプーチン大統領と安倍総理は、会談を重ね、第二次世界大戦の対立を正式に終わらせるための交渉を加速させることを確認し、1956年の日ソ共同宣言に基づき会談を再開するとしています。

1956年の日ソ共同宣言では、日本とソ連は、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を引き渡すと明記したのですけれども、1960年に岸信介首相が日米安保条約を改定したことにソ連は猛反発。「日本領土からの全外国軍隊の撤退」を2島引き渡しの条件に追加する対日覚書を一方的に突き付けています。

ラブロフ外相は「1956年の宣言が交渉されたときのことを思い出してください。ソ連は、在日米軍の駐留が打ち切りになった場合に限り完全に実施できると述べました」とのコメントをそのまま受け取るならば、在日米軍が完全にいなくなれば引き渡しできるということになります。


2.オホーツク海は極東ロシア防衛の要

このロシアの懸念は今年になってメディア等々で触れられる機会が増えてきているように思いますけれども、ロシアは数年前から問題提起しています。

2016年11月、プーチン大統領の側近であるパトルシェフ安全保障会議書記は、「島が引き渡されたら米軍駐留の可能性があるのか」と日本側に伝え、翌12月、プーチン大統領が来日した際、ロシア極東地域には2つの大きな海軍基地があり、北方領土はロシアの艦船が太平洋に出ていく重要な通り道にあたる旨を述べています。そして、2017年6月には島の非武装というオプションもあり得ると述べたほか、2017年11月には日米安全保障条約が交渉にどのような影響を及ぼすのか見極めなくてはならないと発言しています。

ロシアにとって、オホーツク海は、アメリカに向けた核の発射場であるばかりか、核兵器を搭載したロシアの原子力潜水艦が自由に航行できる海域として軍事的に重視されています。

その証拠にウラジオストクにはロシア海軍太平洋艦隊の司令部が、カムチャツカ半島には原子力潜水艦の拠点が配置されています。ロシア軍事に詳しい未来工学研究所の小泉悠客員研究員は「冷戦終結直後、カムチャツカにいる潜水艦部隊は旧式ばかりでボロボロだったが、元気な新鋭艦が来てオホーツク海の戦略的意義も高まっている」と述べているとおり、今のように米ロ関係が今一つの状況下では、よりその重要性が増しているとも言えます。

また、近年、北極海航路が開拓されたことから、オホーツク海がアジアから北極海に向かう外国艦船の通り道になることから、ロシアはオホーツク海への影響力を誇示すべく、この海域で大規模な軍事演習を行ったり、千島列島のマトゥア島とパラムシル島に新たな軍事拠点を置いています。

この動きは北方領土でも同じです。ロシアはオホーツク海の通り道に面する北方領土、取り分け、択捉、国後を重要視しているのではないかと思われます。択捉島と国後島に挟まれた国後水道は、オホーツク海から太平洋に向けたロシア海軍の重要な出入り口となっていることから、ロシアは国後、択捉に3500人のロシア軍を駐留させています。

更に、両島には新型の地対艦ミサイルが配備され、択捉島には新しい軍民両用空港が建設されるなど、ここ数年、軍近代化の動きを加速させています。

これらからも分かるとおり、ロシアは歯舞、色丹を日本に引き渡す場合でも、将来的にアメリカ軍が駐留することを強く懸念しています。これはロシアの安全保障という立場からみれば、理解できるものであると思います。

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3.日本はどの程度、独自に物事を決められるのか

こうしたロシアの懸念に対し、日本はどう対処すべきか。

2014年、プーチン大統領がクリミアを併合したことで、当時のアメリカのオバマ政権がロシアに経済制裁を科し、安倍政権もその制裁に追随しました。

そして、2016年11月上旬、モスクワを訪れた当時の谷内正太郎国家安全保障局長は「返還された島に米軍基地を置かないという約束はできない」という基本方針をロシア側に伝え、その報告を聞いたプーチン大統領は、11月19日、ペルー・リマでの日ロ首脳会談で、安倍総理に、「君の側近が『島に米軍基地が置かれる可能性はある』と言ったそうだが、それでは交渉は終わる」と述べています。

安倍総理は「全くの誤解。これから交渉しよう」と応じたそうですけれども、誤解といいながら、「これから交渉しよう」などという表現は、なにやらゼロから改めて始めようというニュアンスすら感じます。これでは今までの交渉はなんだったのかとなりかねません。

その後、2016年にプーチン大統領が初来日することになったのですけれども、プーチン大統領は、来日直前に読売新聞のインタビューに「日本はロシアへの制裁に加わった。制裁を受けたまま、どうやって経済関係を新しい、より高いレベルに発展させるのか? 日本はどの程度、独自に物事を決められるのか」とコメントしました。「独自に物事を決められるのか」との言葉から、明らかに日本の外交力、政治力に疑問を持っていることが分かります。


4.返還された島に米軍基地を置かないという約束はできない

日本が主体的に意思決定する、とりわけ在日米軍について、独自の決定が出来ないのではないかという点について、外務省がそう認めているという指摘があります。

書籍情報社代表の矢部宏治氏は、外務省が1983年につくった高級官僚向けの極秘マニュアルとされる「日米地位協定の考え方 増補版」に、「アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる」、「 日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定されていない」と明記されており、それゆえに「だから北方領土の交渉をするときも、返還された島に米軍基地を置かないというような約束をしてはならない」となっていると指摘しています。

この「日米地位協定の考え方 増補版」については、2004年に琉球新報が入手して全文掲載しています

その文書の「第二条」では、施設・区域の提供、返還及び共同使用につき定められているのですけれども、そこには矢部宏治氏が指摘する北方領土交渉における米軍基地を置く置かないについて記されています。次に該当部と思われる第二条1項(a)を引用します。
一 施設・区域の提供

1 第二条1項(a)は、米側は、安保条約第六条に基づき日本国内の施設・区域の使用を許されること及び個々の施設・区域に関する協定は、合同委員会を通じて日米両政府が締結しなければならないことを定めている(第一文及び第二文)が、このことは、次の二つのことを意味している。

第一に、米側は、わが国の施政下にある領域内であればどこにでも施設・区域の提供を求める権利が認められていることである。第二に、施設・区域の提供は、一件ごとにわが国の同意によることとされており、従って、わが国は施設・区域の提供に関する米側の個々の要求のすべてに応ずる義務を有してはいないことである。

地位協定が個々の施設・区域の提供をわが国の個別の同意によらしめていることは、安保条約第六条の施設・区域の提供目的に合致した米側の提供要求をわが国が合理的な理由なしに拒否しうることを意味するものではない。特定の施設・区域の要否は、本来は、安保条約の目的、その時の国際情勢及び当該施設・区域の機能を綜合して判断されるべきものであろうが、かかる判断を個々の施設・区域について行なうことは実際問題として困難である。

むしろ、安保条約は、かかる判断については、日米間に基本的な意見の一致があることを前提として成り立っていると理解すべきである。(注10)

(注10)かかる判断について、常に日米間に意見の不一致がありうるとすれば、単に施設・区域の円滑な提供は不可能であるばかりでなく、わが国が自国の安全保障を米国に依存することの妥当性自体が否定されることとなろう。

以上にも拘らず個々の施設・区域の提供につき米側がわが国の同意を必要とするのは、場合によっては、関係地域の地方的特殊事情等(例えば、適当な土地の欠除、環境保全のための特別な要請の存在、その他施設・区域の提供が当該地域に与える社会・経済的影響、日本側の財政負担との関係等)により、現実に提供が困難なことがありうるからであって、かかる事情が存在しない場合にもわが国が米側の提供要求に同意しないことは安保条約において予想されていないと考えるべきである。(注11)

(注11)このような考え方からすれば、例えば北方領土の返還の条件として「返還後の北方領土には施設・区域を設けない」との法的義務をあらかじめ一般的に日本側が負うようなことをソ連側と約することは、安保条約・地位協定上問題があるということになる。
思いっきり明記されています。これについて、矢部宏治氏は、極秘マニュアルにこうした具体的な記述があるということは、ほぼ間違いなく日米のあいだに、この問題について文書で合意した非公開議事録(事実上の密約)があり、現在の日米間の軍事的関係が根本的に変化しない限り、ロシアとの領土問題が解決する可能性はゼロだと述べています。

これはその通りだと思います。これが日露領土交渉のみならず日露平和条約締結の大きな壁となっていることは疑いないでしょう。


5.日本が乗り越えるべきハードル

このような状況下でロシアとの平和条約交渉を進めるためには、この極秘協定そのものを改定させることが必要になりますし、改定しないまま、ロシアとの平和条約を結ぶためには、返還された北方領土に米軍駐留する可能性があるとしたまま、それでも返還してもよいとロシアを説得できるだけの何かが必要です。

どちらも今の日本には非常にかなり高い課題のように見えます。

件の極秘マニュアルの第二条には「安保条約は、かかる判断については、日米間に基本的な意見の一致があることを前提として成り立っていると理解すべきである」と日米双方の合意によって施設や区域の提供がなされるとありますから、日米双方が合意すれば、北方領土に米軍基地を置かないとすることも理屈では可能となっています。

けれども、それは、注10に記されているように「日米間に意見の不一致がありうるとすれば、単に施設・区域の円滑な提供は不可能であるばかりでなく、わが国が自国の安全保障を米国に依存することの妥当性自体が否定される」場合になることが想定されます。

それは要するに、日本が自国の安全保障をアメリカに依存しないようにするということであり、憲法改正はもとより、自衛隊を正式な軍とするだけでなく、自前できちんと国を守れるような体制を組むということです。

極秘マニュアルが作成されたとされる1983年とは世界情勢は大きく変わっています。むしろ、今こそ、国会で、桜だのシュレッダーだの下らない議論で時間を空費なんかせず、安全保障や憲法改正を真剣に議論すべきではないかと思いますね。

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