地方自治体に丸投げしたヘイト取り締まり ~ヘイトスピーチと表現の自由(後編)~

昨日の続きです。
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5.ヘイトスピーチ対策法の想定の甘さ

表現の自由とヘイトについて、国はどう考えているのか。

2016年にヘイトスピーチ対策法が制定されましたけれども、これには禁止規定や罰則規定がありません。それは表現の自由との兼ね合いを考慮したからだとされています。

法案作成に携わった西田昌司参院議員は法案成立に際した記者会見で、「もしも禁止すると、禁止すべきものを定義した段階で、定義から外れる境界線を求めるようなヘイトスピーチが予想される。理念法にすることで全体の文脈の中でヘイトスピーチをとらえ、ダメだという形に持って行く。また、禁止規定を設けると、行政が何もしないことは違法状態の放置になるため、罰則をつけるべきかという議論になりかねない。それが逆に表現の自由を制約することになっていく……禁止規定は、他の法律で同じようなことが作れるということになりかねない。それが戦前の治安維持法ではないけれど、そういうことに道を開くことになってもいけない」と述べています。

これは、昨日のエントリーで述べた橋本前大阪市長が、大阪市のヘイトスピーチ規制条例を制定するに当たり「何も問題ない表現まで禁じられる危険性」を考慮したことにも通じます。この考え方自体は妥当だとは思いますけれども、大村知事のダブスタ発言を見る限り、その実行に当たって懸念がないとはいえません。

このヘイトスピーチ対策法について、法律に禁止規定や罰則がないことで、どう実効性を持たせるのか、何が変わるのかと問われた西田参院議員は、ヘイトデモに「厳正に対処して、事実上封じ込める。そういう行政権を行使して頂きたい。訴訟になることも考えられるが、裁判の場で、ヘイトスピーチは許さないという趣旨のもとに、正しい判断をして頂ければ、行政がヘイトスピーチを封じ込める行為が違法とはならず、その結果ヘイトスピーチは事実上日本からはできなくなる……たとえば道路でヘイトスピーチの集会をしようとして警察の指示に従わなかったら道交法違反、抗議をしたら公務執行妨害。大きな音が騒音防止条例。そうして現実に押さえ込んでいけるのではないか」と述べていました。

けれども、「あいちトリカエナハーレ」は施設内で法に則した展示であり、道交法違反も公務執行妨害も騒音防止条例にも違反していません。地方自治体といった行政が事実上の封じ込めをすればよいと丸投げしたまでは良かったかもしれませんけれども、既に想定外の状況が発生している訳です。


6.地方自治体に丸投げしたヘイト取り締まり

法務省は、ヘイトスピーチ解消法の解釈など、地方公共団体がヘイトスピーチの解消に向けた施策を行うに当たって参考となる情報として、ヘイトスピーチの典型例を公開していますけれども、これも具体的なヘイトスピーチの封じ込めは地方自治体に投げたことに関連していると思われます。

そのヘイトスピーチ典型例では、「○○人は殺せ」といった脅迫的言動や、「ゴキブリ」などといった著しく侮蔑する言動、そして「○○人はこの町から出て行け」といった地域社会から排除することを扇動する言動を上げています

つまり、こうした例を参考にして取り締まれと言っている訳です。けれども、禁止規定がないヘイトスピーチ対策法自身を拠り所には出来ず、また道交法違反にも公務執行妨害にも、騒音防止条例にも違反していないであろう「あいちトリカエナハーレ」をどういう根拠で取り締まるのか。大村知事が本当に提訴できるのか、どういう理由を捻り出してくるのか。ちょっと気になります。

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7.「ヤンキーゴーホーム」がヘイトでないなら「コリアンゴーホーム」もヘイトではない

今回の「あいちトリエンナーレ、表現の不自由展」については、日本人に対するヘイトは問題ではないのか。たとえ表現の自由の範疇だとしても、そこに公金が投じられるのは問題ではないのかという批判が上がっているのですけれども、ヘイトスピーチ解消法の一方向性も問題ではないかという指摘もあります。

ヘイトスピーチ解消法は正式名称を「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」というのですけれども、名称をみれば明らかなように「本邦外出身者」、すなわち日本人ではない人達の為の法律です。

これについて、「日本エア野党の会」代表の山岡鉄秀氏は、法案制定の中心人物である西田昌司参院議員に公開質問をしています。その質問要旨は次のとおり。
1)川崎市条例が法律の範囲を超えて罰則規定を設けることは、憲法94条違反であるとお考えですか?
2)先生は以前、複数の番組で、「ヘイトスピーチ解消法」が一方通行だというのは誤解で、日本人に対するヘイトも罰せられる、と発言していらっしゃいますが、その根拠をお示し頂けますか?(そのようには読めませんので)
3)先生は、共産党員などが沖縄県の辺野古で米兵に対して「ヤンキーゴーホーム」と叫んでも、政治的発言なのでヘイトスピーチにならないとおっしゃっていますが、米兵家族に対してそのように叫んでもヘイトスピーチではないとお考えでしょうか?
4)同様に、昨今の日韓関係に鑑みて、来日中の韓国人に「コリアンゴーホーム」と叫んでもヘイトスピーチにはならないというお考えでしょうか?
山岡氏はヘイトスピーチ解消法の一方向性や政治的発言はヘイトスピーチではないという懸念点に鋭く切り込んでいるものであり、国民としては当然の疑問となるものです。けれども、西田議員はこの質問に回答していません。

ただ、質問から二週間近く経ってから、西田議員の秘書の方を通じて次の回答があったそうです。
・質問に対して正式にコメントを出すことはできない。
・自治体条例であるため、国会議員として正式にコメントすることはできない。
・自治体市長も議員も選挙によってえらばれているので、その判断に委ねる。
・ヘイトスピーチ解消法に関して、罰則化は考えていない。
・双方に対して罰則を求めず、柔らかいモラル法としている。
・条例と法は異なるので、条例に関してはあくまでも自治体として対応すべきだ。
やはり自治体に丸投げです。けれども、その自治体は法務省が出したヘイトスピーチの典型例とか参考例を元にして判断する訳です。

法務省のヘイトスピーチの典型例では、「○○人はこの町から出て行け」もヘイトスピーチとなっていますけれども、これについて、西田議員は平成28年4月の参議院法務委員会で「日本というのは社会であって、地域社会という、そういう小さな括りではありませんが、当然日本から出ていけということは地域社会から出ていけということも含まれてきますので、当然それも入ってくると思うんです」と答弁しているのですね。

そこから類推すると、山岡氏の質問にある米兵の家族に「ヤンキーゴーホーム」ということや、来日中の韓国人に「コリアンゴーホーム」ということは当然ヘイトスピーチになると思われるのですけれども、「ヤンキーゴーホーム」は政治的発言だからヘイトではないというのとは明らかに矛盾します。

山岡氏は西田議員秘書の回答について、西田議員の過去の発言についても質問しているのだから、答えられない理由はないはずであり、起草者に意見を求めるのは自然なことだとしていますけれども、少なくとも「ヤンキーゴーホーム」や「コリアンゴーホーム」がヘイトかどうかについては回答しないといけないのではないかと思いますね。




8.ヘイトスピーチと表現の自由

今回の「あいちトリエンナーレ、表現の不自由展」とそれを発端とした「あいちトリカエナハーレ」は、ヘイトスピーチと表現の自由について世に問いかけることとなりました。

また、全額自費で行った「あいちトリカエナハーレ」に対し、公金を投入した「あいちトリエンナーレ、表現の不自由展」がそれに相応しかったのかどうかも当然問われるべきだと思います。

「あいちトリエンナーレ、表現の不自由展」では、慰安婦問題を象徴する少女像や昭和天皇をコラージュした映像作品などを展示するコーナーが設けられましたけれども、芸術祭の実行委員会の会長代行を務めた名古屋市の河村市長は、「日本人の心を傷つけるものだ」などと批判しています。

これら、展示作品について、名古屋市は芸術祭の開幕直前の7月に説明を受けたが、映像作品などの具体的な内容が十分に理解できるような詳しい説明ではなかったと説明しています。

ネットには「あいちトリエンナーレ、表現の不自由展」の展示予定作品一覧なる文書が流出し、そこには「慰安婦」だとか「天皇制」などの文字が見えています。確かにこの文書だけでは展示物の細かな内容までは分かる筈もなく、説明を受けないと判断は難しかったと思われます。

名古屋市の河村市長は「故意に展示内容を隠したとしか言いようがない」と、「あいちトリエンナーレ、表現の不自由展」の芸術監督を務めた津田大介氏やコーナーの企画に関わったメンバーが、事前に展示に反対されないよう、市などに作品の詳しい内容を説明せず展示を行ったとして、刑事と民事の両面で法的措置を検討する意向を示しています。

こちらは展示内容というよりは手続き上の瑕疵を問うものですから、ヘイトであるかどうかとは別の問題です。仮に、津田大介氏やコーナーの企画に関わったメンバーが展示内容を「故意に」隠していたのだとすれば、本人達も隠さなければならない展示物であると自覚していたことになります。そう自覚した上で、敢えて行ったのだとすれば、その理由も当然明らかにすべきでしょう。

大村知事のダブスタと芸術監督を務めた津田大介氏が公金を使って展示しようとした理由については徹底的に追求し、その"闇"を明らかにしていただきたいと思いますね。

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