戦略の階層からみた立花孝志とN国党の危険性

 
今日はこの話題です。
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0.はじめに

7月の参院選がら一ヶ月経過し、何かと話題を提供しているN国党と立花代表ですけれども、彼の配信動画等々を追いかけて、筆者なりに色々見えてきたものがありますので、現時点での考えをエントリーしておきたいと思います。


1.立花孝志代表を戦略の階層で分析する

日比野庵ブログでは、「戦略の階層」というものを度々取り上げていますけれども、「戦略の階層」とは、地政学者の奥山真司氏が提唱/紹介しているもので、国家が戦争するときにどういうことが起こっているのか捉えるときに重要となる概念であり、大きく7つの階層があると定義しています。

その7つの階層とは次のとおり。
世界観  … 人生観、歴史観、地理感覚、心、ビジョン等
政策   … 生き方、政治方針、意思、ポリシー   
大戦略  … 人間関係、兵站・資源配分、身体など
軍事戦略 … 仕事の種類、戦争の勝ち方など
作戦   … 仕事の仕方、会戦の勝ち方など
戦術   … ツールやテクの使い方、戦闘の勝ち方など
技術   … ツールやテクの獲得、敵兵の殺し方など
戦略の階層は上にいくほど「抽象度」があがり、ソフトの面が強くなり、下に行くほどハードの面が強くなるという特徴があります。

要するに、戦略の階層が上になればなるほど、"曖昧な"ものになり、下にいけばいくほど、個別具体的で分かりやすくなるということですね。

選挙でよく、外交安保は票にならないと言われますけれども、これは、日本人にとって、外交安保は抽象度が高い概念であるからで、それよりは、消費税や社会保障といった政策の方が、より身近な話題であり、関心を呼ぶからです。

では、N国党の立花代表について、その主張や行動から、筆者なりに分析してみたいと思います。勿論、立花氏個人としては、別の考えなり何なりを持っているとは思います。あくまでも「N国党代表」としての言動からの分析になります。

それはおおよそ、次の様になるかと思います。
世界観  … 世の中は公正・公平であるべきだ
政策   … だから、世の中の不公正、不平等を正していこう
大戦略  … 今の法律に照らし、法律違反の箇所があればそれを追及する
軍事戦略 … NHKをぶっ壊す、NHKスクランブル化法案を可決させる
作戦   … N国党の党勢拡大を行う。無党派層をN国党の支持者にする
戦術   … 有名人をスカウトする。パフォーマンスを行いN国党の認知度を上げる
技術   … ネットで動画配信をする
戦略の階層でみると、N国党のスローガンである「NHKをぶっ壊す」は軍事戦略レベルでしかありません。NHKのスクランブル化は、NHKに対する「勝ち方」であって、電波という公共資産の配分や、ポリシーなどではないからです。

従って、更に上位の戦略階層を考えていくと、最上位の戦略である立花氏の世界観は「公正・公平」になるのではないかと思います。

高須委員長との対談等でも、立花代表は、NHKのスクランブル化の賛否を国民に聞くと、過半数は賛成になるのに、国会だと100対0でスクランブル化はしない、になる。その民意と国会のギャップを埋めたいと発言しています。

これは、民主国家でありながら、民意が国会に反映されないという「不公正」な状態にあることを示しているともいえ、こうした「不公正を正したい」という強烈な世界観を持っているのではないかと思うのですね。

また、NHKのスクランブル化にしても、「NHKを見たくない者に対して、何故受信料を強制されるのか」という「不公正」や、NHK受信料を払ってない人達の分を払っている人が肩代わりして上乗せして払わされているという「不公平」を正したいということでしょう。

まぁ、ある種の正義感といってもいいかもしれませんけれども、そうした彼の正義感の根源部分に「世の中は公正・公平でなければならない。努力したものはその分だけ報われなければならない」という世界観があるのではないかと思うんですね。

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2.作戦・戦術・技術で革新的なN国党

N国党というか、立花代表の行動は。戦略の7階層で見ても、非常に分かりやすく分類出来ると思います。その中で、筆者がやはり秀逸だと思うのは作戦・戦術・技術といった戦略の下位の階層です。

筆者は、「第六電波王・立花孝志」のエントリーで立花代表の行動を兵法の切り口で見ると、他を圧倒する機動力と、現代の鉄砲たるネット動画があると述べましたけれども、これらは戦略の階層でいえば、それぞれ、下位階層である「技術」と「戦術」に当たると思います(技術:鉄砲、戦術:機動力)。

最下層の「技術」と下から2番目の「戦術」の階層は、マネジメントレベルでは、現場レベルでの戦略であり、その意味では立花代表の現場レベルの戦略は他の追随を許さないものがあると思います。

そして、件のエントリーでは、立花代表はN国党ではNHKをぶっ壊す以外の政策のすり合わせはしないというやり方を政治家にとっての「楽市楽座」だとも述べましたけれども、これは戦略の階層では「作戦」にあたるでしょう。

これも他の政党にはない部分だと思います。

因みに立花代表は、ネット動画配信について、支援者に「刀で戦しているところに、鉄砲で撃ったら負ける訳がない」と支援者に話しています。まぁ、そういう認識でいるということですね。




3.「政選分離」の革新性

さらに、立花代表の党運営において「作戦」の階層で革新的だと思う部分があります。それは、政治活動と選挙活動の分離です。

立花代表は、世の中に優れた人はいるのに選挙に出ない/行かない理由は、選挙をすると収入が減り、馬鹿なことも出来ず、支援者への挨拶周りなど、いわゆる選挙活動をしなければならず、リスクがあるからだと喝破しています。

立花代表は、そうした選挙というリスクはN国党で負って、候補者自身には負わせない形を造ろうとしているのですね。

彼は、次の衆院選を睨んで、いわゆる数字を持っている候補者をスカウトしていますけれども、例えば「青汁王子」をスカウトする際に、「選挙活動をしなくていいから、政治をやろう」という風に口説いていると発言しています。

確かに今の政治家は、仕事として、政治活動と選挙活動の二つを負っています。政治家は「落選したら唯の人」ですから、選挙活動を疎かには出来ません。どんなに政治的手腕があっても、選挙活動にそのエネルギーを取られてしまうのですね。何もしなくても選挙に勝てるような大物ならいざ知らず、当落線上とかギリギリ当選するような政治家だと、週末には地元に戻って、足繁く支援者周りとしたり、それこそ盆踊りにも参加しなくてはならないでしょう。

立花代表は此処にメスを入れた。

選挙と政治を分離して、負担を減らすことで、選挙をやったことのない候補者を開拓している。もう、選挙の候補者には、数字、いわゆる「看板」だけあればよい。あとはN国党で面倒を見るから、残りのエネルギーは政治に注力してくれ、とまぁ、こういう訳です。

これなどは、信長が最初に推し進めたとされる「兵農分離」を彷彿とさせます。政治家から選挙運動を分離する「政選分離」。これも立花代表の革新的な部分だと思います。

纏めると次のようになるかと思います。
作戦:政選分離、楽市楽座(ワンイシュー)
戦術:群を抜く論戦機動力の高さ
技術:ネット動画配信
このように、現時点でのN国党を戦略の階層でみると、作戦・戦術・技術の階層で革新的であるといえると思いますね。




4.立花孝志の限界がN国党の限界

N国党は、戦略の階層での下位部分に革新的なものがあると述べましたけれども、では、戦略の上位階層はどうなのか。

率直に言えば、今のN国党には「軍事戦略」階層以上の人材が不足しているように見えます。

N国党の軍事戦略は、「NHKをぶっ壊す、NHKスクランブル化法案を可決させる」ことにあります。其の為には法案を作り、可決させなければなりません。可決の為には当然議員の数が必要であることは言うまでもありませんけれども、それ以前に、スクランブル化のための法案を作らなければなりません。

法案を作るとなると、当然、法律知識が必要になりますし、他の法案との不整合があってはなりません。要するに素人が簡単に手が出せる代物ではない訳です。

それが出来る人材が、N国党にどれだけいるのか。

仮に立花代表にそれが出来たとしても、そこから更にハードルがあります。

国会で審議する法案には政府が出す政府提出法案(閣法)と、国会議員が提出する議員立法の2種類があります。

議員立法を提出するには衆院は20人以上、参院は10人以上の賛成が必要ですし、予算が伴う法案は衆院50人以上、参院20人以上が条件になります。従って、議員数が少ない会派は他の党派の力を借りなければ議員立法を提出することすら出来ません。

よしんば議員立法提出に漕ぎ着けたとしても、議員立法は成立率は高くありません。寧ろ低い。

2012年の第2次安倍政権発足以降、閣法の成立率が9割なのに対し、議員立法は2割弱にとどまります。2009~2018年の議員立法で見ても、提出数こそ、計1067本で閣法よりも多いものの、成立したのは218本で成立率は20%。民主党政権下では35%、第2次安倍政権発足以降では16%しかありません。

その理由は、限られた会期のなかで政府・与党は閣法の審議を優先するためで、重要な閣法の成立に目途がついた段階で議員立法の審議に入るのが普通です。其の為、議員立法が審議される時間はどうしても限られてしまいます。そういった事から、野党が独自に出した議員立法はそもそも審議されないものも多いのだそうです。

2018年の臨時国会で成立した議員立法は、インターネット上の「ダフ屋」を規制するチケット不正転売禁止法など9本で、成立率はわずか10%。大半は与党が主導し、野党も賛成する全会一致の法案でした。

このような状況下で、仮にN国党がNHKスクランブル化の議員立法を提出できたとしても、まず、その法案を審議して貰えるように国会に捻じ込まなけばなりません。100対0で、NHKスクランブル化などしないという今の国会では、法案を審議させること自体困難です。

そこをやろうとするには、海千山千の政治家を相手に説得するだけの、相当な政治力や交渉力が必要な筈で、知名度だけの"タレント"レベルの議員では荷が重いのではないかと思われます。

立花代表の政治家としても実力はまだ未知数ですし、また、丸山穂高議員にしても、日本維新の会を除名された身分です。その過去を背負って他の議員立法を押しのけて、NHKスクランブル化法案を審議してくれと説得するのは骨の折れる仕事ではないかと思いますね。

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5.ついてこれない者は切り捨てる

では、野党第一党、または与党になるだけの議員数があればよいかというと、そうもいきません。そのくらいの政党規模ともなれば、最早、ワンイシューでは通用しなくなってくるからです。

立花代表は、対談などで、NHKをぶっ壊す以外の政策は、と問われて、何もない、国民にネットなどで投票して貰って、その結果で決める、と「直接民主制」の採用とそれに従うと主張しています。

けれども、ネット投票では「ああしたい」、「こうしたい」といった有権者の希望こそ集めることが出来ますけれども、所詮それだけのことで、有権者が「法案」そのものを出してくれる訳ではありません。つまり直接民主制を採用したとしても、N国党は国民の民意を「法案」という実効力のある形にしなければならないのですね。

NHKのスクランブル化といったワンイシューに限ってしまえば、N国党でも議員立法は出来るかもしれません。けれども、野党第一党や与党ともなると、それで許してはくれません。他の数多の法案を作り、審議しなければならなくなります。要するに、今のN国党の人材や、数字だけ持っている候補者を集めるという方針のままでは行き詰る。破綻することは目に見えています。

その意味では、今のN国党は立花代表の限界がそのままN国党の限界になっている訳で、仮にN国党が議員立法を提出できるだけの議員数を持てたとしても、もしかしたら、その段階かそれより前に、N国党は限界にぶち当たるのかもしれません。

それらを考えると、立花代表は、議員数を増やすことに成功したら、その次の段階として、議員立法出来るだけの人材、あるいは特定の分野に精通した人材を募集して、ワンイシュー政党からの脱却を図るような気がします。

立花代表は別の動画でパチンコの政策に関して自らの考えを開示していますけれども、将来的にワンイシューではやっていけないことは承知していて、其の時の準備をしているのかもしれません。

そして、ワンイシュー政党から国民政党へと、脱皮していく過程で、もし既存のN国党議員が、そこに求められるレベルに達することが出来なかったら、次の選挙では公認を出さず、容赦なく切り捨てていくのではないか。立花代表の超合理主義からいえば、あり得る話だと思いますし、その反動で、恨みを抱いて敵を作ってしまう部分もあるのではないかと思いますね。




6.ワンイシュー政党の危険性

「NHKをぶっ壊す」という党是を掲げ、ワンイシュー政党として政界に踊り出ることになったN国党ですけれども、直接民主制を採用するワンイシュー政党にはそれなりの危険もあります。

それは、選挙の時点でワンイシュー以外の政策が見えないことと、党としての政策の一貫性が取れなくなる可能性があるということです。

前者については、そのまんまです。ワンイシューで選挙して、それで議席を得たとしても、その時点ではワンイシュー以外に何をやるのか有権者には全く分かりません。

立花代表はNHKのスクランブル化以外は直接民主制でやると言っています。

法案に対し、ネット投票で賛成か反対を募り、数の多い方をN国党の意見とするというのですね。けれども、それは要するに「出たとこ勝負」だということです。

直接民主制をやる対象が全有権者なのか、それともN国党支持者だけなのか分かりませんけれども、数々のテーマや法案にも、その時になってみないと賛成か反対か分からない。極端なことをいえば、今日は保守でも明日はサヨクになるかもしれないということです。これで下手に議席があったら、政治の不安定要因にもなりかねません。

また、後者についてですけれども、その時その時で政治的スタンスがコロコロ変わってしまうと、政策の一貫性が無くなり、非効率になってしまいます。また、自分達が議員立法して成立させた法案があったとして、次の日にそれに反する内容を直接民主制で要求されたとしたら、自らの法案を自分で否定しなければならなくなります。

そして、そんなケースがどんどん増えてしまえば、法案を作ろうとしても過去の自分達が出した法案が邪魔をして、法案が書きにくくなる。身動きが取れなくなってしまうことだって有り得ます。

そうしたとき、それら矛盾をどうやって整合させていくのか。立花代表が強権発動で押し切ってしまうのか。N国党が勢力を拡大し、議員立法をすればする程難しい局面が出てくるのではないかと思います。


7.公平・公正の世界観で未来は視えない

N国党の危険性というか弱点はまだあります。

それは「公平・公正の世界観では未来は見えない」という点です。

冒頭で、立花代表を戦略の階層で分析し、筆者は、立花代表の世界観は「世の中は公正・公平であるべきだ」としています。

世界観は、戦略の階層の最上位に位置するもので、それより下の階層の枠組みを決めるものです。

「世の中は公正・公平であるべきだ」という世界観は、一見、常識に則った正論であり、特に問題になるようなものには見えないのですけれども、公正・公平は"結果"であって、これから起こる未来を予見することは出来ません。

あくまで「現在ただ今」に対して、それが公正か公平なのかを判断するだけで、未来について判断している訳ではないのですね。

「政治は結果責任である」とは良く言われることですけれども、結果に責任が持てるためには、今現在の行動によってどうなっていくのか、という「結果」が見えなくてはなりません。

例えば、2015年末の韓国との慰安婦合意にしても、結んだ当初は「そんな合意はしてはいけない」と安倍総理は随分と批判されました。それでも安倍総理は強行して合意した。

その結果、大方の予想通り、韓国は慰安婦合意を反故にしましたけれども、その反面、国際法を無視する無法国家であることが白日の下に晒され、韓国に融和的だった日本人の目をも醒まさせることとなりました。

日米安保にしても、60年の安保闘争など当時は批判的な論調が主流でした。それでも、当時の岸内閣は強行し、日米安保は結ばれました。その結果、日本の安全は確保され、今では、概ね、日米安保自体は容認されています。

このような「政治決断」は未来に起こる結果が見えていなければ、中々出来るものではありません。当時の内閣にはそれが見えていたのだと思います。

それに対して、もしも、N国党の立花代表の世界観が本当に「公正・公平」であり、それが変わらないのであれば、直接民主制に従って行動するのであれば、世論の反対を押し切って何かを決断する、というようなことは出来ない筈です。

その意味では、N国党は右にも左にも民意にも流される、危うい側面を持っていると言えます。使い方次第で毒にも薬にもなる、ある種の劇薬といってもいいかもしれません。

今でこそ、勢いがあるN国党と立花代表ですけれども、実際に国政に影響を与えるくらいまでN国党が大きくなったとき、本当の意味での試練が訪れると思います。

その時に、国民政党として生まれ変わることが出来るのか。N国党が天下を獲る道はそう容易くはない。

戦略の下位の階層においては非常に革新的で世の中を変えるものがある一方、戦略の上位の階層では、力不足の面が目立ちます。

N国党が政界に風雲を巻き起こすことがあるとしても、N国党がある程度の勢力になった後に何をやろうとし、何が出来るのか。そこがポイントになってくるのではないかと思いますね。



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