アームをもぎ取られたファーウェイ

昨日の続きです。

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4.模様眺めの日本企業

アメリカのファーウェイ排除の動きに対し、日本の業界は静観の構えです。

5月20日、三菱電機の杉山武史社長は経営戦略説明会で、「ファーウェイが5Gを含めた通信インフラを受注できない状況になると、当然われわれの売上は減る」と述べた上ですぐに対応できることはないとして「様子を見守るしかない」と発言。自らファーウェイとの取引を停止する可能性については「基本的には自由貿易だ」と、政府が規制などをしない限り、取引を続ける意向を示しました。

また翌21日、ソニーの吉田憲一郎社長は経営方針説明会で、ファーウェイへの制裁の影響について「当社の取引先や規制、政策についてのコメントは差し控える……現在、アメリカでの売上比率は23%、中国は9%で、非常に両国ともに重要な市場」と説明しています。

電子部品各社は自社への影響を測りかね、京セラも「具体的には読み切れていない」と、今のところ取引自粛は考えていないとしています。

携帯メーカは、2019年の夏モデルとしてラインナップしていたファーウェイ製スマートフォンの発売時期について、変更をアナウンスしました。

NTTドコモは今夏発売予定の「HUAWEI P30 Pro HW-02L」の予約受付を停止。KDDIは5月下旬発売予定だった「HUAWEI P30 lite Premium」について、発売時期を「時期未定」に変更。そして、ソフトバンクは、5月24日発売予定の「HUAWEI P30 lite」について、発売を延期しました。

ただ、各社とも今後の対応は未定としているだけで、こちらも模様眺めの様相を呈しています。

こうした状況に経団連の中西宏明会長は5月20日の記者会見で、米政府によるファーウェイへの禁輸措置が日本企業に及んだ場合について「影響は相当ある。部品の調達網を組み替えないといけない……米国の虎の尾を踏まないよう、対応策をしっかりとらないといけない」と述べています。

どれも、暫く様子をみれば、どこかで米中が妥協して、また元のように商売できるのではないかとか、アメリカに睨まれないように気をつけようとか、筆者には何処か軽く考えているような節を感じます。


5.ARMコアの停止の衝撃

一方、海外メーカではファーウェイ切り捨てが進んでいます。

5月22日、BBCは半導体設計大手のARM社が、ファーウェイとその子会社との「すべての有効な契約、サポート資格、および保留中の契約」を停止するように従業員に指示したと報じています。

ファーウェイは今年1月、ARM社と組んで、データセンターなど向けの自社ブランド半導体を開発したと発表。更に5月4日、イギリスのケンブリッジにあるARMの本社からわずか15分のところに研究センターを建設する意向を発表していました。

ARMとは、「iPhone 4S」や「Galaxy SII」といったスマートフォンから、「PlayStation Vita」のような最新ゲーム機まで、およそありとあらゆる最新のデバイスに搭載されているCPU(SoC:System on a Chip)のことで、これら電子機器の中核をなすチップです。

チップといっても、ARM社自身はCPUを"製造"する訳ではなく、CPUやその周辺の設計ブロックを"知的財産権:IP(Intellectual Property)"という形で、世界中に提供しています。

ARMがIPとして提供するのは、CPUやメモリコントローラといった回路の設計図(IPコア)であり、ライセンスを受けたメーカーは、必要に応じて複数のコアを組み合わせて独自のチップを設計し、製品を作り上げています。

そうした製品の1つとして、アップルが「iPhone 4S」や「iPad 2」に搭載している「Apple A5」内部のメインCPUにはARMの「Cortex-A9」というIPコアが採用されています。
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これはファーウェイも同じです。

ファーウェイは現在、自社が所有するハイシリコン社から一部のチップを入手しています。けれども、そのハイシリコンのチップはARMによって開発された基盤技術を使用して構築されています。

現在、ハイシリコンは次世代チップセット「Kirin1020」を開発しているのですけれども、これは5Gをターゲットにおいたもので、代々ファーウェイのスマホに搭載されてきた「Kirinシリーズ」の最上位プロセッサになる予定です。

また、今年1月に「Kunpeng920」というサーバ用CPUの開発を発表しています。

これら世界最高峰のチップである「Kirin1020」や「Kunpeng920」にもARMコアが採用されているのですね。

今回、ARM社が自社のIPコアライセンスを停止したことで、これらのデバイスにARMコアが使えないことになり、大きな影響が出るのではないかといわれています。

少なくとも、アメリカの規制に触れないARMコアの代替プロセッサを見つけるか新規開発するなど、大幅な設計変更は余儀なくされるでしょうね。

IHSマークイット社のアナリスト、Lee Ratliff氏は「彼らはこれらの部品を新しい社内設計で簡単に交換することはできないだろう。中国の半導体産業は初期段階にある」とコメントしています。
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6.今日の事態に備えていたハイシリコン

では、ファーウェイはARM社のライセンス停止によって完全にお手上げになるのかという事なのですけれども、まだ分かりません。というのも、どうやらハイシリコン社はこの事態を前々から予想していたようなのですね。

5月17日、中国国営メディアがハイシリコンの社長室による書簡を公開しています。

この書簡は、アメリカ政府がファーウェイへの事実上の輸出規制を決めた直後、ハイシリコンの何庭波総裁が従業員に送付したものなのですけれども、その中で、ハイシリコンは、ファーウェイがアメリカから最新の半導体や技術を入手できなくなる事態に備え、数年前から秘密裏にバックアップ製品の開発を進めてきたと明記。これにより、大半の製品は安定供給が可能で、「戦略的な安全性」を確保できるとしています。

何庭波総裁は、ファーウェイが技術の自給自足を目指すと表明し、「金庫にあるすべてのスペアタイヤ」を活用する時が来たと述べています。

要するに、ハイシリコンは、いずれアメリカから半導体やその他の技術を入手することができなくなる「極端なシナリオ」を以前から想定し、影響を緩和するための準備をしてきたということです。

ここで問題になるのは、そのハイシリコンが秘密裏に開発してきたという"スペアタイヤ"にARMコアが使われているのかどうかです。

もしそのバックアップ製品にARMコアが使われていればアウトですけれども、実際どうなのかは分かりません。

筆者もそう簡単にARMコアの代替品が開発できるとも思えませんし、万が一開発できたとしてもARM社のと同じサイズ、同程度の消費電力にはならないのではないかと思います。

いずれにしても、ファーウェイが潰れるのかどうかは、技術面においては、代替半導体チップを用意できるかどうかにかかっています。

更には、日進月歩の半導体業界で、最先端の設計および製造技術を持ち続けられるのかどうか。これも大きな要素となってくるでしょうね。
 

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この記事へのコメント

  • ばる

    パナソニック ファーウェイと取り引き中止へ [2019年5月23日 4時37分]
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190523/k10011925521000.html

    ARM そのものを使わなくてもその基盤となるIP(知財)を使ったらアウトなんですが、中国は米国の要求である知財保護の国内法制定を受け入れなかったので、あの国では使えるかもしれません。
    2019年05月24日 04:56
  • ばる

    パナソニック、ファーウェイと取引中止=「米輸出管理法を順守」
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2019052201274

    時事通信でも同様のことを伝えていますね。しかし、
    2019年05月24日 19:58
  • ばる

    Panasonic からは否定する声明がでているようです。これも情報戦争の一端ですかね。

    > 先ほど、Panasonic より正式な通知があり、該当国・地域内での法律と条例に抵触しない限り、今後もHuaweiと取引を続けていくと発表。
    twitter.com/koumikudayo/status/1131409851907575809

    2019年05月24日 20:00
  • 日比野

    ばるさん、こんばんは。

    パナソニックの件は、分からないですね。使用比率が25%以下だから再開するなんて言っていても、こんな比率後から、どうにでもなります。

    様子見ではなく、根本的に対策を打たないといけないと思います。
    2019年05月25日 00:26
  • 白なまず

    半導体の先端プロセス技術やOSの更新を根拠に今後のファーウェイが技術開発を継続出来ないと言う話で進んでいると思いますが、更に、最近の半導体設計に関する事で困難な状況が考えられるので、少しだけ書き込みします。技術ノードの名称に対応する物として過去の90nmの時代以降、最近の10nm付近まででも同様なのですが、余りに微細化しすぎて、配線の遅延、配線の経時変化による切断、トランジスタの経時変化による劣化、トランジスタのLSI内部でのばらつきに伴う設計の困難さ、大規模化に伴う論理設計の検証の困難化などの設計困難な課題が有り、これらを解決しながら設計を行うのですが、その為の大事な技術が所謂CADの類のツールです。このツール群が無いと最近のLSIの設計は不可能です。当然、ツールの殆どは米国などの半導体先進国の製品ですので将来のツール供給は中国やファーウェイ向けは止まると思われます。このツールを使うエンジニアは当然半導体のエキスパートが前提なので、高度な技術が必要な上、夫々の製造ラインの不具合なども考慮する事になるので、場合によってはツールの使い方を工夫したり、新しいツールを開発しないと設計の継続が出来ない状況だと思われます。
    2019年06月04日 09:55
  • 白なまず

    自前でツール開発できればそれは可能ですが、実際は複数の大企業や大学が学会発表などを介して技術共用しツールも進化する様な環境でないと不可能なレベルまで来ています。標準規格のグループから廃除され学会への参加出来ず、CADメーカからも取引停止されると設計できなくなるのです。そして、更に、LSI内部のトランジスタの性能のばらつきが原因で高速動作を目指すと設計の困難さの度合いが指数関数的に高まり、5Gなどでは高速通信を保証する高速動作のLSI設計が前提になりますので、製造装置だけでなく設計環境ツール群もファーウェイの存続に関係すると思われます。まとめると、製造装置を導入して、原材料を入手しただけでは、次世代LSIの設計を継続できない!です。また、この設計エンジニアを育成するにも随分と時間が必要で、彼らが海亀族なんでしょうね。でも、海亀族が使えるツールが封印されたらどうでしょうか。それじゃ、必要な回路とレイアウトをそのままコピーして使えば?と思われるかも知れませんが、LSIチップ内部のトランジスタのばらつきで問題でフィジカルなIPはほぼ利用出来ず、毎回同じ回路でも検証のし直しが必要になります。つまり、ライセンス、ロイヤリティを無視して違法コピーしてもまともに動作させる為には設計し直しになるのです。
    2019年06月04日 09:55
  • 日比野

    白なまずさん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。
    edaツールについては、別の機会にとりあげねばと思っていました
    synopsysがファーウェイとの取引を中止したとか。
    本当なら大打撃ですし、あと、cadence止められたら殆ど詰みかと。mentorでトドメ。
    2019年06月04日 12:23

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