中国から撤退する企業群とトランプのシンプルな戦略

 
昨日の続きです。

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5月13日、中国政府は13日夜、アメリカによる追加関税の引き上げを受け、600億ドル相当のアメリカ製品にかけている関税を、現在の5~10%から最大25%に引き上げる報復措置を6月1日から取ると発表しました。2493品目は25%、1078品目は20%、974品目は10%にそれぞれ引き上げるとしています。

これを受け、13日のニューヨーク市場のダウは工業株30種平均は617.38ドル(2.4%)安の25324.99ドル。ナスダック総合指数は3.4%安と、今年に入ってから最大の下落率を記録しました。

けれども、トランプ大統領は「報復があるだろうが、大したものではないだろう。アメリカは中国よりも輸出の額が非常に小さい」と述べ、6月に大阪で開かれるG20サミットで中国の習近平国家主席と会談を行う可能性を示唆しました。

ただ、事前に口当たりの良いことをいうのはいつものトランプ流ですし、筆者としてはトランプ大統領の本音は別だと見ています。中国が土下座しない限り、仮に会談を行ったとしても、それこそ”会うだけ”になると思いますね。

米中貿易交渉について、MUFGユニオンバンクのチーフ金融エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「自分が考える最も可能性の高いシナリオは、最終的な解決は当面見られないというものだ……交渉では一方の国に運営方法の変更を迫っている。米国に資本主義をやめろと言っているようなものだ」と指摘しています。

昨日のエントリーで述べたように、もし、中国がトランプ後を睨んで、1~2年の我慢を選んだとするならば、G20で会談しても決裂でしょう。そうなると米中貿易摩擦は、本格的な対立へと移行することになります。

国際通貨基金(IMF)の試算では、全面的な貿易戦争に至る場合、国内総生産(GDP)成長率は米国が年0.6%、中国が1.5%のマイナス成長となる可能性があるとしています。

既に、米中貿易摩擦を背景とした中国経済減速の影響は、上場企業の2019年3月期決算にも広がっています。最終利益の合計は、10日までの集計で、前の期と比べ4.3%減少し、3年ぶりにマイナスとなる見通しとなっています。

これについて、パナソニックの梅田CFOは「400億円程度の減益要素が、この中国との貿易摩擦ではあったと」と述べ、日立製作所の東原社長は「世界の経済がスローダウンする方を非常に心配している」とコメントしています。

トランプ大統領の「大したことない」発言が本当かどうかは、今後数ヶ月の株価が示すことになるかと思います。

まぁ、トランプ大統領の言うように、仮にアメリカ経済全体レベルでは「大したことない」のだとしても、世界全体ではまた別の話でしょうし、また、個々の企業の立場でみれば「大したことある」所も多いと思われます。取り分け、中国に工場を立てて生産しているような会社にとっては、関税が10%から25%へと2倍以上に跳ね上がることは死活問題です。畢竟、中国からの脱出を考えることになるでしょうね。

既に日本企業の中には中国撤退を検討し始めるところも出てきました。

中国などに輸出される機械や、半導体に使われる金属部品を作っている富士セイラは「中国でのビジネスの採算性が悪化していく中で、当社としても、中国でのビジネスの引きあげを検討しているというところです」とコメントしていますけれども、トランプ大統領は「関税を回避する簡単な方法?アメリカで生産すればいい。とてもシンプルだ。(Such an easy way to avoid Tariffs? Make or produce your goods and products in the good old USA. It’s very simple!)」とツイートしています。

アメリカに生産拠点を移すかどうかは兎も角としても、米中貿易”戦争”が長期化すればするほど、中国から撤退する企業は増えるものと思われます。

もうすでに、色んな方が指摘していますけれども、中国に進出した企業が、生産拠点を中国から移す。筆者も、これこそがトランプ大統領の狙いではないかと見ています。

去年7月のエントリー「トランプの対中制裁関税発動」など過去のエントリーで何度か述べていますけれども、中国は「中国製造2025」を掲げ、外国企業の合弁会社に技術移転を強要したり、サイバー攻撃で外国企業のハイテク技術を盗んだりするなど、無茶苦茶やってます。

アメリカは米中貿易交渉でこれら知的財産の強奪を止めるよう要求しているのですけれども、中国は拒絶しました。

中国はトランプさえいなくなればどうにでもなる、と思っているのかもしれませんけれども、一方トランプ大統領は、それならば、中国で現地生産している企業を悉く撤退させて、技術を奪えなくさせるまでだ、と高関税を掛けているのではないかと思うのですね。

仮にトランプ大統領が来年の大統領選で勝利したとしても、そのあとは4年しかありません。それまでにおおよその決着をつける。中国が知的財産権を守るよう法改正すればよし。そうでなければ、そうなるまで圧力を掛け続ける。そう考えているように思いますね。

中国も、無論抵抗するでしょう。中国進出企業が撤退したらしたで、今度が外資を買収することで、会社ごと技術を盗んでしまう手に出るのではないかと思います。となると、トランプ大統領はまずアメリカ国内の企業を簡単に買収できないような手立てを打ち出すでしょうし、同盟国にも同様に中国に買収させないよう要請することが考えられます。

まぁ、今、ファーウェイで揉めているようなことが企業買収でも起こり得るということです。

となると、危ないのはEU、特にドイツです。技術を持っていて金がない企業、これが真っ先に狙われる。日本も注意する必要があると思います。

中国からの撤退で、今回特に注目したいのは台湾です。

蔡英文政権は、2018年から台湾への投資誘致政策を進めていて、2019年1月から「歓迎台商回台投資行動方案(台湾企業の台湾回帰投資行動を歓迎する計画)」に取り組んでいます。

台湾に回帰する企業には、政府が工業用地、光熱水費、人材、資金などについて支援。この政策を受け、4月26日時点で40社の台湾企業が67億ドルの“回帰投資”を打ち出しています。

5月8日、鴻海も台湾回帰を発表。郭台銘会長は台湾メディアの取材に対し、重要拠点である深センと天津から一部の生産設備を台湾・高雄に移転させることを明らかにしています。

筆者は面白いかもと思っているのが、台湾産の製品を「中国製品」とアメリカが見做すかどうかです。

もしも、アメリカが台湾で作られた製品を「台湾産」として制裁関税を掛けないとしたら、大陸の企業はこぞって台湾に生産拠点を移すでしょう。これはそのまま中国が主張する「一つの中国」の原則を否定することにもつながります。

政治的には台湾を独立国承認しないが、経済的には「独立国」として扱う。上手い手です。

中国は反発するのでしょうけれども、最低限台湾と同レベルにまで法整備せよ、知的財産を保護しろ、としれっと言い返すことだって出来る訳です。

ただ、余りにも中国企業が台湾に工場を持ってくると、その中に共産党の息の掛かった企業もあるでしょうし、工員だと称して工作員を沢山連れてくることも考えられます。そうして、ゆっくりと台湾を乗っ取る可能性も考えられなくもありません。

事実、鴻海(ホンハイ)の会長・郭台銘会長は、台湾では「親中派」「中国寄り」として知られています。

評論家の黄文雄氏によると、郭会長は5月1日にトランプ大統領と会談しているのですけれども、会談の時は台湾の国旗とアメリカの国旗が描かれた帽子をかぶっていました。

会談を終え、記者たちとの談話で郭会長は、「私は会談の最中ずっとこの帽子をかぶっていた」と言って、台湾人に向けて、自分は「台湾」の代表だということをアピールしていました。

ところが、帰りの飛行機では一転、「台湾は中国の絶対不可分の一部であり、中華民族に属する」と発言しています。ちょっと裏表がありそうな印象です。

しかも郭会長は、4月17日に、2020年に行われる台湾の総統選への出馬を宣言しているのですね。

ですから、台湾を西側に引き込むにしても、単純な関税優遇だけでなく、もう少し何か対策を立てる必要があるかもしれません。

中国が次の大統領選まで我慢を決め込んだとするならば、米中貿易戦争は少なくともあと2年近くこれが続くことになります。これからの世界経済は結構厳しめに見ておいた方がよいかもしれませんね。
 

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