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zoom RSS 台湾の実効的独立を固める蔡英文総統

<<   作成日時 : 2019/03/12 10:00   >>

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今日はこの話題です。

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1.日本との関係強化を求める蔡英文総統

3月1日、台湾の蔡英文総統は台北市内の総統府で、産経新聞の単独インタビューに応じました。

蔡総統は、「東アジアに位置する台湾と日本は同じ脅威に直面している……安倍晋三首相は台湾に非常に友好的で、就任以来、思い切った決定をしてきた。次の段階として安全保障対話を強化する必要がある」と日台の当局間対話を呼びかけるとともに「日本側には法律上の障害を克服してほしい」と日本側の対応を求めました。

対話の内容については「伝統的な軍事面以外にサイバー戦争など新たな脅威についても意見交換したい」と述べ、中国の「網軍(サイバー部隊)」は昨年11月の台湾統一地方選でも、中国寄りの野党と「協力関係にあった」とし、「台湾が今日直面する課題は、他国も将来、直面する可能性がある……多くの人々が台湾の経験を参考にしようとしているが、台湾も他の国と協力して網軍の効果を抑制する必要がある」と警鐘を鳴らしています。

そして、蔡英文総統は翌2日、産経新聞が朝刊で蔡総統との単独会見の内容を掲載したことを受け、ツイッターに日本語で発言の要点を相次いで投稿しました。

その内容は次の通りです。
蔡英文 Tsai Ing-wen 認証済みアカウント @iingwen 3月2日

台湾の対外貿易の質と量、それに経済的実力のいずれを見ても、台湾がCPTPPに参加することは他の参加国のメリットになります。産経新聞によるインタビューの中でも、私は台湾のTPP参加に強い意欲を示しました。

台湾は中国が太平洋へ出入りする要衝であり、ハイテク産業の生産拠点が集まる場所です。台湾が存在しなくなったり、民主主義や自由を失うことがあれば、世界の産業がダメージを受けます。ですから私は産経新聞に対し、国際社会はもっと台湾の存在を重視すべきだと訴えました。

私は産経新聞の取材に対し、「一国二制度」は両岸問題を解決する処方箋にはならないと述べました。我々が中国を挑発しませんが、必要があれば世界に向けて明言します。「一国二制度」を拒否し、民主的な生活を守ることは私たちにとって譲れない一線です。中国に誤解をさせてはいけません。

本日の産経新聞で、私は他国と協力して台湾の民主主義を守る決意を示しました。台湾は近年、「特定の国」からの世論操作や偽情報攻撃を頻繁に受けていますが、どの国も次の攻撃対象になり得るのです。台湾は、日本とこの問題について話し合えるよう願っています。
簡潔かつ重要なツイートです。蔡総統にとって一番訴えたい箇所はここにあるということです。

蔡総統のツイッターはデフォルトでは英語なのですけれども、時たま日本語の投稿が混じる形式です。2017年の旧正月では、日本語と英語で新年の挨拶をするなど、日本からみて親近感が沸きますね。

蔡総統はかつて3年間日本語を勉強したことがあり、日本を観光でよく訪れ、日本の文化に対して強い興味があると述べています。

蔡総統の中国に対する警戒と日本に対する関心は今に始まったことではなく、10年程前の2008年10月に東洋経済の取材に次のように答えています
--対日関係についてお聞きしたい。日本からすれば、外省人である馬英九総統は「反日」というイメージがぬぐえない。総統選前にたびたび来日し、「反日」という誤解はある程度解いたように思われたが、就任早々の尖閣諸島問題で、「やはり反日」との印象を日本政府に植え付けてしまった。

政策については、政策を考える人と制定する人は別次元だ。政策そのものについては、民進党と国民党の間に方向性での違いがなさそうに見えるかもしれないが、その程度で違いがある。

【中略】

民進党としては、日本との関係が非常に重要であることを理解している。しかも日本は、少なくとも短期的に見て戦略的利益でわれわれと一致している。戦略的な角度から見て、また文化的、社会的な要素の背景から見て、日本と友好的関係、協力的関係を維持することは、最も良い政策的な選択肢だ。

【中略】

--対日関係については、今後、どのような点を強化したいか。

日本政府はより積極的に台湾と対話を行うべきだ。特にこうした共通の戦略的利益の確認は、重要な作業だ。アジアでは今後10〜20年、多くの変化が発生するだろう。こうした変化の中で、台湾と日本はどの程度協力でき、互いに最大の利益を獲得できるかが課題だ。

日本では1年に1回、首相が交代しているが、政策あるいは対話のシステムにおいての連続性を希望している。また政府間の対話システムのほかに、政党間の対話システムも非常に重要だ。1年に1回、首相が交代する状況の中で、政党というものが政府よりも政策面において重要な対話のシステムになっている。このため、日本の主要政党と連続性のある対話を維持することを希望している。日本の政府、政党を問わず、民進党と緊密な対話を保ってくれることを望んでいる。
と、このように10年以上前から、日本との関係を重視しているのですね。他方、蔡総統は、台湾には中国に対する他国と異なるリスクがあると述べています。次に引用します。
--対中関係では、直行チャーター便の運航や中国からの観光客受け入れも始まったが、これについてどう考えるか。

われわれと中国との関係は、他の国と中国との関係と、経済面の本質で特別な違いはない。ただし、程度の違いがある。

【中略】

台湾は容易に中国に過度に引き寄せられる。それは、われわれの文化や血縁、さらには地理的環境が、中国とあまりに近いからだ。このため台湾の経済は、台湾の不安定要素の影響を受けることになる。これは台湾にとって大きなリスクだ。中国との往来は、台湾にとって一定の経済的利益があるが、しかしリスクは非常に大きなものがある。特に台湾は彼らから非常に近いのだ。

経済面でのリスクが大きいほかに、例えば、国家安全上のリスクもある。中国は多くのミサイルの照準を台湾に合わせている。中国は台湾は自分たちのものと主張し、中国の軍事力は増強を続けている。中国と他の国との関係の中に、台湾は必ず巻き込まれる。つまり、われわれと中国との関係は、単純な経済関係ではない。多くの政治的な要素がその中に含まれている。

中国の台湾に対する経済政策は、多くの政治的要因の干渉を受けることが避けられない。つまり、われわれと中国との往来は、もう1つのコスト、つまり政治コストを払わなければならない。しかもその政治コストはますます高くなっている。

さらに台湾は、国家安全コストを払わなければならない。例えば、中国の観光客が台湾にやって来る。あるいは中国の資金が台湾に入って来る。さらには中国人が将来ここにやって来て就職する。われわれは、それに伴う国家安全上の問題について考慮しなければならない。このために、コストは上昇する。このため、われわれが中国と往来するためのコストは、経済でも社会でも、他の国よりも高くなる。
蔡総統は台湾は中国に近すぎる為に、経済的にも国家安全保障的にもコストが掛かると述べています。筆者は、蔡総統の「経済面でのリスク」だとか、「国家安全上のリスク」といった表現の中に、やはり台湾は国であるのだ、中国とは違うのだ、という意識があるのではないかと感じますね。

これについて蔡総統は昨年6月、フランス通信社AFPの取材で次のように述べています
「過去数百年にわたり台湾は多くの課題と脅威を克服し、非常に強い民主主義と経済、それに安定した社会を構築した。全体として台湾人は、直面してきた課題のお陰で、明確なアイデンティティーを作り上げてきた。これは我々の共通の記憶だ。それが、台湾人が台湾人と認識されることを選ぶ理由だ。我々の共通の記憶、経験、価値が相まって、我々を台湾人たらしめている」
やはり、蔡総統の胸の内には、我々は台湾人であるという認識があるように思われます。

では、蔡英文総統は台湾独立派なのかというと、そういう訳でもありません。

中台関係について、蔡英文総統は、いわゆる「現状維持」政策を進め、出来るだけ中国を刺激・挑発することを避け、「台湾独立」の主張を封印しつつ、中国の主張する「一つの中国の原則」を認めずとの姿勢を貫いています。

あるいは、台湾は台湾としてのアイデンティティを持っているが故に、意識の上ではもう国であると認識しているのかもしれません。


2.国家の三要素

国家には3つの要素があると言われています。それは、御存知のとおり「国民」、「領土」、「主権」の3つです。

台湾は、1945年日本の敗戦後、中国本土に返還されました。この時、中国大陸から台湾統治にやってきた中国人が増加。彼らは、台湾在住の住民を「本省人」、1949年に国共内戦に敗れた国民政府と共に中国大陸より台湾に移住した人々を「外省人」として区別しました。

現在、台湾の人口約2354万人のうち、本省人が86%、外省人12%、原住民2%という構成になっています。

そして肝心の台湾の人達が自分達は何人と考えているかというと、2016年3月14日の聯合報による国族認同調査では、「台湾人であり、中国人ではない」が73%、「台湾人であり、中国人でもある」が10%、「中国人であり、台湾人ではない」が1%と、大多数は自分達は台湾人であるという意識を持っています。

これらをみても、台湾は台湾人という自覚を持った「国民」を有しているといえるでしょう。

次に、「領土」ですけれども、台湾政府が実効支配しているのは、台湾本島とこれに属する島々と膨湖諸島を含む79の島です。中国は台湾を自分たちの土地だと主張していますけれども、現実に実効支配したことはありません。

1991年、台湾は中華民国憲法第11条に追加修正を加え「自由地区と大陸地区間の人民の権利義務関係及びその他の事務の処理は、 法律をもって特にこれを規定することができる」としました。

ここでいう「自由地区」とは、中華民国政府が1955年の大陳島撤退後も実効支配している全地域を指す政治的・行政上の用語で、要するに台湾の事です。そして「大陸地区」とは中国本土のことです。

台湾は、この憲法修正で、憲法が及ぶ統治範囲を、台湾が所轄している領土に限定したのですね。

これはつまり、実効支配する「領土」を法的に規定したということです。従って台湾には「領土」もある訳です。

そして、「主権」についてですけれども、これも1992年の憲法修正で憲法第2条に追加条文を加え、「正副総統は中華民国自由地区の全国民が直接選挙でこれを選出し、 一九九六年の第九代正副総統選挙から実施する」とし、それにより組織された国家機関は、台湾住民のみを代表し、国家権力の正当性もまた、台湾住民の意思に基づくものであると規定しました。

台湾総統を台湾住民の直接選挙で選出するということは、台湾政府が台湾を実効支配していることを意味します。そして、台湾は1949年に今の中国が建国されて以降、一度も実効支配を受けたことはありません。

このことから、少なくとも台湾の中に限っては「主権」が存在すると見ていいように思われます。

以上から台湾には「国民」がいて「領土」があり、国内を実効的に支配する「主権」を持っていることになり、半分以上は国としての条件が揃っているように思います。


3.一国二制度を拒否して台湾の実効的独立を強化せよ

2016年のエントリー「九二共識は最初からクライマックスだぜ」で、中国共産党が「92年コンセンサス」を持ち出して、「一つの中国」を認めよと迫っていることを取り上げましたけれども、蔡英文総統は一貫してそれを拒否。現状維持の方針を堅持しています。

蔡総統は今回の産経のインタビューで中国の「一国二制度」を拒否しています。中国の一国二制度を受け入れた地域の行く末は、香港をみれば明らかです。蔡総統は香港の轍を踏まない為に「一国二制度」を拒否しているのだと考えられます。

それは正しい。

既に、国家の要素の面からみれば、台湾は半分以上「国」です。蔡総統は表向きは「台湾独立」など口にせず、高らかに「現状維持」を打ち出しながら「一国二制度」を拒絶している。つまり台湾の「実効的独立」を維持しようとしているように見えます。実に強かだと思います。

であるならば、中国との関係は現状維持のまま、台湾の国力を上げていくことに力を注ぎ、中国が手を出せないくらいにまで大きくなればよい。そうすれば、ますます台湾の実効的独立は強固になるのですから、そうするのが得策ではないかと思いますね。

例えば、ハワイが台湾の位置にあったとしたらどうなるかを考えてみればそれがよく分かります。

そうなったらもういうまでもなく、米軍基地が置かれ、東アジアの重要拠点として機能していることは間違いありませんし、中国が手を出そうものなら、そのままアメリカと戦争になります。

ということは、台湾はそれに近い状態に自国を持っていくことができれば、それで事実上の「独立」は保たれる訳です。

そのためには、アメリカとがっちりと結び、かつ経済面を含めて日本からのバックアップを得ることが重要な戦略目標になります。

蔡英文総統が、CPTPPに参加し、日本との安全保障対話を強化したいとする意味はここにあります。

日本にとっても台湾はシーレーンを守る重要な要となりますし、その重要性は既に韓国を超えていると見てよいと思われます。

日本国民も今以上に台湾に目を向け、関係を強化する時を迎えているのではないかと思いますね。
 

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
台湾の皆さんも私以外の日本人の皆さんも反対かもしれませんが、私はいっそのこと日本の台湾県として生きて行くのが良いのではと考えています。

私の希望的妄想ですが。
ヘイジ
2019/03/12 20:54

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